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(右側が森村さんのアートで、左側がフェルメール作品です!)
なりきりアーティストの森村泰昌さんの活動、おもしろいなあとは思いつつ、何だかなあと思っていました。大阪の人なのだというのを最近知りました(高津高校から京都市立芸大だそうです)。大阪弁でしゃべっておられるのか、よくわかりません。でも、あの活動は大阪人ののり的なところもあったんですね。
昨日の朝日新聞で、イベントのあと、そこで使われたものをいろんな人に使ってもらって再利用しているとかで、それを「アート・シマツ(始末?)」ということシステムを作られたそうです。それで、新聞の人は「これはSDGsですね!」と取材に来たそうです。
鍋料理を例にとって、普通なら最後に雑炊を作る、これが鍋料理の当たり前のコースでしたけれど……、
「問題提起として『少しも無駄にしてはいけない』と考え出すと、鍋の残り汁を飲み干せたみたいな話になる。
危機感をあおって表現するというのは、話が違うと思う。」2023.4.14朝日新聞
芸術において、森村さんも無駄をなくす活動をしてはおられますが、危機感とか、「もったいない」とか、環境問題とか、そんなに気負っておられるんじゃなくて、自然なものなんだと伝えたかったんでしょうか。
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「政治性、社会性のある表現は僕も否定しません。でも一番嫌なのは、こんなにいいことをしているというにおいがするときです。いいこと、正しいことは大切だけど、それが表現として面白いかは別の話。
たとえば戦争反対って唱えるのは確かにいいことだが、それを絵にしたからって、すべてがピカソの『ゲルニカ』のようになるわけではない。」
正しいことはある。でも、それが芸術になるかはわからない。ただのプロパガンダになるかもしれないし、お仕着せになる場合がとても多いのかもしれない。世の中には、正しいように見える、つまらないものがたくさんありますからね。
そして、正しいを強制してはならない。人間は正しいだけでは生きていけないし、息が詰まりそうになるかもしれないですもんね。
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「それに、いいことをしていると、それで自己満足に陥ってしまう可能性がある。美術表現としては、そこは慎重に考えないと」……「その言葉(SDGs)は絶対使わない」
「今のはやりの言葉は一切使わない。それとは違うストーリーを見いだすのがアートなんでね」
そう、SDGsって、危機感からやってますからね。危機をあおらないと、人間は動かないから、世界中でスローガンかかげて、やるようになった。まだ、ほんの3年ばかりのことです。こんなにみんな立派で、みんながそれに乗っかりたくなる、そんな教育的であり、無言圧力のある、強制的な、脅迫っぽい流行りことばかもしれなかった。
だから、できれば一歩離れて、この動きを見ていけたらいいのかな?
こういう距離を置く姿勢、学びたいなと思いました。テロ事件が起きたら、すぐに「民主主義の危機」だとあおり、そんなのに負けないと述べる、立派だけど、何だかなあ、なんです。とりあえず被害者が出なくてよかったけれど、民主主義への攻撃ではなかったと思います。何にも言えない若者たちの、下手くそな表現・あやまった抵抗なのかな……。
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若者の一部に、あの人たちの言う「民主主義」に納得できなくて、何かうまく言葉にならなくて、それでも何か言いたくて悶々としているのを感じます。どれだけ若者たちの声が聞けているのか、私にはわかりません。かといって、総理大臣がひとりひとりを個人面談するわけにはいかないのだから、もっと若者たちひとりひとりを見ていく大人を増やさなくてはいけない。
でも、そこは人件費削減だし、人よりも産業なのが今です。防衛であり、経済であり、人口問題です。日本の衰えをごまかそうとして、それらしいことはしていきますし、喜んでいる人たちもいるでしょうけど、ひとりひとりに大人たちを向き合わせていない。大人たちは、自分の生活で精一杯で、親でさえ子どもにどれだけ向き合えているかです。