Barbara Carroll / "Live" Her piano And Trio ( 米 Warner Bros. W 1710 )
ピアニストとしてのスジの良さでは、このバーバラ・キャロルの右に出る人はなかなかいない。彼女のアルバムを聴くたびにそのピアニズムに
深い感銘を受けるが、このライヴを聴けば、その感想が間違っていないことがよくわかる。
乱れることのない運指、常に一定の音量、完璧なリズム感、そのどれをとっても超一流のピアノで、国際ピアノ・コンクールなんかで聴く
ピアノ演奏と同等の質感があって、それがこういうくだけたジャズ・ライヴの中で鳴っていることの驚異。果たしてどれだけの人がそのことに
気が付いていただろうか。
1967年のリリースで、選ばれた楽曲はお決まりのスタンダードではなく、当時の映画音楽など時代を反映したもので、そういう意味でも
新鮮味がある。凄腕の無名のベーシストとドラマーとの一体感も見事で音楽が心地よく揺れているが、それでもやはり耳につくのは彼女の
ピアノの上手さで、それがこれ見よがしにひけらかされたものではなく、さり気なく控えめながらも黙々と披露されているから痺れてしまう。
彼女のそういう美質は一般には理解されにくいところだから一向に世評は上がらないが、まあそれはいい、こうして自分だけの名盤として
聴いていけばいいのである。
ワーナー・ブラザーズの録音だから音も良く、ジャケットはレギュラー品のステレオだが、中に入っているのはプロモのモノラル番号のプレス。
この時期のモノラル盤は音が悪いのが普通だが、さすがは大手レーベルで品質がいい。