古いカードから抜き出して、メモしてみます。
6・茶と害虫
それまでは年間に二、三回ぐらい、多いときには二十回も農薬を散布していたんです。信楽町は日中と夜間の温度差が激しいので害虫は少ない方ですが……。
それまでは年間に二、三回ぐらい、多いときには二十回も農薬を散布していたんです。信楽町は日中と夜間の温度差が激しいので害虫は少ない方ですが……。
農薬を一回も散布しない方式に改めた一年目は、さんざんだった。前年までの農薬散布で、害虫の天敵がまったくいないため、たちまち葉がやられ、みるみる茶色になり、赤くなって、葉が落ち、全滅したのである。
翌年も同様どころか、葉だけでなく幹にもクワシロカイガラムシがついて汁を吸うのだ。根だけでも助けようと、幹を切り取って捨てざるを得なかった。再び一から始めるようなものだった。
そして三年目。こんどは信じられないほど天敵が出現したのである。クモ、カマキリ、トンボ、ナナホシテントウムシ、コオロギ……。害虫は、ついに姿を現わすひまさえなかった。一度も農薬をまかないのに、葉はあおあおとし、根も一段と深く、収穫も上がったのだ。
今年の春は、全国的に茶の被害が目立った。新幹線で静岡県を走ると、るいるいたる褐色と化した枯れ葉が目に飛び込んだ。しかし、片木さんの茶畑はびくともしなかった。〈1996.8.4 Sun 朝日新聞より〉
*片木さん……信楽町の有機栽培茶の農家
*片木さん……信楽町の有機栽培茶の農家
言うのは簡単だけれども、実際はしんどい日々だったように思われます。けれども、自然の力に学びたくなるお話だと思いました。果たして私が、そんなことを実践できるかですけど、とりあえず家の中ではホッタラカシでやっています。いや、庭にポイ捨てしたビワとアボカドだけは大切にいますけど、これは自然ではないですね。ただのグータラだ!
7・においガラス
山本晋也(映画監督):親父はタバコの匂いがしたな。おふくろはナフタリンの匂い。
山本晋也(映画監督):親父はタバコの匂いがしたな。おふくろはナフタリンの匂い。
子供の頃の匂いで、今でもよく覚えてるのは、まだ戦争中のことですけど、米軍のB51が墜落したときに、弁当持っておばあちゃんと、現場までそれを見に行ったんですよ。畑のまん中が陥没して水たまりみたいになっていてね。
で、おそらく風防の破片だと思うんだけど、プラスティックみたいなやつをこすると、とてもいい匂いがするんですよ。あれは宝物みたいに大事にしたな。
嵐山光三郎(作家):カーボナイトとかプラスティックみたいなやつだよね。
山本:カーボナイト、なつかしい言葉だね。あとエボナイトとかセルロイド。
〈集英社「青春と読書」1988.7月号より〉→1988.7.29記録
B51って、そういう爆撃機あったんでしょうか。B29とB52は聞いたことがあったけれど、51もあったのかどうか。調べたら分かると思うけれど、調べたくもありません。とにかく、飛行機のコックピットを覆うガラスが匂いがするというのは聞いたことがあります。そういうのを追いかけたドラマだって昔見た記憶があります。もう戦後をテーマにしたドラマって、あまりないですね。
〈集英社「青春と読書」1988.7月号より〉→1988.7.29記録
B51って、そういう爆撃機あったんでしょうか。B29とB52は聞いたことがあったけれど、51もあったのかどうか。調べたら分かると思うけれど、調べたくもありません。とにかく、飛行機のコックピットを覆うガラスが匂いがするというのは聞いたことがあります。そういうのを追いかけたドラマだって昔見た記憶があります。もう戦後をテーマにしたドラマって、あまりないですね。
山本さんも嵐山さんも、小さい頃の思い出を抱え、それらを私たちに教えてくれてたけれど、こういう人たちがどんどんいなくなって、やがては今の若い人たちの世界になります。今も十分若い人たちの世界だけど、どうなっていくのかなあ。