ずっと楽しませてもらってたラグビー・ワールドカップは、先ほど終了して、南アフリカが3回めの優勝を果たしました。南アフリカはディフェンスが強かったですし、スクラムでイングランドを圧倒しました。
スクラムというのは、フラットな状態でボールを落ち着かせて、再び体がぶつかり合うための起点になるものでした。ですから、屈強な8人の男たちが組み合って、それぞれの技を駆使して押したり引いたりキープしたりするものでした。サッカーのフリーキックなどと同じで、一度リセットして、試合を始めるための起点です。でも、フリーキックのような、直接得点を入れるためのものではなくて、試合を進行させるための力のぶつかり合いです。ここがおもしろいところです。
自陣でスクラムを組むときは、後ろの人にボールを送って、蹴り出してもらうか、相手の奥深くまで入り込めるように何か作戦を考えなくてはならないものですし、相手陣内であれば、それこそ相手の弱そうなところを突いて得点できるチャンスをうかがわねばなりません。
スクラムは、日常生活でも団結するときに「スクラム組んで頑張る」などと使われるくらいに大事な起点です。イングランドはこのスクラムを自陣で崩されたり、回されたり、翻弄されて、それはすぐに相手のペナルティキックにつながり、次から次と決められて点差は開くばかりでした。
前半は僅差の展開であったのに、後半もずっとこのペースで南アフリカが試合の主導権を握っていました。イングランドはトライはできないけれど、少しずつPKを決めて、あと1つトライを挙げて、ゴールキックが入れば追いつくという点差にまで持ってきたところで、立て続けにトライを奪われて、点差が開き、勝負は残り20分くらいのところで決まってしまいました。もう反撃する余力はなかったみたいでした。
後半が始まる前、これから40分、見続ける私は何か感動することがあるのだろうかと心配になりました。
イングランドは少し余裕の気分で試合に入っていたのか、どんなに攻め込まれても、自分の陣地から簡単に南アフリカのディフェンスなんて切り裂けると自信をもっていたのでしょう。南アフリカを予選リーグで破っているニュージーランドを倒して来たチームなのだという驕(おご)りがあったと思われます。
いつでもトライは奪えると思いつつ試合をしていたイングランド、前半の感触で、なかなかトライは奪えないから、攻め方を変えなきゃと思えたらよかったのに、彼らは前半と同じようにスクラムでミスをして、相手にペナルティゴールのチャンスを与え、キッカーのポラードさんは、最初はミスしたものの、あとはすべて決めるという神がかりで(もちろん実力で)どんどん点差を開いていきました。
そして、終盤でトライを2つ。これで勝利は確実になりました。イングランドチームは、攻め込んでも手掛かりは見つからなかったでしょう。どうして攻めたらいいのか、何も方法が見つからなくて、相手の陣内に蹴り込んだり、ボールを回したりしてみるものの、すぐに自らのミスで大きく自分たちの陣地内に入り込まれていたようです。
私は、日本に勝った南アフリカのずるさというのか、勝利へのいやらしいまでの執念に少し抵抗がありました。だから、予選で1敗している南アフリカでも応援するかと思っていたのに、試合を見ていたら、やはり、イングランドの方を応援していた。
私って、いつもながらの判官びいきで、負けそうなチームを応援してしまいます。阪神タイガースは、いつも情けなく敗退するので、その試合ぶりに活気が見られなくて、もう長い間遠ざかっていて、今回もクライマックスなんとかも全く見ませんでした。
判官びいきの私だって、見ていてイヤになるのは御免です!
それで、南アフリカが、最後にパスをつないでトライしたとき、ついついヤッターとスカッとした気持ちにはなりました。でも、応援する気持ちはまだフラフラしていた。感動したいし、どちらかを応援したいのだけれど、南アフリカはやんちゃだし、イングランドは策がありませんでした。どこか乗り切れなかった。
長い前置きの1800字でした。
イングランドは、もう準決勝でとんでもないことをしていたそうです。
ニュージーランドが試合の前に、相手を讃え、自分たちを鼓舞する踊りのハカというのを行います。ふつうのチームは、黙ってそれを受け入れ、自分たちにはそういう伝統はないから、とりあえずそれを見て、試合が始まったら、普通に行う、というのが通例でした。
これはお互いのエール交換みたいなものでした。だから、自分たちにはそんな踊りをする風習はないから、とりあえず相手の踊りを受け入れなくてはならないし、お互いの健闘を祈ればいいのです。
でも、誰が言い出したのか、ニュージーランドのハカを取り囲んでしまおうぜと提案した人がいたようです。HCのエディさんは自国のチームを威圧する提案などしないと思うから、選手たちの中からこんなことをしてみたらどう? と言い出したのではなかったのかなぁ。
踊りの尊厳をけなされたニュージーランドは、調子が狂ってしまって負けてしまいます。私は絶対に三連覇すると思っていました。でも、敗れた。
まんまと強敵のニュージーランドの魂の踊りを抑え込んだイングランドは、自分たちが強いと勘違いしてしまっていた。かくして、実はたまたま勝てただけなのに、自分におぼれたイングランドは、ハカを傷つけたことで、そのお返しを大事なところでくってしまい、いいところなく敗れたのでした。
相手が一生懸命に踊り、声を出しているのを邪魔してはならないし、相手の尊厳を傷つけるものは、しっぺ返しを受けるものなのだ、そういう教訓を得たような気がします。
南アフリカは、やんちゃ小僧やら、みんなそれぞれにデコボコのおもしろくて力強いチームでした。このチームにひょっとしたら、勝てたかもしれない日本チームもたいしたものでした。
でも、今日で終わってしまった。来年オリンピックがあるというけど、ちっとも楽しみではありません。メディアはあれこれ宣伝はするでしょうけど、そんなの見ないで、どこかへ旅行したい気分です。どうして興味ないのかな。陸上も、水泳も、バレーも、いろんな種目も、やたら日本押しでやってるし、日本の選手たちも頑張るだろうけど、身びいきばかりで、そこがおもしろくないなあ。イングランド対南アフリカでも、面白かったのです。
来年の夏、何をするか考えましょう。ラグビーの期間中は、週末が楽しみだったし、日本の快進撃は楽しかったんでした。でも、今日で終わってしまった。
何だかサビシイ気分です。