万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

FIFA汚職問題-”独占”は必ず腐敗する

2015年05月31日 13時19分24秒 | 国際政治
ウィリアム王子がFIFAを痛烈批判「我々はフットボールをしている」
 6人もの逮捕者を出したことで汚職問題に揺れるFIFA。にも拘らず、一昨日実施された会長選挙では、現役のブラッター会長が再選され、疑惑に満ちたブラッター体制は当面続く模様です。

 組織内部における自浄作用を疑う欧州諸国がブラッター会長再選の阻止に動く一方で、当のブラッター会長は、今のところは改革に積極的なポーズを見せております。実のところ、この腐敗問題、サッカーのみならず、興業的なスポーツイベントを開催している国際スポーツ機関に付きまとう、共通の病理ではないかと思うのです。何故ならば、世界○○協会や国際○○連盟とは、得てして全世界で一つしかないからです。つまり、全世界で一つであれば、放映料やスポンサー料などは莫大な額となり、しかも、価格も立場の強い国際組織の側が容易に釣り上げることができます。決定権を握る役員のポストとは、まさに”お金の生る椅子”であり、逮捕されたFIFAの役員の宿泊施設が超高級ホテルであったことも、放漫財政とも言えるリッチ体質を物語っております。しかも、このポストに就任すれば、開催地立候補国やスポンサー企業…から私的に賄賂が提供される機会にも遭遇します。よほど精神力が強く、清廉潔白な人物ではない限り、役員ポストは容易に私物化され、不正や腐敗の温床になりかねないのです(一種の官製談合…)。全世界の人々スポーツの機会や楽しみを提供するという意味において、国際スポーツ機関の公共性は極めて高いのですが、チェック・アンド・バランスを組み込んでいる一般の政府と同程度には(もちろん、政府でも談合は発生しますが…)、利権の独占から生じる腐敗を防止する仕組みが整ってはいないのです。

 ”独占体質”が問題であることは、内部チェックのみならず、第三者による外部チェックの仕組みが必要であることを意味しておりますし、会計や情報の開示義務や役員に対する審査の厳格化といった機構改革も求められます。そして、さらに厳格に腐敗防止を徹底するならば、国際社会において、国際スポーツ機関を対象とした”スポーツ汚職・談合防止協定”といった国際ルールや防止の仕組みを造るべきなのかもしれません。スポーツマンシップを育てるべき立場にある国際機関が、フェアプレーが無意味であることを自らの悪しき行動で全世界に示している現状は、あまりにも不健全であると思うのです。

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2 コメント

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Unknown (ねむ太)
2015-05-31 20:06:30
こんにちは。どんな組織も腐敗する・・これこそがハンナ・アーレントのいうところの「凡庸の悪魔」なのです。
規則や法律に従って真面目に職務を行っていたが、気がついたら腐敗と汚職だらけだった。
ハンナ・アーレントが気づいたのはアイヒマンの裁判を傍聴していた時です。
アイヒマンはナチスの官僚として、真面目に職務をこなしていただけ、囚われたユダヤ人がどのような運命をたどるかは気にしなかった。
もし、アイヒマンが居なくても別の誰かが職務規定に従って、同じように職務を遂行していただろう。
極めて凡庸な一人の人間であったアイヒマンが感情をむき出しにして興奮する場面・・出世について問われた時です。
組織の一員として服務規程に従って真面目に職務を遂行するうちに、他の事は考えられなくなり組織の中でいかに出世するかだけになってしまう。
ハンナ・アーレントの見たものは、ホロコーストという民族浄化を遂行しようとしたナチスという残虐な組織を構成する凶悪な人間の姿ではなく、凡庸な只のつまらない、なんの魅力もない人間の姿だったのです。
アイヒマンの弁明は「私は法に従って職務を遂行しただけであります。法に従わなければ処罰されてしまうのです」
どんな組織でも腐敗する、肥大化すれば自浄作用は働かない、組織を構成しているのは人間である事も合わせて考える一例として考えるべきでしょう。
組織が自らをはじて徹底的に自浄作用を発揮した例も有ります。
帝国海軍はシーメンス事件で国民の非難を浴び、深く恥じ入り海軍省の規律を徹底的に正した。
「盆暮れに商人が一般に配る、暦・扇子・手帳のたぐいは受け取っても良い。それ以外のものは禁止する」
出張に出掛け、業者が「食事ても」と誘っても「弁当を持参していますから」と一切接待に応じなかった。
帰りの汽車賃を渡そうとしても「往復きっぷを買ってあります」からと受け取らなかった。
此のような事が終戦まで続き、取引のある業者は海軍ほど綺麗なところはないと言っていたそうです。
此のように組織として恥じ入り自らを正そうとすれば出来ない事は無いでしょうが、FIFAの汚職に関わった連中に恥じ入る神経があるでしょうか。
恥じ入る神経があるなら「任期は長くても良い」などと口が裂けても言えないはずです。
此のような国際機関の歪みは、いたるところで顕在化しております。
WHOのトップは中国がゴリ推しで押し込んだ人物ですし。
国連の潘基文事務総長は就任早々一般の職員を韓国系の人間に大幅に入れ替え、独島(竹島)は韓国の領土と書かれたパンフを国連内で配布する中立公正の立場から程遠い事を平気でやっています。
国際機関の重要なポストに中・韓の人間を就けるのがそもそもの間違い。
また、発展途上国では賄賂や利権は当たり前なのです。
国際組織のトップを発展途上国から選出するならば、他の重要なポストには先進国から選出するべきなのです。
賄賂や不正は、どんどん告発し自浄作用を働かせるとともに、外部監査・・第三者機関の抜き打ち調査などを実施できるようにしなくてはなりません。
東京オリンピックの前にJOCも一度解体し、内部の徹底的な調査と監査をしてもらいたいものです。
韓国に甘い、韓国の言うなりで選手を信じることが出来ないJOCは不要品です。
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ねむ太さま (kuranishi masako)
2015-05-31 21:21:08
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 以前にも本ブログの記事として指摘したのですが、国際機関のポストの人事については、腐敗ランキングを参考にすべきではないかと思うのです。つまり、腐敗ランキングの高い国の出身者は、国際機関の重職にはつけないようにするのです(腐敗指数に比例して数値化するなど…)。この基準からしますと、中国や韓国…といった諸国の出身者が、賄賂でポストを獲得して、国際機関を私物化して腐敗させるという悪弊を断つことができます。国際機関には、チェック機能は国以下ですので、何らかの腐敗防止対策を設けませんと、悪の温床となると思うのです。
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