おすもうさんは、本人がどう思ってるかは知りませんが、とても神聖な存在です。というべきか、おすもうさんそのものがすべての方角・時間・空気をつなぐ存在なのだと思われます。
赤ふさ・白ふさ・黒ふさ・青ふさ、これらは四神とのつながりでした。朱雀・白虎・玄武・青龍、あの神様たちに守られていました。
土俵は、円い天空・方形の大地・土盛りは須弥山を表わしていたと言います。そんな何もかもに祝福されている存在でした。
だから、おすもうさんは体を鍛え、神に祈り、殊勝に過ごし、禁欲的で、自らが全力を尽くすということにひたすら力を傾けていくのでした。
だから、賭博は当然のごとくに不可だし、おしゃべりでもいけないし、お金儲けに精を出しても行けない。暴力もいけない。いろいろとタブーを抱えていました。しきたりを守り、神を敬い、取り組みをするにしても、精進潔斎して立ち向かわねばなりませんでした。
土俵に入ったら、四股を踏み、足を上げ、いろんな方角の神様達に祈る姿勢を示します。そして、俵にのっかり、柏手を打ち、天を讃え、その手のひらをさっとうらっ返しにして、地への挨拶も忘れず、ずっと祈りっぱなしで戦う人たちでした。
おすもうさんにも、いろんな天地への挨拶をする人がいて、最初の挨拶の柏手あたりを見るのが私は好きです。どんな祝福の仕方があるのか、どれくらいそのおすもうさんが四方への祈りを大事にしているか、そういうのを見させてもらっています。
みんな基本はたたき込まれているので、失礼なしぐさをする人はあまりいません。外国出身の力士たちも、それなりにお祈りをするのだみたいにして敬虔な気持ちでやっていると思われます。
空と大地とそこに生きる人、私たちはこの世界で、自然の恵みをいただいて生きていく。そのために、日本では人間の代表の力士たちが、自然に祈り、力を出す。そういう不思議な、すべてをつなぐ儀式みたいなスポーツがあるんですね。
もうすぐしたら、五月場所も始まるから、またおすもうさんたちの仕切り前を楽しみに見ていきたいです。