万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

民主主義対独裁という新局面の出現

2011年02月20日 16時44分45秒 | 国際政治
イエメン、ジブチで死者=反政府デモの波及止まらず(時事通信) - goo ニュース
 チュニジアで始まり、エジプトで劇的なムバラク退陣に追い込んだ反政府運動は、中東全域に広がり、その勢いは衰えを見せていません。連鎖的に発生した反政府運動の最大の特徴は、あらゆるタイプの独裁体制に対して、NOを突き付けていることです。

 イランではイスラム原理主義体制に、バーレーンでは王政に、リビアでは個人崇拝型の軍事独裁に、そうして、もし、シリアにも反政府運動が伝播するとすれば、一党優位体制下の社会主義型世襲独裁に対して、国民からの拒絶反応が起きたことになります。これらは代表的なタイプですが、その他の諸国もそれぞれ独自の独裁体制の下にあります。それぞれタイプは違っていても、国民が、弾圧的な独裁体制に反対しているという点において、共通しているのです。民主主義対独裁という、あらたに登場してきた対立構図は、中東諸国間の関係にも影響を与えそうです。例えば、エジプトに成立する民主的な政権は、イスラエルに対してどのような政策を打ち出すのか、といった問題は、既に国際社会の関心を集めています。また、民主化された国家の政権が、独裁体制の近隣諸国に対して、どのような政策を打ち出すのかも、関心の的です。もしかしますと、民主的な政権は、国民世論の後押しを受けて、独裁体制の諸国とは一定の距離を置くようになるかもしれません。

 民主化された諸国の政策の選択は、中東地域のみならず、国際社会の未来を大きく左右することになりそうです。そうして、独裁体制を維持した国家が戦争に訴えるような場合にも、国内におけるこの対立構図は、内部から政権を揺さぶることになります。民主主義を自らの手で掴み取った国こそが、民主化運動を擁護し、延いては国際社会に安定と平和をもたらしていただきたいと思うのです。

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
小さな愛犬家 こと関根さん (kuranishi masako)
2011-02-21 16:08:49
 ご返事をいただきまして、ありがとうございました。
 
 ただ今、リビアについて本日の記事を投稿したところです。よろしければ、読んでいただきましたら幸いです。いただいたコメントによりますと、軍内部でも離反がおきているとのことですが、リビアの場合には、カダフィ大佐が政権内の求心力を失い、内部崩壊する可能性があると思うのです。
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民主化追加 (小さな愛犬家 こと関根)
2011-02-21 15:13:55
追加ですが、小生が注目しているのはリビアです。カダフィ大佐の強権で200人位亡くなっているようですが、デモを抑えきれないカダフィというのは想像できませんでした。張子の虎なのかもしれません。地方からデモの火がついて北部都市の一部では軍部かデモ組織側についたとか。意外にカダフィが崩壊するかも知れない。
中国でも地方都市からデモの火がついています。
中国は「民主化の可能性」は低いものの、少しでもがたつくと、問題の北朝鮮が危ないですよ。ここは軍部のクーデターでしょう。
いずにせよ2011年は「民主化の波」「ネットの不満」が各地で爆発することになりますね。
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小さな愛犬家 こと関根さん (kuranishi masako)
2011-02-21 13:10:34
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 紆余曲折が経ながらも、やがて独裁体制は消え、全ての国々が、民主化されるものと信じています。中国などでは、早々にネット規制を強化していますが、民主化要求が国民多数による政府に対する圧力となりますと、この流れを止めることはできないのではないでしょうか。2011年は、歴史的な転換点を画くする年となりそうです。
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民主化の波広がれ (小さな愛犬家 こと関根)
2011-02-21 08:20:56
中東情勢は第二の「ベルリンの壁」の可能性が濃厚となった歴史的国際政治事件だと思います。多分歴史に残ることとなるでしょう。「日米間」だけの出来事である安保闘争など小さいんですよ。
両極はイスラエルとイランということになると思うんですが、これから両極へ交互に振れながら結局、我が民主路線が「イランも含めて」勝利するように思えます。独裁体制は「張子の虎」の面が多いのです。フセイン体制正にがそうでした。ただゲリラ組織は違います。
独裁国家は国民を敵にしてしまうのが最大の弱点ですね。その独裁を打ち破る新たな強力武器が「ネット」なんだと、今のところ解釈できます。
何時の時代も改革・革命は優秀な若者がリードしていくものです。
と、この位は経済学徒でも分ります。
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