甘い生活 since2013

俳句や短歌などを書きます! 詩が書けたらいいんですけど……。

写真や絵などを貼り付けて、二次元の旅をしています。

冬空と賢治の歌稿A

2017年12月02日 09時33分21秒 | 賢治さんを探して

26 白きそらは一すぢごとにわが髪をひくここちにてせまり来(きた)りぬ
 これは冬空の歌かどうか。でも、白い空が迫ってくるというのは、たぶん冬の空で、それがやってくるとゾワゾワするんだから、何だか精神的に圧迫されているんでしょう。

 一筋ずつ私の髪が引かれるなんて! 確かに私だったら、寒空に毛が抜かれるということもあるだろうけど、賢治さんは若いんだから、毛の心配は関係ないだろうし、それくらい冬が怖かったのかな。いや、これは夏なのに白い空がやってきて、農作物に日が当たらなくなるのに心を痛めたということなんだろうか。そういう気もしてきました。

 冒頭から選択ミスですね。


28 せともののひびわれのごとくほそえだは淋しく白きそらをわかちぬ
 先ほどの歌との関連で行くと、瀬戸物のひび割れみたいな細枝があって、それは葉を落とした冬木立です。そしてその木が立っている空は、淋しく白い空だった。

 ということは、「白きそら」はやはり冬かな。

 これは作品的には凝っています。ひび割れのような枝、淋しく白い空が枝で分断される。わりとわかりやすいショッキングな絵柄です。

 でも、瀬戸物のひび割れみたいと言われる小枝は、心外だと思うかもしれない。小枝さんとしてはもっとキレイに表現してよ! とねだりたくなるような、そんな歌です。

 寒くてギシギシする感じはありますね。

31 うす白きひかりのみちに目とづればあまたならびぬ細き桐の木
 私は、この年になってようやく桐の木に興味が出てきたくらいで、高校の校舎の中にあった桐の木にも、まるで興味がありませんでしたっけ。ベレー帽の古典の先生がせっかく教えてくださったのに、軽く流してました。

 賢治さんは違います。しっかりと冬の道で、とても木々なんかどうでもいいくらいの寒さの中で、光とそれに照らされる桐の木を見ておられた。ああ、違いますね。さすがだ。

54 凍りたるはがねの空の傷口にとられじとなくよるのからすか
 冬空にははがねの傷口があるそうです。そこから冷気やら、雪やら、風やら、いろんなものが吹き出してきます。

 ついでに、地上にあるものを吹き飛ばし、吹きもどしで傷口の中にかき込んでいく。そういうのが頭に浮かんで、それに抵抗している夜のカラスを見つけた。

 一つ一つのキャラが生きている短歌で、なかなかいいですね。物語が生まれそうだ。



64 白きそらひかりを射けんいしころのごとくちらばる丘のつちぐり

73 屋根に来てそらに息せんうごかざるアルカリ色の雲よかなしも


 冬空は、秋と同じように空気がキンキンになって、光も通しやすいし、今までそこにあった葉っぱたちがいなくなっていますから、スッカラカンの透き通しです。

 そうなると、今まで見えなかったモノが見えてきます。大地の土、アルカリ色の雲、それぞれがなんだか物語を作り出したそうで、それをどう受け止めようか、賢治さんが考えている雰囲気があります。

 短歌はそんなに注目されないけれど、物語のネタはすでにあったんですね。


363 うたがひはつめたき空のそこにすみ冬ちかければわれらにいたる

364 かくてまた冬となるべきよるのそらただやふ霧に降れる月光


 何でも物語が作れてしまう賢治さんは、とうとう抽象的なものから物語を作ろうとしています。おもしろいです。

 「疑い」は冷たい空の底に棲んでいる。冬になってくると、空の底から空の傷口を通って飛び出してくるのでしょう。怖いくらいです。どうして冬がシーズンなのかな。夏には疑いは休憩しているのですか。そうか、農作業で忙しい時はシーズンオフなんだ。

 冬はどこから兆すのかというと、霧と月光から気配が生まれる。私には感じられないものだけど、ちゃんと見ている賢治さんにはわかるんです。すごいです。



365 夜の底に霧ただなびき燐光(りんこう)の夢のかなたにのぼりし火星

366 あけがたの食堂の窓そら白くはるかに行ける鳥のむれあり


 賢治さんは夜も寝なかったのかも知れない。たぶん睡眠はとったと思うんだけど、いろんなものをキャッチできちゃうから、ふと目覚めただけで、火星を空の中に見つけてしまうのです。これは夢?

 渡り鳥だって、夜明け前にゴハンを食べることよりも、まず鳥たちの気配を感じ、空を渡る鳥たちのことを思うことができる。

 私はなにをつかめるでしょう。夜中に何度か起きますが、機械のモーター音は聞きつけられますが、他は何にも感じ取れないです。そして家族に迷惑を掛ける騒音を鳴らすだけです。ああ、何という迷惑な私。音を聞かないで雑音だけを垂れ流している。


367 沈みたる夜明の窓を無雑作にすぐる鳥あり冬ちかみかも

368 さだめなく鳥はよぎりぬうたがひの鳥はよぎりぬあけがたの窓


 抽象的な存在の「疑い」は鳥に乗り移ったようです。この鳥はどんなことをするんでしょう。人間たちに「疑い」をばらまくのかな。

 まるで一時期問題になった鳥インフルエンザみたいです。それを予言していたのかな。まさかね。

 でも、はるかシベリアから、どうして鳥たちはやってくるのか。そりゃ、シベリアは日本なんかよりも寒いから、避寒のためなんだろうけど、その鳥たちは手ぶらだけど、何かをもたらすのではないか、というアイデアはおもしろいです。

 冬空。今朝は、晴れています。お仕事もあります。奥さんは用事で出かけました。だったら、掃除かお仕事か、どっちもやらなきゃダメかな……。どれだけできるんだろう。


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