Gene Quill, Charlie Rouse / Jazzville '56 ( Vol.1 ) ( 米 Dawn DLP 1101 )
Dawnレーベルには他レーベルでは聴けないようなタイプの音楽が何気に残っていて、マイナーレーベルとしての存在感が際立っている。 "ジャズの街" と
題された4枚のアルバムも地味ながらも地に足が着いた演奏が刻まれていて、じわじわと良いレコードだなという想いが湧いてくる。
この第一作にはチャーリー・ラウズとジュリアス・ワトキンスのグループとジーン・クイルのクインテットの演奏が半分ずつ収録されている。両方いい演奏だが、
特にジーン・クイルの演奏が抜群に良くて、他にはあまり録音が残っていないだけに、貴重な1枚だと思う。相方のディック・シャーマンはビッグ・バンドでの
活動が主だったのでリーダー作が残っておらず、一般には知られていないトランペッターだが、奥ゆかしい演奏スタイルでクイルとは適切なバランスを取る。
クイルがワンホーンで切々と歌う "Lover Man" は心に刺さる演奏で、忘れ難い。フィル・ウッズとよく似た音色で、これぞアルト・サックス、というフルトーンが
素晴らしい。リーダー作がほとんど残っていないのが本当に悔やまれる。この録音もLP片面分しか残っておらず、これだけしっかりとした演奏をしているのに、
フル・アルバムが残っていないのが不思議だ。アメリカのレコード制作は結構業界の隅々まで目が行き届いていて、無名のミュージシャンのレコードが山ほど
残っているんだけれど、なぜかこの人は網に引っかからずに漏れてしまっている。
このレコードはフラットエッジで両面とも手書きのRVG刻印があり、カゼヒキもなく、音が凄くいい。特にラウズやクイルのサックスの音が素晴らしく、
いかにもヴァン・ゲルダーらしいサウンドだ。適度な残響の中、楽器の音が輝かしく鳴り、Dawnのレコードのイメージを覆す。にもかかわらず、こういう
コンピレーション系のアルバムは人気が無く、安レコとして転がっているもんだから、ありがたく思いながら拾うことになる。