昨今の米価高騰について、その原因として先物取引等の投機マネーの流入が推測される理由は、日本国政府の沈黙にあります。物価高につきましては、ガソリンや電力・ガス等に対する対策は一先ず練られていても、凡そ全ての国民のエンゲル係数を上げる米価高騰につきましては、対策らしい対策を採ろうとはしていないのです。マスメディアもまた、この件については沈黙を守っています。この現象は、如何にも不自然なのです。
主食である米価が2倍にも跳ね上がれば、通常は、一揆が起きてもおかしくありません。もちろん、‘飽食の時代’とも称されておりますように、今日では、お米の価格が高くとも、小麦やトウモロコシなどの他の食品で代替できます。このため、過去の時代よりも深刻度は低いのでしょうが、それでも、食卓にご飯のお茶碗が添えられている家庭が圧倒的に多いはずです。食べ盛りのお子さんがいる家庭では、お米価格の高騰は家計を逼迫させていることでしょう。
国民生活を第一に考える政府であれば、先ずもって、米価高騰の要因を詳細に分析するはずです。本ブログでも指摘しておりますように、インバウンド説、猛暑説、肥料価格高騰説、輸送コストアップ説などは何れも主因とは考え難く、5キロで6000円と言ったバブル的な値動きは、先物取引市場への投機マネーの流入を仮定せざるを得ないのです。それでは、何故、政府は、無策なのでしょうか。
第一に推測されるのは、政治家自身がお米の先物取引から利益を得ているというものです。今年8月の大阪堂島商品取引所での先物取引再開が、SBIホールディングスのロビー活動の結果であったとすれば、政治家の懐には、相当のマネーが転がり込んでいるはずです。また、SBI証券をはじめ、幾つかの証券会社が一般顧客向けに先物への投資を募っていますので、政治家が直接に先物取引を行なっている可能性もありましょう。この事実が明らかになりますと、国民から強い反発を招くことになりますので、政治家の人々は、嵐が過ぎ去るのを首をすくめて待っていることとなりましょう。国民生活を犠牲にしつつ、自らは肥え太っていることになるのですから。
第二の推測は、今夏における収穫前に備蓄米の放出を渋った責任を問われたくないとする政治家の意識です。しかも、秋の収穫期が過ぎれば米価は平年並に戻るとされながら、高値が続いています。本来であれば、去年の備蓄分も含めて放出すべきところなのですが、政府には、備蓄米を供給する動きが見られないのです。この推測についても、仮に、先物取引が主因であれば、政府は、敢て高値を維持するために備蓄米を放出せず、供給量を減らしているとする疑いも生じます。
そして、第三の推測としては、政府は、減反政策の失敗を認めたくないのかもしれません。しかも管政権以来、日本国政府は、カーボンニュートラルの目標を掲げると共に、再生エネルギーの導入に積極的に取り組んでいます。この結果、農村の耕作放棄地に太陽光発電のパネルが並ぶ事態にも至ったのですが、政府は、国民の生活よりもグローバリストが推進している国際公約としての‘グリーン政策’を優先しているのかもしれないのです。日本国の農業の衰退は、食糧安全保障をも脆弱化しますし、海外依存も高まりますので、グローバリストにとりましては一石二鳥なのでしょう。そして、あるいは、お米の先物市場には、海外マネーも流入している可能性もありましょう。
何れにしましても、説明責任の回避は疑いを強めますし、米価高騰に対する政府の沈黙は不気味ですらあります。‘あらぬ疑い’であれば晴らさなければなりませんので、政府は、米価高騰について国民に対して詳細を説明すべきなのではないでしょうか。また、政治とお金との問題を解決するためにも、授受に関する入り口の規制のみならず、内外のマネーの流れと政策との関係を調べる必要がありましょう。因みに、古代ローマにはセンソールという役職が設けられており、元老院議員といった政治家の綱紀粛正を行なう強力な権限が付与されていました。今日にありましても、独立的な立場から政治家に対して調査を行なことができる専門機関を設置する、あるいは、検察庁の特別捜査部の独立性を強化すべきではないかと思うのです。