Dave Bailey Sextet / Bash ! ( 米 Jazz Line JAZ-33-01 )
フランク・ヘインズの場合はリーダー作がほとんどないどころではなく、1枚もない。 "Frankly Speaking" というタイトルのリーダー作を録音したが、
発売されなかった。 理由はよくわからない。 テープを探し出してディスクユニオンあたりから発売してくれないだろうか。
そうすればちょっとした事件になる。 どうでもいいアート・ペッパーの再発なんかやってる場合じゃないだろうと思うんだけれど。
共演で参加したアルバムがさほど多くないにもかかわらずマニアの間でその名前がよく知られているのは、デイヴ・ベイリーの稀少盤に参加している
からだ。 稀少な高額盤にメンバーとして入っているからそれに引きずられて演奏もなんだか良く聴こえるというパターンで、過大に評価されがちな
ところがあるのがちょっとどうかとは思うが、例えばこのアルバムの場合だとドーハムやフラーがショボショボのプレイをしているせいで骨太で
しっかりしたテナーの音色が1番立派に聴こえる。 ロリンズの曲をやっていることもあり、無意識のうちにロリンズの影がちらついたりもする。
プレイは非常に安定していて、音色もテナーという楽器の良さがよく出ている鳴り方だ。 吹き方にも勢いがあるし、フレーズもなめらか。
リーダー作があってしかるべきだと思うけれど、一番いい時期に録音までされたのにリリースがなかったというのは本当にツイてない。
1965年に37歳の若さで亡くなったというのだから、思い残すことがたくさんあっただろうと思うと本当に気の毒になる。
この "Bash!" というアルバムは傑作が連なるデイヴ・ベイリーのアルバム群の中では内容的には出来が落ちる方だと思う。 でも、日本ではこの
アルバムは一定の人気があって、その中で奮闘しているヘインズのことに目を向けて好きになる人が多いのはとてもいいことだと思う。
リーダー作がなくても、見ている人はちゃんと見ているということだ。
それはそうと、デイヴ・ベイリー名義のアルバムを聴いていると無駄なソロパートを作って叩きまくったりしない奥ゆかしさに心底感心してしまう。
例のお方にその爪の垢を煎じて飲ませてやりたいと思うのはきっと私だけではないだろう。
このアルバムジャケットの裏面にヘインズの貴重な顔写真が載っている。