ネットでこんな記事がありました。河出文庫の営業の方だそうです。
担当者より 文庫 - 日本文学
干刈あがた『ウホッホ探険隊』を、なぜ今復刊したのか? 2017.12.27
「干刈あがたさんとか、どうよ?」
と言われたのは、数年前の昼下がり。ある書店員さんと売上が上がらない河出文庫をどうすれば良いか話している最中でした。
「河出文庫は良いものを出しているが、書店側からするとニッチ過ぎて売りにくい。もっと幅広く読まれる本を出さないと売上はあがらないよ」
これまでも様々な書店員さんから、何度も指摘されてきた意見です。
そのことを何度も編集部に伝えてきましたが、前進しない状況が続いていました。編集部がやらないなら自分でやれば良いのですが、営業部では本を作ることはできません。でも具体的な企画提案があれば、編集部も動いてくれるかもしれない。そう思ってその書店員さんにこんな質問をしました。
「じゃあ河出文庫は何を出せば良いでしょうか?」
その質問に対して出て来たのが、冒頭の干刈あがたさんのお名前でした。(中略)
営業の方もあれこれ模索しているんですね。知らなかった。そして、たまたまヒントをもらって復刊することになった。でも、気になることがあったそうです。
ただどうしても気になることが。それはタイトルでした。
『ウホッホ探険隊』というタイトルは、読んだ人にはとてもしっくりくる良いタイトルです。でも読んでいない人にはその内容は恐らく伝わらないかもしれない。
この疑問を検証するために、同僚に「『ウホッホ探険隊』っていう作品があって」と話してみると、「ゴリラが出てくるの?」と返されてしまいます。彼がノンフィクション作家である高野秀行さんの熱狂的ファンだからかもしれませんが、家族を巡るハートウォーミングなストーリーと『ウホッホ探険隊』というタイトルがどうにも一致せず、このまま復刊しても読者に届かないのではないか? という不安をどうしても拭えずにいました。
既に出来上がった素晴らしい作品のタイトルについてとやかく言うのは、著者や関係者の方々に対してとても失礼なことかもしれません。
ただ常々思うのは、タイトルというのは既に読んだ読者のものであると同時に、まだ読んでない読者のものでもあるということです。まだ読んでいない読者に興味を持ってもらうためにはどうしたら良いか、とても悩みました。
やがて考えついたのは「タイトルと中身のギャップをむしろ武器に出来ないか」ということでした。
ということで本屋さんに出ているそうです。そのうち本屋さんに行って、買ってきたいと思います。
ということで、「黄色い髪」から引用します。
親戚の高校生のお姉ちゃん(詠子)と主人公の夏実(中学2年生)は話をしています。
「夏実ちゃんくらいの時には」と詠子が言った。「体がなんだかこう、風が吹き抜けていくというか、水が流れていくというか、軽くて清々しい感じがしていたのよね。ううん、そんなことも意識しなかった。でも今は、何かよどんでいるような、毛穴がつまっているような、体が重い感じがするの。自分で自分の体の匂いにむせてしまうような、いやな感じ……」
「二十歳になれば、それがなくなるの?」
「それはわからないけれど、今がとても中途半端で、やりきれないような気がするの」
「〈人間ってやつぁ、いるところが気にいることなんて、ありゃしないよ〉。ボクは小学校に入る前に戻りたいなあ」
「星のスイッチ・マン」
二人は笑った。それは『星の王子さま』に出てくるセリフだ。
ああ、なかなかいいですね。会話がキラキラしていて、私にはこんな会話は書けないです。というか、書こうとしたこともありませんね。若い人たちが話し合うところなんて、想像もできないです。通訳が必要なくらいに今の若い人たちの会話って、わからないところがあります。
ということは、あがたさんの小説も若い人には通用しないのかなぁ。もっと読んでもらいたいんだけど、どうしたらいいんでしょう。