首相、来年早期に訪露意向…プーチン氏と会談へ
先日、日ロ間で設けられた首脳会談は、日本国側からの8項目の経済協力が挙げられたものの、政治面に関しては具体性に乏しい玉虫色の合意となりました。領土問題については、日本国は、国際法、並びに、歴史に照らして従来の立場を変更する必要はないのですが、それでも、危うさが漂うのは、別方向からのベクトルを感じ取るからです。
実のところ、新聞紙面上に掲載された米元国務長官であるヘンリー・キッシンジャー氏へのインタヴュー記事を読んだ時から、良からぬ予感が脳裏を過ることとなりました。何故ならば、キッシンジャー氏は、今後の国際社会の展望に関して、実に難解な見解を示しているからです。氏は、ヨーロッパ外交史を専門としており、その膨大な知識に基づいて、ウェストファリア条約等を引きながら国際法の重要性について語っています。その一方で、”絶対視されてきた国境線も、国家間の合意によっては変更し得る”といった意味の言葉でインタヴューを終えているのです。
国境線とは、確かに国家間の合意によって引かれてきた歴史があり、通常、その合意は条約化されています。国際法が整備された今日では、条約締結以後、国境で囲まれた空間は、国家の領域に関する権利として国際法の保護の下に置かれるのです。国際法秩序が重要視されるのも、それが、国境線の一方的な侵害を防ぐ平和の礎であるからです。この流れからしますと、双方の国家が自発的な意思の一致があれば、一度確定した国境線であっても引き直すことはあり得ない事ではありません。実際に、つい最近、キッシンジャー氏の見解に沿うかのように、ベルギーとオランダとの間で領土交換の合意が成立しています。この事例は、あくまでも、双方の自発性が確保されている場合です。
しかしながら、この”合意重視”を領土未確定地域に適用しようとすれば、どのような事態が発生するでしょうか。例えば、北方領土問題にまでこの方針を持ち込みますと、ロシアによる不当な領土拡張要求、即ち、”対日侵略”の事後承認を迫られないとも限らないのです。この侵略の事後承認は、明らかに国際法に反しており、たとえ日ロ政府間で合意したとしても、”日ロ平和条約”は、一般国際法の強行規範に抵触する条約の無効を定める条約法条約第13条に違反することとなりましょう。二国間の合意であっても、国際法が定めた規範の範囲を超えることはできないのですから。
さらに、その合意の前提となる’国家意思’の決定は、誰が行うのか、といった問題も浮上してくることになります。トップ会談での決定と称して、国民主権を無視した決定が行われる可能性も生じてまいります。
キッシンジャー氏の発言は、北方領土問題を意識したものではなかったかもしれませんが、プーチン大統領の訪日の直前であったがために、意味深長です。また、キッシンジャー氏の発言は、国際常設仲裁裁判所の判決を無視し、南シナ海問題でフィリピンとの二国間合意を狙う中国に有利な発言でもあります。そしてそれは、国家間の政治的合意優先よりも、経済優先の方向性を示すベクトルに由来しているようにも思えるのです。
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実のところ、新聞紙面上に掲載された米元国務長官であるヘンリー・キッシンジャー氏へのインタヴュー記事を読んだ時から、良からぬ予感が脳裏を過ることとなりました。何故ならば、キッシンジャー氏は、今後の国際社会の展望に関して、実に難解な見解を示しているからです。氏は、ヨーロッパ外交史を専門としており、その膨大な知識に基づいて、ウェストファリア条約等を引きながら国際法の重要性について語っています。その一方で、”絶対視されてきた国境線も、国家間の合意によっては変更し得る”といった意味の言葉でインタヴューを終えているのです。
国境線とは、確かに国家間の合意によって引かれてきた歴史があり、通常、その合意は条約化されています。国際法が整備された今日では、条約締結以後、国境で囲まれた空間は、国家の領域に関する権利として国際法の保護の下に置かれるのです。国際法秩序が重要視されるのも、それが、国境線の一方的な侵害を防ぐ平和の礎であるからです。この流れからしますと、双方の国家が自発的な意思の一致があれば、一度確定した国境線であっても引き直すことはあり得ない事ではありません。実際に、つい最近、キッシンジャー氏の見解に沿うかのように、ベルギーとオランダとの間で領土交換の合意が成立しています。この事例は、あくまでも、双方の自発性が確保されている場合です。
しかしながら、この”合意重視”を領土未確定地域に適用しようとすれば、どのような事態が発生するでしょうか。例えば、北方領土問題にまでこの方針を持ち込みますと、ロシアによる不当な領土拡張要求、即ち、”対日侵略”の事後承認を迫られないとも限らないのです。この侵略の事後承認は、明らかに国際法に反しており、たとえ日ロ政府間で合意したとしても、”日ロ平和条約”は、一般国際法の強行規範に抵触する条約の無効を定める条約法条約第13条に違反することとなりましょう。二国間の合意であっても、国際法が定めた規範の範囲を超えることはできないのですから。
さらに、その合意の前提となる’国家意思’の決定は、誰が行うのか、といった問題も浮上してくることになります。トップ会談での決定と称して、国民主権を無視した決定が行われる可能性も生じてまいります。
キッシンジャー氏の発言は、北方領土問題を意識したものではなかったかもしれませんが、プーチン大統領の訪日の直前であったがために、意味深長です。また、キッシンジャー氏の発言は、国際常設仲裁裁判所の判決を無視し、南シナ海問題でフィリピンとの二国間合意を狙う中国に有利な発言でもあります。そしてそれは、国家間の政治的合意優先よりも、経済優先の方向性を示すベクトルに由来しているようにも思えるのです。
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