万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

怪しい日中のコロナ対策

2022年12月28日 11時11分40秒 | 国際政治
 武漢発の新型コロナウイルス感染症が瞬く間に全世界に広がり、WHOのテドロス事務総長がパンデミック宣言をしたのは、凡そ3年前のことです。この時、中国政府が自国民に対する海外渡航や出国の停止といった緊急措置を怠る一方で、日本国政府も然したる水際対策もせずに春節に中国人観光客を受け入れたことが、日本国内において同感染症が蔓延するにいたった原因とも指摘されています。国民に対して責任を負う政府であればこそ、謙虚になって過去の失敗に学ぶべきところなのですが、今日の事態には、過去に同じ光景を見たようなデジャブ感があります。日中両政府は、過去を教訓とせずに失敗を繰り返しているのでしょうか、それとも、両政府とも意図的に‘忘れたふり’をしているのでしょうか。

 中国側の出入国の野放しと日本国側のほとんど‘ざる状態’に等しい受け入れ体勢という構図からしますと、日中政府の示し合わせたような対応は、3年前と殆ど変わっていません。その一方で、細かな点を観察しますと、そこかしこに‘日中合作論’に信憑性を与えるような怪しさが滲み出ているように思えます。そもそも、日中両政府とも、リスク管理の側面からしますと、全くもって非合理的と言わざるを得ない対応をしているからです。

 仮に、報じられているように、習政権が進めてきたゼロコロナ政策の緩和により北京や上海などの大都市にあって火葬場が処理しきれないほど、新種の変異株であれCovid19の感染による死亡者が急増しているとすれば、中国政府は、入国禁止並びに自国民に対して渡航禁止措置をとるべきはずです。こうした水際対策は、WHO加盟国の義務でもあります(なお、これまでのところ、WHOも、今般の中国の国境措置の緩和政策に対して非難することもなく、何故か、沈黙している・・・)。3年前に起きた激しい中国批判を教訓とすることもなく、中国は、日本国のみならず、全世界に再びパンデミックを起こしかねない‘危険行為’に及んでいるのです。

 そして、同解禁策に対する日本国政府の対応も、入国者の空港における検査の強化では、全く水際対策とはならないことは明らかです。この失敗も、既に3年前に学んでいるはずです。最も精度が高いとされるPCR検査でも、陽性反応が確認できるのは発症の2日ほど前からなそうですので、仮に春節などに大挙して中国人観光客が訪日した場合、検査で陰性となった潜伏期間の感染者が混じってしまう事態は容易に予測できます。そもそも、コロナ以前の2019年のデータでは、1月の訪日中国人観光客の数は凡そ75万人であり、コロナの影響で大幅に減少するとしても、数十万単位の検査を日本国内で短期間に実施できるとも思えません。3年前に武漢での惨状を映した映像も新型コロナ感染症の凄まじい感染力を伝えていましたが、今般の中国における死者急増の報道も前回に匹敵しています。火葬場逼迫が事実であれば、日本国政府は、中国からの渡航を、即、禁止すべきと言えましょう。

 以上に述べたように、日中政府共に、誰もが疑問をいだかざるを得ないような措置、すなわち、非合理的な判断を行なっているのですが、政策の非合理性のみが怪しいのではありません。この他にも、中国国内における死者激増の要因とされるゼロコロナ対策緩和への転換も不審に満ちています。例えば、昨今の死亡者数の劇的な増加は、ウイルスの感染死であるとは限らないように思えます。異常な超過死亡者数が問題視されるに至り、日本国内でもようやく‘ワクチン死’という言葉が使われるようになってきましたが、mRNAワクチンではないものの、ワクチン接種率が高い中国でも、感染死を上回る勢いでワクチン死が増加している可能性もありましょう(ワクチン死であれば、日中両政府の理解し難い対策にも説明が付く・・・)。

また、ゼロコロナ対策を理由として政治的に‘隔離’されてきた多数の人々が、同政策の解除に伴って‘死亡’させられているのかもしれません。そしてより恐ろしい推測は、火葬場逼迫の原因は、数週間ほど前から全国的な広がりを見せてきたゼロコロナ反対運動の際に、中国共産党一党独裁体制並びに習近平国家主席による個人独裁体制に反対する人々を粛正してしまったというものです。ゼロコロナ対策の緩和により、抗議活動は沈静化したように見えますが、本当のところは、中国政府は先端技術を用いてこっそりと‘天安門事件’を繰り返したかもしれないのです。あるいは、中国政府は、再度、全世界をパンデミックの恐怖に陥れるために、敢えてゼロコロナ対策を批判するデモを誘導し、国民の‘自発的’な批判の声に応えるという形で国境を開放したのかもしれません。

こうした推測の他にも、習政権が推進してきたゼロコロナ政策の正しさを内外に知らしめるために、中国政府が、コロナ感染死亡者急増を演出している可能性もありましょう。民主主義への‘しっぺ返し’の意味を込めて・・・(‘国民の声など聞く必要はなく、独裁体制の方が正しい’と言いたい・・・)。何れにしましても、権謀術数に長けた中国のことですから、最悪のシナリオが次から次へと頭に浮かんでしまうのです。そして、その背後には、コロナ利権で潤う、あるいは、人類支配への工程表を先に進めたい金融財閥系勢力、即ち、世界権力が隠れているのかもしれません。果たして、この推理、荒唐無稽な陰謀論として片付けることができるのでしょうか。

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