万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ソフトバンクの飽くなき支配欲を抑えるためには

2017年07月13日 14時59分04秒 | 日本経済
 ソフトバンクのエネルギー事業については、再生エネルギーを中心とした発電部門のみならず、モンゴルから日本を結ぶアジアエネルギー送電網構想を打ち上げ、今や送電部門にまで踏み込もうとしています。ソフトバンクの野望は留まるところを知らないかのようです。

  ところで、市場経済では、企業活動の自由は原則として認められており、それ故に、企業間には競争が生じます。ところが、幾つかの分野では、企業間競争が働かず、公的であれ、私的であれ、独占が生じやすい分野があります。独占傾向の強い分野の一つが生活、並びに、産業の基盤となるインフラ事業です。公共性の高いインフラ事業を掌握すれば、その国の国民生活から経済に至るまで、容易に支配力を及ぼすことができるのです。

ソフトバンクの脅威について語る時、その事業分野に注目する必要があります。何故ならば、同社は、敢えてインフラ部門を事業分野として選んでいるからです。設立当初は、IT関連の出版やシステム開発を事業分野としていましたが、やがて通信分野にも進出し、2006年にはボーダフォンの買収により旧国鉄の鉄道電話の通信網を掌握することで、三大携帯電話事業者の一角を占めるに至ります。通信事業の傍ら、同社は、投資活動にも熱心であり、5兆円ともされる公的資金が投入された日本債権信用銀行を492億円で買収しています(後に米投資ファンドサーベラスに凡そ1000億円で売却…)。金融とは、経済の“血液”とも称され、インフラに準じる経済の基盤事業でもあります。ソフトバンクホールディングスは、2006年に形としてはソフトバンクグループ本体からは独立したものの、2017年に、同グループは、サウジアラビアの政府系ファンドにも参加しています。エネルギー事業への進出は上述しましたが、加えて、半導体設計企業であるイギリスのARMホールディングスも凡そ3兆円で買収しており、“産業のコメ”とされる半導体部門でも主導権を握りつつあるのです。

以上に述べた沿革の概略から、同社が国家の資産を巧妙に手中に収めつつ産業の基幹部門を押さえると共に、経済の全体的な支配を目指していることは明白です。その一方で、インフラ事業の多くは公共サービス部門に属し、競争法における集中規制が及ばないケースが多いため、むしろ法規制が甘いというパラドクスがあります。特定企業による経済支配を阻止するためにも、日本国政府は、一企業による広範囲に及ぶインフラ事業の展開については、独占禁止法や事業法などの法改正、あるいは、包括的な規制法の制定により、厳しく規制すべきではないでしょうか。

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4 コメント

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確か40年ほど前だったと (clover)
2017-07-14 10:51:39
思うのですが。「規制緩和」が声高に叫ばれていた
のは。その頃、地方都市に次々と大手スーパーが出店、私の住む地方都市にも当然のごとく出現しました。

一階はスーパー部門。二階は地元の小売店舗がそれまでのお店を畳んで参入。街の主だった老舗はほとんど移って行きました。

大型スーパーはその後も増え続け、一見便利になったかのように見えますが決してそうではない。

クルマが無ければ行けない郊外に立地しているので
足の無い高齢者には不便なことこの上もなく。

東京など、交通網の発達しているところでは不便は
感じないでしょうけれど、田舎では深刻な問題です。

ネットでの買い物には限界があり、自分の目で見、
匂いを確かめるという基本的なことが、できません。
地元で穫れる新鮮そのものの食材を、気軽に入手できないのも大変悲しいことです。
置かれている商品が「均一化」しているからです。
欲しいとなればずっと離れた道の駅まで、やはりクルマを運転して、ということになります。

40年経った今、地元商店街から大挙して移った二階のお店は、消えて無くなっているところも多いです。

その大手スーパーは会長が在日とも噂されています。
迂闊なことですが、つい最近になって知りました。

新聞やテレビも在日におさえられているようですし、一体どこまで浸食するのでしょう。

皇室問題もそうですが、全ては繋がっている。
そう感じます。





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cloverさま (kuranishi masako)
2017-07-14 11:15:30
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。

 流通網もまた、経済の重要なインフラであり、特定の企業に牛耳られてしまいますと、これもまた、経済全体の支配に繋がりかねません。自由貿易協定のみならず、AI等の発展により、雇用の減少が懸念されている今日、国内雇用、並びに、活力ある経済を維持してゆくためには、新たなヴィジョンを必要としているように思えます。企業の”恐竜化”問題も含め、適切な規制の在り方についても、議論されて然るべきと考えております。
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Unknown (北極熊)
2017-07-14 12:46:09
ソフトバンクは、自己資本の脆弱な中小企業でしたが、コンピューターが普及していく中で、誰でも儲かる業界に身を置いていたというのが第1のポイント。 たまたま出資したYahooが、米国ITバブルで高騰して大もうけ。 それを「IT業界での眼力のある孫さん」というイメージに加工して、買収に伴う資金を借金しまくるという、自転車操業ならぬ、バイク、軽自動車、高級車、セスナ、プライベートジェットと借金で乗り換えているような事業拡大。 ただ、分からない事が一つ、ボーダフォンが手放すような携帯電話会社が、ソフトバンクになって儲かっていたのかどうか?やはり基地局設備投資をしてなかったんだろうな。i-Phoneの独占販売で一儲けするまでは、と思う次第。 
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北極熊さま (kuranishi masako)
2017-07-14 17:31:56
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。

 ソフトバンクは、その借金体質も問題視されておりますが、この手法、海外諸国(中国、韓国、北朝鮮・・・?)、あるいは、国際組織等の入れ知恵や資金援助があったのではないかと推測しております。政界への取り入り方やメディア利用などは相当に露骨、かつ、手荒ですので。何れにいたしましても、ソフトバンクによる経済支配に対しては、具体的な規制策が必要です。特に日本国政府は、いわば踏み台にされておりますので、率先してこの問題に取り組むべきではないでしょうか。
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