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廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

ハンク・ジョーンズ再考

2016年11月27日 | Jazz LP (Savoy)

Hank Jones / The Trio  ( 米 Savoy MG-12023 )


DU Jazz Tokyo の元旦恒例セールがいつものマイルスではなくハンク・ジョーンズで特集を組む、という。 なんで今頃?という気もしないではないが、
それでもこれは一つの見識だと思う。 常々書いてきたことだけど、日本でのこの人の評価はあまりに低過ぎる。 トミー・フラナガンの実態にはあまり
そぐわない過大評価もどうかとは思うが、それ以上にこの人への過小評価には大いに不満がある。 もしかしたら、山田太郎、みたいな名前のせいで
損をしているのかなあと思ったりもするけど、一番の理由はやはり50年代にピアノ・トリオ形式で3大レーベルにレコードを残さなかったことなんだろうと思う。 

3大レーベルが50年代にピアノトリオの傑作を連発していた頃、ハンク・ジョーンズはサヴォイやキャピトルと契約していたために、そちらではリーダー作が
出せず、せいぜいサイドメンとして参加するのが関の山だった。 当時はサヴォイやキャピトルのほうが契約条件は良かっただろうから、そういう意味では
ハンク・ジョーンズ自身は恵まれた状況にいたんだと思う。 ただ、サヴォイはピアノトリオの作品作りが下手だったし、キャピトルは大衆音楽を供給する
レーベルだから、ジャズという音楽に対して特別な思い入れはなかった。

困ったことに日本の愛好家の多くは3大レーベルを通して見ることでしかジャズという音楽を認識できないところがある。 だからこれらのレーベルを出発点
とした、もしくは通過したミュージシャンばかりが人気を得ることになる。 パウエル、、モンク、ソニー・クラーク、ガーランド、フラナガン、ケニー・ドリュー、
そしてビル・エヴァンス。 

やはり、ジャズ・ピアニストはピアノ・トリオのレコードこそが名刺代わりになるのだから、そういう意味では名盤100選を選出しようということになれば
ハンク・ジョーンズという名前は大抵漏れてしまうし、ここで選外になるとファンの視界からは消えてしまう。 そして、60年代の荒波の中で、ある者は
不摂生が原因で亡くなり、ある者は欧州へと逃れ、ある者は演奏から身を引き、50年代のビッグネームの数が大幅に減ってしまった頃になってようやく、
人々はそうだ、ハンク・ジョーンズがいるじゃないか、ということに気が付くことになる。 そして、70年代後半頃からこの人の作品が本格的に作られる
ようになるのだ。 でも、残念ながら時すでに遅し、の感は否めない。

そんな歯車の上手く嚙み合わなかった50年代に残された数少ないトリオ作品の1つがこのサヴォイのレコード。 ビ・バップの残り香を少し漂わせながらも、
非常に端正な演奏に終始している。 録音は当然RVGで、ピアノの音はソニー・クラークの音とよく似た感じになっている。 ただし、ピアノの弾き方が
まったく違うから、ソニ・クラを思い出すようなところはまったくない。 ハンク・ジョーンズらしい、破たんのない、ある意味完璧な演奏をしている。

ただ、この作品はコアな愛好家からは褒められることはあっても、名盤100選に選ばれることはない。 その原因は、たぶん、ドラムのケニー・クラーク。
そのあまりに中道保守的な演奏が音楽全体を上手くまとめ過ぎていて、覇気のようなものを削いでしまっている。 聴いていて、面白味に欠けるのだ。
モダン・ドラムの開祖と評価の高い人だけど、レコードで聴く限りではそのドラミングに感銘を受けたことはあまりない。 たぶん、フィリー・ジョーが
叩いていたら、このレコードは名盤の仲間入りしていただろう。 ハンクは競演者に感応するタイプだからだ。 でも、個人的にこのレコードにはどこか
惹かれるところがあって、好きな1枚としてレコード棚の中に残っている。 ハンクのトリオ作品という意味では得難いレコードだ。




Cannonball Adderley / Somethin' Else  ( 米 Blue Note BLP 1595 )


競演者に感応することでハンクが怪演を残したのが、このアルバム。 この作品が誰もが認める名盤になったのは、ここで聴かれる演奏の中に怪しく漂う
一種の不気味な雰囲気にある。 そして、その不気味な雰囲気を作っているのが、ハンク・ジョーンズの音数の少ないピアノなのだ。 どことなくセロニアス・
モンクを意識したかのような、重々しくたどたどしい、黒光りするピアノ。 サヴォイでの演奏とは、まるで別人のようだ。

マイルスのサウンド・ディレクションの下に演奏されているのは明白だけど、ハンク・ジョーンズのピアノ演奏はこのアルバムを境にして明らかに変化した。
ここで聴かれる「間」と共存するスタイルがこれ以降の彼のスタイルの基盤になる。 そういう意味でも、これはハンク・ジョーンズにとっても重要な作品
だったのではないだろうか。


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幻で終わった夢

2016年10月22日 | Jazz LP (Savoy)

Chuz Alfred, Ola Hason, Chuck Lee / Jazz Young Blood  ( 米 Savoy MG-12030 )


オハイオ州で生まれ育った3人の若者~テナーのチュズ・アルフレッド、トロンボーンのオーラ・ハンソン、ピアノのチャック・リー~が地元のクラブで演奏して
いるのをサヴォイのオーナーであるオジー・カデナが聴いてその場でスカウトし、レコーディングさせたのがこのレコードだ。 ベースはヴィニー・バーク、
ドラムはケニー・クラークを充てて、録音はヴァン・ゲルダーが担当しており、ヤングブラッドというユニット名まで冠してかなり本気で売り出そうとしたようだ。
でもこの後が続かず、結局シングル3枚とこのアルバムだけを出して表舞台からは消えてしまう。 そういう意味では、幻のユニットと言っていい。

さすがにレーベル創設者の鑑識眼は見事なもので、とてもいい演奏をしているのに驚かされる内容だ。 バリバリのテクニシャンという感じではなく、
非常に落ち着いてペーソスに富んだ演奏になっている。 テナーは若い頃のズートのような感じで初々しく、トロンボーンは穏やかによく伸びるトーンで、
黒人の若者たちの粗削りで熱っぽい演奏とは対照的な端正でよくこなれた演奏だ。 若者らしい新鮮な感覚が隅々まで行き渡っていて、よくよく考えると
こういう雰囲気をもった当時のレコードはあまり他には思いつかないのに気付く。 逆に現代の若い演奏家が出す新作のCDなんかのほうに雰囲気が近くて、
サヴォイというレーベルは現代の新進気鋭のレーベルが有能な若者を積極的に紹介しているのと同じことをやっていたんだなあということを教えられる。

それに何と言っても、RVGの録った音が素晴らしい。 サヴォイのRVGは粗い音質のものと素晴らしい美音のものがあるけど、これは後者のサウンドだ。
楽器の音がくっきりと生々しく、音の1つ1つが輝いている。 立体感のある空間表現も見事で、適度な残響感も素晴らしい。 演奏が魅力的に聴こえる
後押しをしているのがよくわかる。 1枚しか残せなかったとはいえ、こんなにいいレコードに仕上がったのは幸運だったんじゃないだろうか。



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無冠の傑作

2016年01月03日 | Jazz LP (Savoy)

Nat Adderley / That's Nat  ( Savoy MG - 12021 )


1955年7月26日にサヴォイに録音されたナット・アダレイのおそらくデビュー作品ですが、これが極上のハードバップで素晴らしい内容です。

ファンキーに身も心も捧げる前のある意味純粋な姿が捉えられており、清らかさすら感じます。 コルネットのオープンホーンの音がとても美しく、
ちょうど同時期のドナルド・バードのトランペットの音にとてもよく似ています。 ブラインドでこれを聴いたら、テナーとの2管ハードバップなので
ほとんどの人がドナルド・バードのアルバム?と答えるんじゃないでしょうか。

ナットのここでの相棒はジェローム・リチャードソンですが、この人のテナーの音にも圧倒されます。 技術的にはまだ未熟でたどたどしいけれど、
ロリンズの影響が濃厚な太い音が気持ちよく、そのサウンドだけで十分に音楽を上手く作れています。 ハンク・ジョーンズやケニー・クラークら当時の
サヴォイお抱えのサポート陣も抜群で、これ以上はない纏まりの良い演奏になっています。 特に何か目新しいことをやっているわけではないですが、
非常に完成度の高い純度100%の良質なハードバップがとにかくうれしい。

また、針を落としてまず最初に驚くのはRVGサウンドの音の良さ。 透明度の高いブルーノートサウンドといった趣きで、私はこちらの音のほうが好きです。
音圧が高く、管楽器の音が最高に輝いている。 "I Married An Angel" では演奏の素晴らしさとRVGサウンドの凄みが溶け合って、至高のバラード演奏に
仕上がっています。 知る人も少なくひっそり存在するアルバムですが、これは最良の出来の1枚だと思います。


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トランペット・ワンホーンの最高峰

2015年09月13日 | Jazz LP (Savoy)

Wilbur Harden / The King And I  ( Savoy MG 12134 )


若い頃、トランペットのワンホーンアルバムばかりを集中的に買い漁っていた時期があって、その時にレコードとして発売されたものの大半を聴きました。
サックスに比べて演奏すること自体が難しい楽器だし、吹けるようになっても更に一本調子にならずに歌うように吹けるのはごく一握りの人だけなので、
トランペットのワンホーンは意外に数が少ない。 そうやって峻別された結果としてアルバムが作られるので、出来上がった作品には傑作が多く、
そこに優劣はあまりありません。 どの作品にもそれぞれ聴きどころがあるので後は好みの問題になってきますが、私が一番好きなのがこのアルバムです。

ミュージカル "王様と私" のために書かれた曲をトミー・フラナガンのトリオをバックにワンホーンで吹くというもので、こういうのはトランぺッター
にとってはよほどの覚悟がないとできないだろうと思いますが、ウィルバー・ハーデンは奇跡的な名演を残すことができました。

このミュージカルはロジャース&ハマースタインⅡが音楽を担当していますが、これがどれも素晴らしい名曲だらけです。 よくもまあ、こんなに美しく
可憐なメロディーばかり書けるものだ、と感心しますが、そのメロディーラインを崩すことなくどこまでも素直に歌うように吹いていくハーデンの
トランペットが本当に美しい。 この人のオープンホーンの音はとても独特で、その少し霞みがかりながらも輝かしく、柔らかくて伸びやかなトーンは
絶品で、この音を聴いていられたら後はもう何もいらない、と思わせてくれます。

レコード史の中でこの人の姿が見られるのは1957年から60年までの3年間だけで、自身のリーダー作は1958年に集中して吹き込まれた4枚のみ。
その後プロとしての活動からは引退し、1969年に亡くなっています。 こんなにも素晴らしい作品を残してくれただけに、本当に残念です。

このアルバムはRVGがレコーディングエンジニアを務めていますが、私が知る限りではこれが彼のベストワークの1つだと思います。 ハーデンの美音を
最高に輝かしく録っていて、G.デュヴィヴィエのクッキリとして大きな音で鳴るベースラインやG.T.ホーガンの露に濡れたようなシンバルの生々しい音も
素晴らしく、ここでの音の深みや凄みはブルーノートを超えています。 音がいい、というような単純な話ではなく、音の意匠が音楽を彫刻していくような
凄まじさがあります。



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パッケージの大切さ

2015年02月22日 | Jazz LP (Savoy)

Kenny Burrell, Pepper Adams / Jazz Men Detroit  ( Savoy MG-12083 )


何とも言いようのないジャケットセンスのせいで、名盤としてはマニアはともかく一般的には認知されてこなかったし、これからもされることは
なさそうなレコードですが、1956年春の演奏として考えた場合にここまで洗練されたハードバップになっているのは驚異的なことです。
ポール・チェンバースは当然まだマイルスのバンドにいたし、トミー・フラナガンはサキソフォン・コロッサス録音の直前。 アメリカでは既に
ハードバップが完成していて、革新的な音楽家ではない普通の演奏家たちがこういうレコードを量産できるくらいに当たり前に演奏していた、
ある意味で幸せな時期の一コマを切り取ったかのようなとてもいい内容です。

ドラムがケニー・クラークだったおかげでリズムセクションが趣味の良さを保てたこと、やかましいトランペットがいないこと、ペッパー・アダムス
が控えめに全体を誘導するかのような演奏に終始していることなどが幸いして、非常に調和がとれて高い質感の演奏を聴くことができます。

サヴォイは保守的なレーベルで革新的なことは嫌ったし、ミュージシャンに無理強いもしなかったので、このアルバムのメンバー達のような
保守主流系の受け皿としては最適でした。 だから、時代を変えるようなアルバムは1枚もない代わりに、愛好家の心にじんわりと響くような
作品には事欠かないし、パーカーの遺産もあって一流レーベルの地位を維持できたのはよかった。 

これ以降、アメリカのジャズはシーン全体を大きく動かすような人たちとジャズそのものを下支えする保守系の人たちとに分かれていきますが、
後者の人たちが残したアルバムの原風景とも言えるような音楽をこのレコードから聴くことができるように思います。

ただ、ジャケットがなあ・・・・



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大好きな地味盤たち

2014年02月23日 | Jazz LP (Savoy)

The Curtis Fuller Sextett / ( Savoy MG-12144 )


The Jazztett結成前夜の時期の録音という興味深いアルバムです。 サド・ジョーンズ、マッコイ・タイナー、ジミー・ギャリソンという珍しい顔ぶれが
揃っています。 サド・ジョーンズはいつも通り端正なソロをとり、マッコイは抑制の効いた上手いピアノを弾き、ギャリソンは高速テンポの曲でも全く
ブレることのないテンポをキープする凄腕を見せますが、まあこの人たちにしてみれば当たり前のことなんでしょう。

A面は少し出来が悪い感じがします。 ゴルソン・ハーモニーが聴かれず、各人のソロだけにスポットが当てられたマイナー・ブルースばかりで、
ちょっと暗い感じです。 バラードもカーティス・フラーの悪いところが出てしまい、かなり退屈な出来です。 ところが、B面になると分厚い
ゴルソン・ハーモニーが魅力的な楽曲が並び、演奏の纏まりもよく、素晴らしいです。 特にベニー・ゴルソンはいつもの趣味の悪いくすんだ音色の
ウネウネフレーズを抑えていて、とてもいいソロをとります。

レコード番号的には以前取り上げた Bill Hardman のレコードに隣接するし、ジャケットの意匠も同じようなダリもどきの訳の分からない絵なので、
あのレコードを知っている人なら同様の素晴らしさを期待してしまいますが、こちらはちょっと地味かもしれません。 

DU的に言えば中級廃盤ということなんだろうし、演奏も地味なので特に褒められることがない盤なんでしょうが、それでも私は結構好きです。
ドラムがデイヴ・ベイリーなので、久し振りにこちらも聴いてみました。



The Dave Bailey Quintet / Two Feet In The Gutter ( Epic LA 16021 )


みんなが褒めるEpic3部作の一角を占める名盤ですが、この Two Feet は他の2枚と比べるとスタジオライヴ形式ではないせいもあって音の鮮度が低いし、
演奏にも勢いがなくて正直少し退屈です。 せっかく Comin' Home Baby や Shiny Stockings なんて名曲をやっているのにもったいないです。

一方、上記のSavoy盤はRVGなので鮮度の高いくっきりとした立体感があるサウンドが素晴らしいし、各人の腕が高くてやはり格が1枚上手。
でもEpic盤ほどのステイタスを持てないのは、やっぱりいただけないジャケットのせいなんでしょうね。 残念なレーベルです。

尤も、私もこのEpic3部作は大好きです。 3枚とも初版を持っているし、iPod用にCDもちゃんと揃えている。 
この3枚には演奏家やレーベルのネームバリューなどの外形的なものからは解き放たれ、音楽が独りで自由に泳いでいるのを感じます。
演奏がいいとか音がいいとかだけでは説明できない不思議な解放感と陶酔感があって、他のレコードに同様の事例を探すのは難しい。

地味盤同士、あくまでも聴き比べてみたらたまたまこういう違いがあった、というだけの話ですので、念のため。



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まだまだある隠れ名盤

2014年01月05日 | Jazz LP (Savoy)
三が日も開けてようやく家の中が静かになり、新宿に出かけなければいけない用事があって出かけました。
用事を済ませてDUジャズ館へ行ってみると前日のセールの売れ残りが結構あったので、これを買いました。


The Bill Hardman Quintet  ( Savoy MG 12170 )

新春お年玉バーゲン期間中とのことで「10%オフです」と言われましたが、定価のない言い値の商品を値引きしますって言われても本当に値引きになって
いるのかどうかなんてわかんないじゃん、それにバーゲン期間中に新規リスト掲載になってるんだから元々それを見越した値段だったんじゃないの?
と心の中でブツブツ言いながらも、結局は機嫌よく帰ってきました。 単純です。

これも昔は手が回らなくて聴けなかった1枚です。 昔はサヴォイと言えば、Surf RideだったりNostalgiaだったりBluesetteだったりしたわけで、
きちんとこのレーベルとは向き合うことができていませんでした。 ジャケットデザインもダサくて、購入意欲が湧きませんでした。

で、家に帰って来て聴きながら、こんないいレコードを見逃していたなんて本当に情けないなあと思いました。 高価なレコードやマニア本に載っている
ようなレコードばかりを欲しがって、いい音楽を欲しがってはいなかったんだ、とつくづく実感しました。

全編マイナー調の極めて良質なハードバップで、ちょっと Cool Stryttin' を思わせるムードに覆われており、どう聴いてもブルーノートサウンドです。
Sonny Redd、Jimmy Cobbなど、メンバーも一流で演奏レベルも最高ですが、ピアノの Ronnie Mathews がとても新鮮な感覚で弾いているので、
他の同時期のハードバップの演奏とは一線を画しています。 サヴォイは元々ブルーノートに匹敵する音の良さを誇るレコードだし、他のレーベルよりも
メロディアスなサウンドを重視していたレーベルです。 だから、ここに収められた6曲はどれもみな楽曲のメロディーが素晴らしい。 
これは、しばらくヘビーローテーションになりそうです。

コレクターは大抵は高額なレコードを買うための金策に追われて、こういうところには気が向かないもの。 でも、それではもったいない。
これは見かけられたら、ぜひ買われるといいと思います。




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2013年の最終収穫

2013年12月31日 | Jazz LP (Savoy)

Jazz ... It's Magic  ( Regent MG 6055 )


レコードを再び買い始めて1年半、最初の半年は様子見のため実際はほとんど買うことはありませんでしたが、今年に入ってからは
大体月2~3枚程度を買うようになりました。 若い頃に3大レーベルやノーマン・グランツ、有名なマイナーレーベルの主だったところは
大体聴きましたので、今更そういうのを大枚はたいて買おうという気にはなりません。 その中の幾つかはもう1度手元に置きたいと思うものも
あるので、そういうのはまたそのうちに買うことになると思いますが、当時聴き逃したものや手が回らなかったもののほうにやはり興味が湧きます。

上記はそういうものの1枚で、以前は手が回らず聴けなかったレコードです。 まあ、珍しくもなんともないレコードで、DUの各店舗で只今も
絶賛売れ残り中です(笑)。 どの店舗の在庫も16,000円~21,000円くらいの価格幅で、どれも「盤にキズあり」だそうです。
キズはまあいいとして、値段が私の感覚ではちょっと高過ぎます。 だからもっと安いのをと思っていましたが、今年最後の収穫で、96ドル。
ジャケットも盤もきれいで、こちらの粘り勝ちです。

Curtis Fuller、Sonny Redd、Tommy Flanaganらデトロイトの若者たちが演奏を楽しんでいる様子が手に取るようにわかる、いいレコードです。
ミドルテンポのブルース4曲とバラード・メドレーが1曲。 Sonny Redd のアルトの音がとてもきれいに録れていて、これが1番の印象。
Curtis Fuller の音もクッキリと録れていて、これなんかはブルーノートなんかよりも聴き応えがあります。

歴史を変えるような演奏でもなく、DUの廃盤セールにも掛からないようなレコードなんでしょうが、実際はこういう演奏やレコードたちが
アメリカのジャズ・シーンを支えていたんだと思います。 

Dave Bailey のEpic3部作を褒める人はたくさんいますが、こういうのを褒めてくれる人はいませんよね。 なぜだろう?
Five Spot After Dark のようなキラー・チューンがないからかもしれませんが、あのレコードと比べても全く遜色ない出来なのに。

高価で稀少な廃盤ばかり聴いていると、疲れる時があります。 だから、こういうプリティなレコードはどうしても必要です。
いつか正当な評価を受ける日が来るでしょうか。



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物静かな Hank Mobley という人

2013年12月22日 | Jazz LP (Savoy)
50年代、Hank Mobley は相当な人気者だったようです。 正直、聴いていてそんなに感動するわけではありません。
音はボソボソと野暮ったいし、フレーズもたどたどしく、いい印象に残るものがある訳でもない。 
聴き手は○○派などと勝手に分類するのが好きですが、この人はそういうカテゴライズにもうまく収まらない人です。 
誰か似ている人がいるか、というとなぜか誰も思い浮かばない。

本人の人柄も、非常に静かでおとなしく、1人でいることを好む人だったそうです。 ステージが1つ終わると、黙ってライブハウスの
外へと出て行き、通りに停めてある自分の車の中で煙草を吸いながら次のステージの時間が来るまで1人で待っているような人でした。

ミュージシャンとして1人で喰っていくには自分をどんどんアピールして自分のことを知ってもらわなければいけないでしょう。 
アメリカのレコードで、それはジャズに限らずロック、カントリー、ブルース、ポップスなど全般ですが、ジャケットに本人の顔写真が
大きく写っているものが圧倒的に多いのは、広大なこの国ではとにかく自分の顔をまずは憶えて貰わなければいけないからです。 
そのため、審美的に見ればげんなりするジャケットデザインが多くて、これじゃ逆に売り上げが落ちちゃうよと思ったりしますが、
まあラジオが第一のチャネルだったこの国の事情を考えればこれは仕方なかったんだろうと思います。

そんな状況の中で、物静かなこの人が多くの週末のセッションやレコーディングに呼ばれたのは不思議なことです。
当時は一流のサックス奏者が物凄くたくさんいたわけで、そんな中でなぜおとなしいこの人だったのか、ということになるわけです。
いくら繋ぎのつもりだったとはいえ、Miles Davis でさえこの人をグループのメンバーに入れたのですから。


ブルーノートやプレスティッジにたくさんのリーダー作があって、今はそのどれもが非常に高価な値段になっているわけですが、
私がこの人の演奏で1番素晴らしいと思うのは、これです。


( The Jazz Message Of.... Savoy MG 12064 )

これは別に Hank Mobley がリーダーのレコードというわけではなく、Savoyが行ったいくつかの同系統のセッションを集めて1枚のアルバムに
したレコードで、Hank Mobley のセッションはA面の4曲だけなので、実際のリーダーは Donaln Byrd だろうと揶揄されたりして、ここでも
不遇な扱いをされたりしています。


この人は実は演奏の出来に結構波がある人で、レコードを注意深く聴くとそれがよくわかります。 ブルーノートの諸作もおおざっぱに言うと、
半分くらいは調子が悪い感じなんです。 


( Hank Mobley Sextet Blue Note 1560 )

例えば、ここでの Mobley はとにかく調子が悪いです。 Mobleyだけ見れば普通ならボツアルバムになってもおかしくないような出来ですが、
幸い他のメンバーはいつも通りの闊達な演奏なので、なんとか発売されたのでしょうね。 私の勝手な想像ですが、当初は他のレコードと
同様にクインテットで録音する予定だったのに、あまりに Mobley の調子が悪いので急遽 John Jenkins が呼ばれたんじゃないでしょうか。


一方、最初のSavoyセッションは Mobley はどの曲も流れるようで心に残るフレーズを全編通して吹いていて、素晴らしい出来です。
特に、Madeline というバラードの深い音色と演奏にはグッと心を鷲掴みされます。 Yusef Lateef や Ben Webster のバラードを
聴いた時のような感動があります。



( Jazz Message #2 Savoy MG 12092)

こちらは続編という扱いになっている第2集で、Lee Morgan が参加しています。 収録された4曲はどれも似たような曲調とテンポで
区別がつきにくく、全体で大きな1つのセッションという感じです。 Lee Morgan は上り坂の若者らしいブリリアントな音と演奏で
一番目立つわけですが、それとは好対照に Mobley は渋く落ち着いた演奏に終始していて、これがうまく全体を1つにまとめています。

これを聴いて、なぜ Hank Mobley が当時引っ張りだこだったのか、理由がよくわかるような気がします。
これこそが、Hank Mobley 最大の強みだったんですね。 こういうサックス奏者、他にはいませんから。



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