奥さんとつきあい始めてまだそんなにたっていない時、お誕生日にクロネコの小さなヌイグルミをあげたことがあります。子どもじゃないんだから、そんなのもらってもしょうがないよ、というのは今の感覚で、当時としては悩みに悩んで、「エイッ!」と清水の舞台から飛び降りるような感じで買いました。
あのクロネコさんはどこかにあるのでしょうか。どこかにあると信じたいけれど、見つけたら、なあんだこんなものだったのかと思うかもしれないので、見つからない方がいいかもしれません。私の心の中ではものすごく大きな、ものを言うクロネコだったので、今もひっそり、私の心の中には残っています。
だから、もしヌイグルミ好きのうちの子に見つかったら、それはもう大変です。すぐにさらわれてコレクションの1つにされてしまうかもしれない。だから、せいぜいどこかの箱の中で眠っていてもらわなくては!
クロネコって、不思議な魅力を持っているような気にさせる生き物です。本人は他のネコと同じように暮らしているつもりなのに、人間はそこに何か意味を勝手に見つけてしまうところがあります。だから、飼うにしても、何か構えてしまうところがあるのかもしれない。
それで、先日、日曜の朝、私が小さい頃によく遊んだ公園を散歩していました。何度も何度もグルグル回った遊具が四十年以上も変わらずにそこにありました。
当時は見向きもしなかった小さな鳥が歩いていて、もっと近づいて欲しかったけれど、すぐに早足で向こうに走っていってしまいました。
昔の公園は、子どもたちが走り回っていたものですが、休日の朝の公園は? もっと早ければたくさんのお年寄りの皆さんがいたと思われますが、何となくガラーンとしていました。犬の散歩をさせているご夫婦がいるだけだったでしょうか。
それほど紅葉もしておらず、人影まばら。あとで集めてある落ち葉を見つけますが、桜などはすでに散った後だったのかもしれません。この公園は桜がメインの公園なのでした。
そこへしずしずと進むクロネコを見つけました。付近に飼い主はおらず、公園のど真ん中を歩いています。何となく自由な感じです。ひょっとしてノラさんかもしれない。その割には少し太っている……。
爪研ぎはこちらの木でやることに決めているのです。とにかく、やるわよとやり始めました。でも、すぐに切り上げます。そして、周囲を見回しています。やはりノラさんのようです。
まんまるくなったり、集められた落ち葉の前でじっとしている。もうそんな季節なんだと、しみじみしているわけではないようです。
どうも、気になる何かを感じているらしい。
私は、あまり相手にしてもらえず、小さい頃からネコとは相性も良くないので、もうネコから離れることにしました。出口まであと50メートルというところまで来ました。
すると、さっきのご夫婦がやって来るようでした。それよりもさっきのクロネコはさっと私の方に近づいたかと思うと、すぐに木に登り、とにかく1メートルと少しくらいまでのところにふみとどまっています。……その姿はあまりに一瞬のできごとだったので、写真がとれませんでしたが……、どうやらクロネコは夫婦の連れているブルドッグに追われているようでした。
ブルドッグも、その気になって、どんどんこちらにやってきます。そして、木に登ったままのあわれなクロネコを何度か見て、自分の威圧感に満足したのか、そのまま公園を去っていきました。それで、クロネコはというと、すぐに木から下りてきて、さっきは見向きもしなかった私の所へやってきました。
私の足もとでひっくりかえって、「ああ、いやな感じ。ムシャクシャするぅ」と言ったか言わないか、とにかく背中を地面にこすりつけたら、気分が直ったのか、そのままどこかへいってしまいました。
ああ、ほんの一瞬の出来事、公園でのクロネコのお話。それをじっと木の上から見ている鳥がいて、ネコはいなくなってしまってから、犬もネコもヒトも、励ますようにいい声で鳴いていたのでした。
でも、主人公はクロネコです。ほかの生き物は、キャラがイマイチで、やはり黒いネコって、物語が似合うんです。
あのクロネコさんはどこかにあるのでしょうか。どこかにあると信じたいけれど、見つけたら、なあんだこんなものだったのかと思うかもしれないので、見つからない方がいいかもしれません。私の心の中ではものすごく大きな、ものを言うクロネコだったので、今もひっそり、私の心の中には残っています。
だから、もしヌイグルミ好きのうちの子に見つかったら、それはもう大変です。すぐにさらわれてコレクションの1つにされてしまうかもしれない。だから、せいぜいどこかの箱の中で眠っていてもらわなくては!
クロネコって、不思議な魅力を持っているような気にさせる生き物です。本人は他のネコと同じように暮らしているつもりなのに、人間はそこに何か意味を勝手に見つけてしまうところがあります。だから、飼うにしても、何か構えてしまうところがあるのかもしれない。
それで、先日、日曜の朝、私が小さい頃によく遊んだ公園を散歩していました。何度も何度もグルグル回った遊具が四十年以上も変わらずにそこにありました。
当時は見向きもしなかった小さな鳥が歩いていて、もっと近づいて欲しかったけれど、すぐに早足で向こうに走っていってしまいました。
昔の公園は、子どもたちが走り回っていたものですが、休日の朝の公園は? もっと早ければたくさんのお年寄りの皆さんがいたと思われますが、何となくガラーンとしていました。犬の散歩をさせているご夫婦がいるだけだったでしょうか。
それほど紅葉もしておらず、人影まばら。あとで集めてある落ち葉を見つけますが、桜などはすでに散った後だったのかもしれません。この公園は桜がメインの公園なのでした。
そこへしずしずと進むクロネコを見つけました。付近に飼い主はおらず、公園のど真ん中を歩いています。何となく自由な感じです。ひょっとしてノラさんかもしれない。その割には少し太っている……。
爪研ぎはこちらの木でやることに決めているのです。とにかく、やるわよとやり始めました。でも、すぐに切り上げます。そして、周囲を見回しています。やはりノラさんのようです。
まんまるくなったり、集められた落ち葉の前でじっとしている。もうそんな季節なんだと、しみじみしているわけではないようです。
どうも、気になる何かを感じているらしい。
私は、あまり相手にしてもらえず、小さい頃からネコとは相性も良くないので、もうネコから離れることにしました。出口まであと50メートルというところまで来ました。
すると、さっきのご夫婦がやって来るようでした。それよりもさっきのクロネコはさっと私の方に近づいたかと思うと、すぐに木に登り、とにかく1メートルと少しくらいまでのところにふみとどまっています。……その姿はあまりに一瞬のできごとだったので、写真がとれませんでしたが……、どうやらクロネコは夫婦の連れているブルドッグに追われているようでした。
ブルドッグも、その気になって、どんどんこちらにやってきます。そして、木に登ったままのあわれなクロネコを何度か見て、自分の威圧感に満足したのか、そのまま公園を去っていきました。それで、クロネコはというと、すぐに木から下りてきて、さっきは見向きもしなかった私の所へやってきました。
私の足もとでひっくりかえって、「ああ、いやな感じ。ムシャクシャするぅ」と言ったか言わないか、とにかく背中を地面にこすりつけたら、気分が直ったのか、そのままどこかへいってしまいました。
ああ、ほんの一瞬の出来事、公園でのクロネコのお話。それをじっと木の上から見ている鳥がいて、ネコはいなくなってしまってから、犬もネコもヒトも、励ますようにいい声で鳴いていたのでした。
でも、主人公はクロネコです。ほかの生き物は、キャラがイマイチで、やはり黒いネコって、物語が似合うんです。