昨日、子どもを持つということの有難みと、子どもを持つことの責任感みたいなのが書いてあるところを読みました。それで終わりなのかなと思ってたら、そこから発展していくのです。
この話の進め方が兼好さんなんですよね。だから、それを続けて載せてみることにしました。
子どもというものは、どんなふうに育っていくものだ! それは兼好さんは語れないでしょう。人を教えるということは、こんな影響がある! それはそれでいいけど、お説教くさいです。そんなのあまり聞きたくないかも。
どういうふうに話を持っていきますかね。
世を捨てたる人の、万(よろづ)にするすみなるが、なべてほだし多かる人の、万(よろづ)に諂(へつら)ひ、望み深きを見て、無下(むげ)に思ひくたすは、僻事(ひがごと)なり。
世を捨てた人、出家した人、自分みたいな坊主の姿をした人間、そういう人は、たいていのことにおいて無一物で頼るべき人もいないものではありますが、そういう人がよく陥ってしまう癖で、
いろいろと係累・つながり・煩わしいことが多くて、何かにつけて人にへつらい、欲が深い様子を批判して、頭ごなしにダメな人間だと切り捨ててしまうことがありますが、それは間違いなのです。
欲深いし、したたかで、ヘコヘコしているくせに計算高く、自分の利益にはやかましく言い立てる人。まるでアメリカのトランプさんみたいだけど、トランプさんは「へつらう」ことはないのかな。そういう風に見える時もありますけどね。
とにかく、そばで見ていてもゲンナリしてしまう、いじましいヤツというのがいたとする。それを非難するのはダメだと兼好さんは言う。でも、どうして? 欲深い人なんて、そばにいて欲しくないじゃないですか。
どうしてそういう人を嫌ったらダメなんだろう?
その人の心に成りて思へば、まことに、かなしからん親のため、妻子のためには、恥をも忘れ、盗みもしつべきことなり。
そのこびへつらう人の心になってみたら、どんなものが見えるでしょう。それは、いとしい親のため、または大切な妻子のために、恥と思うことを忘れて、物を盗むことだってしかねないものなのです。
表面的にはメチャクチャで、恥知らずで、ドロボーに見えようとも、それは家族のためにやっていることだってあるのです。その人の心の内側に入ってものを見ないといけないのです。
ムチャクチャなことをする人には、それなりの理由があるのだ、それを知らなくては、それが見えなくてはならないという主張です。
確かにそうかもしれないけど、純粋にとんでもないヤツっていないのかな? いないんだろうな。とんでもない人間は、もとからそうであったのではなくて、そうなってしまった原因があった!
されば、盗人(ぬすびと)を縛(いまし)め、僻事(ひがごと)をのみ罪(つみ)せんよりは、世の人の飢ゑず、寒からぬやうに、世をば行はまほしきなり。
だから、盗人を捕まえ、悪事だけを罰するようなことをするよりは、世の中の人が飢えることなく、こごえることがないように、世の政治を行っていきたいものなのです。
すべて貧困と不平等が、犯罪などの諸悪の根源であると兼好さんは言います。
その通り。それを平気でやってしまうのが政治というものなのかもしれない。自分たちに都合のいいように動き、自分たちに利益を誘導し、自分たちの望むことを法令で決める。これは政治に関わる人たちがなりやすいクセみたいなものなのかな。
人、恒の( )なき時は、恒の心なし。人、窮(きわ)まりて盗みす。
人間は一定の……がない時には、一定の落ち着いた心というものも持てないものです。人間は、生活に困れば盗みだってするし、もっとひどいことだってやってしまうものです。
最近は、みんなそこそこの暮らしはできているだろうけど、よその国のぜいたくな暮らしがテレビやインターネットで見えてしまうから、もう矢も楯もいられない。もう暴動が起こってしまうし、不平不満が爆発する。
だから、中国などは、政治はムチャクチャだから、経済の豊かさで不平不満を抑えようとしている。中国共産党が政権を担う根拠は現代社会ではないのです。歴史的には政権をずっと担い続けているので、根拠はあるけれど、とても不安定な根拠であり、国民にメシを食べさせることができなくなれば、一気に政権の座から蹴落とされてしまう。
だから、政権側は必死になって自分たちの権利を守るため、日々国民を抑え、日々経済発展を推し進めなくてはならない。中国の経済が停滞することがあれば、国民の怒りは簡単に爆発することでしょう。まあ、今のところ大丈夫なのかな。
世治まらずして、凍餒(とうたい)の苦しみあらば、科(とが)の者絶ゆべからず。人を苦しめ、法を犯さしめて、それを罪なはん事、不便(ふびん)のわざなり。
世の中がうまく治まっていなくて、こごえたり飢えたりする苦しみがあれば、罪を犯す者は絶えるはずはない。人々をそんな苦しい立場に追い込み、法律を犯させておいて、それを取り締まろうというのは、かわいそうなことなのですよ。
フランスのパリだって、マクロンさんは望まれて大統領になったけれど、お金持ち優遇政策ばかりで、貧困者や地方の切り捨てばかりで、それに腹を立てた人びとが地方から出てきてデモをしたり、地方で抗議活動をしたりしているそうです。
ちっとも知らなかったけれど、フランスは資本家による経済安定をめざし、中央の充実を図り、地方のことは後回しにしていたそうです。
ああ、どこかで聞いたような話です。
昔も今も、「人を苦しめ、法を犯さしめ」ることの多い世の中です。それでも私たちは、それに耐えて、細々と家族を守って生きていかなくてはならないです。
兼好さん、どんな風に政治は行われたらいいんでしょう? それは兼好さんの専門じゃないのか……。
★ 答えは、産です。「恒産無ければ恒心無し」でした。どこかで聞いたことあるなあと思ったら、「孟子」から持ってきたことばでした。