サイボーグ009は、アニメの方が先ですね。ほんとうはマンガが先にあって、それをアニメ化したのだと思われますが、私はマンガを読んでいなかった。
そもそもうちに漫画本を手に入れる余裕があったのだろうか。小さい頃、特別なときに「少年画報」を、ごくたまに買ってもらう時があったけれど、それ以外は手にすることがありませんでした。
本屋さんに、さも楽しそうに並べられている漫画雑誌、それらは月刊だったと思うけれど、「ぼくら」も、「冒険王」も、とても手が届かなくて、ただ表紙を眺めていいなあと思うだけでした。
おもしろそうな付録がついてても、マグマ大使の怪獣が表紙に載っていても、ただながめるだけでした。「ぼくら」は生涯に1冊か2冊しか買ってないか、そもそも買ったことがないかもしれない。
「冒険王」は大きくなって、何冊か買った程度、「少年画報」は数冊は買ってもらったでしょうか。
だから、「サイボーグ009」は映画館で初めて見たように思います。いくつだったのかな。とにかく父に連れて行ってもらったような記憶があります。
ねえ、お父さん、そうだったですね。
「あんまり記憶はないねん。おもしろかったかな。ボクら、マンガに心を許すということがなかったからね。」
そうですか。お父さんは、どんな映画が好きだったんです? あまりちゃんと聞いたことなかったなあ。
「別に何でもいいんやで。時代劇とか、わかりやすい方がよかったかな。」
そうですか。でも、お父さん、そんなに時代劇好きだった?
「まあ、特に好きなものはないなぁ。みんなが楽しかったら、それでいいんやわ。」
あら、そうなのか。あんまり作り物のお話って、お父さんが好んで見るって、なかったのかな。だから、私もこの年になって、作り物のお話について行けなくなったのかな。
「サイボーグ……、これも昔見たのかな。あんたらが楽しそうに見ていたから、それでよかったんとちゃうか。」
うん、まあ、ボクは楽しかったし、すごく印象には残ってはいるんだけど、ボクはすぐヒロインに恋してしまうんですよね、お父さん! ボクがこんなにほれっぽいって、お父さん知ってました?
「まあ、男の子は、女の子好きになってもいいよ。でも、迷惑をかけたらあかん。」
はい、わかってますよ。お父さんは、女の子のことで誰かに迷惑かけたことあるんですか? まさかね。あれ、でも、伯母さんが、お父さんに好きな子がおったとか、そんなこと話してたの妻が聞いたとか言ってましたけど。
「ねえさんも、余計なことを言うたんやな。そんなことはないよ。ない、ない。」
そうですか、でも、お父さん、かわいい子が好きだったんですよね?
「うん、榊原郁恵ちゃんみたいな女の子が好きやってん。」
ほんとですか? わざとオカンに近いキャラを選んで、オカンを喜ばせてるんじゃないの?
「そんなことはないねん。あんたはどうやの?」
はい、もうかわいい子なら何でも好きなんですけど、かわいすぎるのは何だか微妙かな。作りすぎてるかわいらしさ・わざとらしさはイヤなんですけど、こんなオッチャンになっても、かわいい子には弱いかもしれないです、お父さん。
「あんたも、そんなアホなこと書いとらんと、ちゃんと自分の道を見つめなあかんで!」
はい、頑張ります!
009は、物語よりも009と003とが、どんな関係に発展するのか、それがソワソワと心配だったのかもしれないな。
「なんや、あんまり物語を見てるんとちゃうんやな。」
そうやねえ。ついつい女の子が好きやったから。スカートめくりばっかりするとんでもない子どもやったから……。
「そうか、そんなこともあったんやね。困った息子やな。恥ずかしいわ……。」
ハイ、申し訳ありません。とんでもない息子です。ゴメンナサイね。でも、お父さんも小さい頃は、それなりにやんちゃやったと伯母さんは言ってましたけど……。
「まあ、若い頃は、そんなアホなことをしてたりするかな。あんたはそんなことしたらあかんよ。もう年やからな。」
そうですね。ゼロゼロナインの思い出よりも、お父さんに映画館へ連れて行ってもらったこと、そんなことを思い出しますね。そして最後の最終キャラ。昔から大仕掛けな、最終ボスって、倒すのはわかってるんだけど、それでもハラハラするもんでしたね。
「そうやな。でも、なんでサイボーグなんや?」
ハイ、ボクもよくはわかりません。何となく思い出して、お父さんに話しかけたくなりました。明日も早いし、もう寝ることにします。明日、雨が降らないとうれしいんですけど……。
雨も降らないと困るんだけど、降ると困るときもありますね。