甘い生活 since2013

俳句や短歌などを書きます! 詩が書けたらいいんですけど……。

写真や絵などを貼り付けて、二次元の旅をしています。

二つの文壇ばなしの本

2021年11月17日 22時52分16秒 | 本と文学と人と

 森敦さんのことを書こうと思います。森敦さんの文壇エッセイ「星霜移り人は去る」(1974 角川文庫)を先日(といってもかなり昔)読み終えたんでした。

 今見てみたら、カバーを描いてる司修さんの絵、なかなかすごいものがあるし、内容と合ってない気がするんですけど、インパクトがありました。写真は、もう少し光がいい時に撮ろうと思います。2013年の10月に古本市で買った本でした。100円か200円だったはずですが、なかなか得した感じがあります。何が得したかはわからないんですけど……。

 森さんは熊本天草のご出身。でも、長崎生まれ。ソウルで育ち、そちらで中学まで過ごし、東京に出てきた。そちらで文学的な交流があって、すでに1934(S9)年には「酩酊舟(よいどれぶね)」という新聞連載を経て単行本というデビューをしています。22歳くらいだったんでしょうか。早熟の作家さんでした。

 でも、世の中とうまくやっていけないし、戦争に巻き込まれてどんな風にされてたのか、そのあたりは今ごろになって気になりました。戦争にはいかれたんだろうかな。

 戦争のはざまの間は自らを伸ばすどころではなくなって、あちらこちら放浪してしまいます。約四十年の放浪の後、「月山」(1974)という作品で芥川賞を得て、作家としての安定を得たのかもしれません。なんというブランクなんでしょう。

 何十年の放浪癖は、作家として再デビューしてからも定住生活を許さなくて、それからもずっとあちらこちらに行かれたんだと思います。



 たまたまNHKさんとコラボして、「おくのほそ道」の紀行番組を撮りました。その時のことを本にもして、文庫本だって出ているみたいです。ファンだったのに私は、その文庫本も買っていません。またいつか、アマゾンで買うとしますか。それとも、いつもの古本市で出会いを求めるかな。そちらの方が楽しみはあるんですけど……。

 この前に読んだ本は横光利一さんとの交流がとても貴重だったみたいなことが書いてありました。菊池寛さんとか、その他の大御所さんにはあまり尊敬というのか、教えてもらった感じいろいろとお世話になってるし、いろんな話も聞かせてもらったハズなんだけど、森さんにとって最大の影響を与えた人は横光さんだったのかな、という印象でした。

 今となっては、菊池寛さんも、横光利一さんも、森敦さんも、世の中的には消えていきそうな人たちになっています。残念なことです。

 本当はそうではないんですよ。菊池寛さんもいい作品書いてる気がするんだけど、どういうわけか世の中から忘れられている。もっと、古い人間が若い人に見せてあげなきゃいけないんですけど、私は何もできていません。言うだけです。



 森さんは、とにかく強い人ですし、徹底的に旅人です。成功とか、作品人すとかいう執着はありません。ものにこだわらないし、ものにこだわることは何も生まれない。世の中はすべて空。とても仏教的な生き方をされていました。物質は求めていなかった。人や心も求めなかった。生き方を極めようとか、そういうこともしなかった。ただいろんなところ、何かありそうなところへ行くだけです。そこで体をぶつけて何かを取り出そうとした。

 そういうものにこだわらないところ、どこにでも行けてしまうこと、あこがれてしまいました。でも、簡単なことではなかった。



 その勢いで、途中で投げ出していた井伏鱒二さんの対談集を読み始めました。井伏さんは森さんよりも一回り年上です。でも、1996年まで存命だったので、お会いしたことはないけど、同じ空気・同じ時代にいたという実感があります。その大家の井伏さんの対談集の中にも、横光さんの話が出てきます。

 先日なくなられた瀬戸内寂聴さんは、森さんや井伏さんよりも若かったのかと思ってしまいます。99歳というのは、ものすごく長生きなんだけど、それ以前にもそれ以後にも、たくさんの文学を作ろうとした人たちがいたんだと、日本の作家たちの層の厚さを感じます。私が知っているのは、そのほんの一部で、知らない人たちがたくさんいて、たぶん、このまま出会わない人たちもいるでしょう。

 人の出会いは限られている、それは解ります。となると、だからこそ、たまたま出会った人との出会いを大事にして、少しでも知ろうとすること、チャンスがあれば、自分から進んで読んでみること、大事なんだよなと思います。また、本を読んでみましょう。うっかり者の私のことですから、見落とし・見逃しはたくさんあります。でも、せいぜい頑張りたいし、その空気を味わえたら、何だかうれしいのは、どういうことなんでしょうね。



 ああ、二冊の文庫本、二つとも2013年に買って、ずっと放置していたのに、突然読みだすなんてね、何かがそうさせたんでしょう。

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