ラジオで、クスノキの花が咲いているというのを聞いたのは昨日でした。
心当たりのクスノキを見あげてみました。「白い花が咲いている」と聞いたと思うのだけれど、白い木の花は見られませんでした。
そう、何となくついこの間まで木を白く彩っていたナンジャモンジャの花のイメージがあったんだと思います。
あんな風に木全体に白い花がつくのであれば、いくら鈍感な私でも気づくはずではありませんか!
そんなわかりやすい花ではなかったんだ。
今まで、大きな楠に出会ったことはありました。いつも立派で、枝がとぐろをあちらこちらで巻いているような、ファイティングポーズといったらいいのか、全身で立ち向かうものを迎え撃つ、やる気の樹形がクスノキでした。
有名な木だけではなくて、何十年かだけ生きてるだけのクスノキでさえも、どんどん大きくなるし、黒々とした緑の大山になっていることが多かったんです。だから、時々は、人間の都合でクレーンなんかを頼んで、てっぺんとかを切られたりすることもありました。クスノキさんは、ごく当たり前に人々を見守っていただけなのに、それを管理する側としては邪魔なものにしか見えない。
そして、どれくらいの根っこが地面を這っているのか、考えただけで恐怖にもなるくらいのパワーを持った木でした。
そういう印象は強いから、まさかこの木が花をつけるというイメージは一切ありませんでした。ただ強く、たくましく、緑の葉を茂らせているだけだと思っていました。
最近、常緑樹というのは春から夏にかけて少しずつではあるけれど、葉を更新していて、気づいてみたら、ものすごく落葉しているというをようやく知る年になりました。常緑樹も古い葉は捨てたりするし、木の先端にはできたばかりの頼りない葉がフワフワとついているのだ、というのをウチのウラジロガシに教えてもらいました。
そういう目で見ていたら、確かに知り合いのクスノキも、この春からずっとたくさんの葉を落としていた、というのを知ったんです。
でも、もう最近は更新が終わった感じでした。
花は、昨日は黄色い小さな粒々が、木全体についていました。遠くから見ると、少しだけ黄色を帯びている感じでした。これがクスノキの花なのか……。
写真を撮ったのは昨日でした。今日、どうにか雨が降らなくて、クスノキはどうしてるかな、と見上げたら、もう花はついてないようでした。昨日一日見られだけで、今日は見えなくなっていた。
本当に短い命のクスノキの花でした。