何年か前の夏、奥さんが岩手の実家に行っていない時を狙って、変てこな角材コンポストを作った時がありました。あの時は、どこからかシマシマの野良猫が遊びに来てくれて、たまたまトリのから揚げとかの残りがあったから、変な気を起こして餌付けしようとかしたけれど、もちろん、ネコは私なんかを相手にしないで、から揚げだけ食べて二度と姿を見せなかったけれど、コンポストは生き物をたまに呼んでくれることがあります。
一度は何かのヘビみたいなのもいたことがあります。あれは怖かったですね。ヘビさんにしてみたら、うちのアマガエルを食べに来ただけなんだろうけど……。
もう何十年もネコには嫌われています。「いやぁ、かわいい」とか、こっちの声のトーンが上がるんだろうな。だもんだから、ネコは警戒して、いつでも逃げ出す覚悟で相手をするし、嫌だったら二度と来ないし、たいていネコには嫌われます。だから、もちろん、飼ったことなんかありません。
これからの人生で、ネコと一緒に暮らすことが起こりうるのか、たぶん、無理でしょうね。迷いネコがうちの軒下でミャーミャー鳴いてくれない限り、私はネコと出会うチャンスはありません。
角材コンポストは、もう今は跡形もありません。ただ、庭には、枯れ枝置き場みたいなのがあります。そこに、アジサイやら、ルドベキアやら、ローズマリーやら、リクニスやら、とげとげのバラの枝やら、何度引っこ抜いても現れるアロエやら、父からもらったけど枯れてしまったカリンの木やら、いろんな枯れ枝を細かくしたり、切ったり、捨てたりなんかして、こんもりとコンポストがあった跡としてはわかります。
中にはミミズくんが大活躍しているはずですが、今は寒いから、土の中で寝ていることが多いようです。
でも、茎などの繊維質の部分はなかなか土にならないし、効率が悪いから、硬い茎だけを取り除いて、燃えるごみとして出すこともあります。
というので、日曜日は、ひたすら枯れ枝を引っこ抜いて、小さくして、ゴミ袋を突き破らないようにして、チップとまではいかないけれど、10センチくらいの長さで次から次と袋に詰めていました。30リットルのゴミ袋に一杯にするのが昨日のノルマみたいな気分だったんですね。
枝を取り除いたら、土のところが出てくるし、土を少し動かしたら、ミミズくんが顔を出します。でも、動きは鈍く、ボンヤリしている雰囲気で、こりゃ、土は移動してはいけないなと思いつつ作業をしておりました。
突然、目の前に飛び込んできたものがいました。
それがオスのジヨウビタキくんでした。私とそんなに距離はありません。彼も久しぶりに見えた土のところに興味があるようでした。
えっ、これは観察チャンス?
と思って、作業を止めて、後ろに下がりました。脅かしてはいけないと思ったんです。
しきりに鳴いています。その高い声と、その間のカクンカクンという顎でも鳴らすみたいな音、その二つを繰り返していました。
こんなふうにして鳴くのか、初めて聞いたし、観察していてうれしかった。こんなにジョウビタキくんと同じ空間にいられるライブ感がたまらなかった。
彼は相変わらず土のところに興味があるようで、そちらをつついているようでした。
奥さんも呼んでみても、いつもならヒヨドリに威嚇されたり、食べるものがなかったり、人影が見えたらすぐに逃げて行ったりするのに、昨日はなかなか去らなくて、しばらく地面をつつき、コンポストのお山の上に立ち、木の枝の先端に移動し、フェンスのところでひと鳴き、ふた鳴きしたり、あれこれしてみるものの、見えたばかりの地面が気になる様子。
何か食べるものがあるのだと思われます。とても、そんなものがあるようには見えないけど、彼には見えるものがあった。
コンポストの上の枯れ枝もつついています。そこにも食べるものがあるようです。
しばらく休憩して、どこかへいなくなった。仕方がないから、また作業を続けよう、としてたら、また来るし、そんなこんなで三回くらい、彼が来て、つついて、どこかへ行って、また戻ってきてと一時間くらいは彼と遊んだのかもしれません。
楽しい一時間でした。トリと遊べるなんてね!
食べてるときもかわいらしいけれど、どこかの枝にとまって、さて、次は何をしようかなと考えている姿もおもしろかった。
こんなにあれこれ考えながら、トリたちは生きている。当たり前のことなんだけど、それを教えてもらいました。
昨日は、家の外に一歩も出なかったけれど、貴重な時間を過ごせました。とても有り難かった。
また来てくれる時もあるだろうけど、一緒に遊んでくれないかなあ。