高校の時のセンパイが教えてくれた作品です。「これがイチバン好きやワ」ということでした。
というわけで、読んでみたら、まあまあおもしろい作品なのかなと思い、今も思い出したように読むことがあります。
ジパングにキリスト教を伝えようと、ザビエルさんははるばる航海します。その船に悪魔も潜んでいて、イルマン(神父さんの階級かな?)の1人がマカオに取り残されたのをいいことにして、そのままイルマンに化けて、ザビエルさんのお付きの者として何食わぬ顔でいます。
でも、ジパングに来てみたら、悪の道にそそのかす相手がいませんでした。みんな悪もへったくれもない生活をしていた。悪魔はあまりに暇なのでタバコの栽培を始めました。さあ、紫の花が咲きました。それに目をとめた牛商人が声を掛けてきます。
悪の道へ突き落とす第1号が見つかりました。彼と花の名前で賭けをすることにしました。名前がわかれば牛商人の勝ち、名前がわからなかったら悪魔の勝ちです。
つい勢いで神の名前を借りて誓ってしまいます。ああ、あぶない!
――確かに、御約定(おやくじょう)いたしました。御あるじエス・クリストの御名にお誓い申しまして。
イルマンは、これを聞くと、小さな眼を輝かせて、二三度、満足そうに、鼻を鳴らした。それから、左手を腰にあてて、少しそり身になりながら、右手で紫の花にさわって見て、
――では、あたらなかったら――あなたの体と魂とを、貰いますよ。
こう言って、紅毛は、大きく右の手をまわしながら、帽子をぬいだ。もじゃもじゃした髪の毛の中には、山羊(やぎ)のような角つのが二本、はえている。
牛商人は、思わず顔の色を変えて、持っていた笠を、地に落した。
悪魔と約束してしまった牛商人。期限は3日しかありません。どうにかしてこの紫の花の名前を知らなくてはならないのに、外来植物でだれもこんなのは見たことがありませんでした。
もう、やることは1つ。寝込みを襲うか、不意を突くしかありませんでした。
牛商人は、とうとう、約束の期限の切れる晩に、またあの黄牛(あめうし)をひっぱって、そっと、イルマンの住んでいる家のそばへ、忍んで行った。
……中略……
そこで、牛商人は、毘留善麻利耶(ビルゼンマリア)の加護を願いながら、思い切って、あらかじめ、もくろんで置いた計画を、実行した。計画というのは、別でもない。――ひいて来た黄牛の綱を解いて、尻をつよく打ちながら、例の畑へ勢よく追いこんでやったのである。
牛は、打たれた尻の痛さに、跳ね上りながら、柵を破って、畑をふみ荒らした。
……中略……
すると、窓の戸をあけて、顔を出したものがある。暗いので、顔はわからないが、イルマンに化けた悪魔には、相違ない。気のせいか、頭の角は、夜目ながら、はっきり見えた。
――この畜生、何だって、おれの煙草畑を荒らすのだ。
寝ぼけていた悪魔は、ヒミツにしなくてはいけない花の名前をしゃべってしまったのでした。それから、悪魔は退治されたものの、しばらくは日本にいたということが語られ、明治の日本ではというところで、
ただ、明治以後、ふたたび、渡来した彼の動静を知ることができないのは、返えす返えすも、遺憾(いかん)である。……
というわけで、明治になって久しぶりにキリスト教が認められたので、ふたたび悪魔が日本に来たのだよというカタチで書かれています。
なかなかおもしろい。キリスト教と悪魔は持ちつ持たれつの関係で、キリスト教のある社会では、悪魔が活躍の場を広げることができる、ということになっているんですね。
あれ、どこかで聞いたような話じゃないですか。とんでもないミサイル教の国があれば、そこにつけこむフワフワヘッドとお追従(ついしょう)悪魔が現れる。
ヘンテコ経済教が広がると、それにのっかるように、年増悪魔がはびこるとか、もう日本のあちらこちらで変な宗教とセットの悪魔が今ものさばっているんですね。
アクカガワさん、おもしろい真理を見つましたね。今さらながら、先見の明があるなって思いますよ。そりゃ、頭いいんですもんね。
★ ほんの数か月前の記事だけど、わからないことがありますよ。年増悪魔って、だれのことだったんだろう。ちゃんと書いておかないとわからなくなりますね。(2018.6.30)
というわけで、読んでみたら、まあまあおもしろい作品なのかなと思い、今も思い出したように読むことがあります。
ジパングにキリスト教を伝えようと、ザビエルさんははるばる航海します。その船に悪魔も潜んでいて、イルマン(神父さんの階級かな?)の1人がマカオに取り残されたのをいいことにして、そのままイルマンに化けて、ザビエルさんのお付きの者として何食わぬ顔でいます。
でも、ジパングに来てみたら、悪の道にそそのかす相手がいませんでした。みんな悪もへったくれもない生活をしていた。悪魔はあまりに暇なのでタバコの栽培を始めました。さあ、紫の花が咲きました。それに目をとめた牛商人が声を掛けてきます。
悪の道へ突き落とす第1号が見つかりました。彼と花の名前で賭けをすることにしました。名前がわかれば牛商人の勝ち、名前がわからなかったら悪魔の勝ちです。
つい勢いで神の名前を借りて誓ってしまいます。ああ、あぶない!
――確かに、御約定(おやくじょう)いたしました。御あるじエス・クリストの御名にお誓い申しまして。
イルマンは、これを聞くと、小さな眼を輝かせて、二三度、満足そうに、鼻を鳴らした。それから、左手を腰にあてて、少しそり身になりながら、右手で紫の花にさわって見て、
――では、あたらなかったら――あなたの体と魂とを、貰いますよ。
こう言って、紅毛は、大きく右の手をまわしながら、帽子をぬいだ。もじゃもじゃした髪の毛の中には、山羊(やぎ)のような角つのが二本、はえている。
牛商人は、思わず顔の色を変えて、持っていた笠を、地に落した。
悪魔と約束してしまった牛商人。期限は3日しかありません。どうにかしてこの紫の花の名前を知らなくてはならないのに、外来植物でだれもこんなのは見たことがありませんでした。
もう、やることは1つ。寝込みを襲うか、不意を突くしかありませんでした。
牛商人は、とうとう、約束の期限の切れる晩に、またあの黄牛(あめうし)をひっぱって、そっと、イルマンの住んでいる家のそばへ、忍んで行った。
……中略……
そこで、牛商人は、毘留善麻利耶(ビルゼンマリア)の加護を願いながら、思い切って、あらかじめ、もくろんで置いた計画を、実行した。計画というのは、別でもない。――ひいて来た黄牛の綱を解いて、尻をつよく打ちながら、例の畑へ勢よく追いこんでやったのである。
牛は、打たれた尻の痛さに、跳ね上りながら、柵を破って、畑をふみ荒らした。
……中略……
すると、窓の戸をあけて、顔を出したものがある。暗いので、顔はわからないが、イルマンに化けた悪魔には、相違ない。気のせいか、頭の角は、夜目ながら、はっきり見えた。
――この畜生、何だって、おれの煙草畑を荒らすのだ。
寝ぼけていた悪魔は、ヒミツにしなくてはいけない花の名前をしゃべってしまったのでした。それから、悪魔は退治されたものの、しばらくは日本にいたということが語られ、明治の日本ではというところで、
ただ、明治以後、ふたたび、渡来した彼の動静を知ることができないのは、返えす返えすも、遺憾(いかん)である。……
というわけで、明治になって久しぶりにキリスト教が認められたので、ふたたび悪魔が日本に来たのだよというカタチで書かれています。
なかなかおもしろい。キリスト教と悪魔は持ちつ持たれつの関係で、キリスト教のある社会では、悪魔が活躍の場を広げることができる、ということになっているんですね。
あれ、どこかで聞いたような話じゃないですか。とんでもないミサイル教の国があれば、そこにつけこむフワフワヘッドとお追従(ついしょう)悪魔が現れる。
ヘンテコ経済教が広がると、それにのっかるように、年増悪魔がはびこるとか、もう日本のあちらこちらで変な宗教とセットの悪魔が今ものさばっているんですね。
アクカガワさん、おもしろい真理を見つましたね。今さらながら、先見の明があるなって思いますよ。そりゃ、頭いいんですもんね。
★ ほんの数か月前の記事だけど、わからないことがありますよ。年増悪魔って、だれのことだったんだろう。ちゃんと書いておかないとわからなくなりますね。(2018.6.30)