先週久し振りに中古を漁っていいのに出会ったので気を良くしてまた今週も新着を見てみましたが、成果は2枚だけ。 数はたくさん出ていましたが、
内容的にはピンとくるものがほとんどありませんでした。 やっぱり年末セールの影響なんだろうなあ、と思います。 そのセールも今日あたりから
始まるようですが、興味のない私にとってはありがた迷惑なハロウィンみたいなもの。 早く終わって欲しいもんです。
なので、新品も少し買って溜飲をさげました。 こちらはなかなかの内容でした。
■ Frank Strozier / Cool, Calm And Collected ( Vee Jay / Koch Jazz KOC-CD-8552 )
今、これを書いてて初めて気が付いたんですが、これは懐かしのVee Jayレーベルで1960年10月に録音されたものだったんですね。
聴いていた時はそんな古い録音だったなんてわかりませんでした。 それくらいきれいな音で、まるで最近録音されたかのようです。
そう言えばどの曲も短くて、言われれば納得できます。 でも、これは当時レコードが出ていたんでしょうか? あまり記憶にありません。
もしかしたら、未発表曲集なのかもしれません。 ベースがクッキリとクリアで、ブンブンと鳴って気持ちいいったらないです。
アルトのワンホーンですが、とにかくソニー・クリスそっくりです。 音の出し方やフレーズの閉じ方なんかは特に似ていて、ブラインドで聴いたら
殆どの人がソニー・クリス?と答えるんじゃないかと思います。 でも、あんなにバタ臭くはなく、もっと清潔な感じで好印象です。
音楽も無拓で罪のない感じです。 ちょうど、 "At The Cossroad" のような夜の雰囲気が濃厚です。
アルトのワンホーンとしては特上クラスの出来で、既に評価の固まった他の音盤群の中に入れてもいいと思います。
音の良さも含めて、傑作だと思います。 レコードしか評価しないという人も、これを聴けば認識が変わるんじゃないでしょうか。
あの頃の懐かしい雰囲気のジャズがこんなにクリアに聴けるなんて、素晴らしいことです。 全ての音盤がこうなればいいんですけどね。
■ Steve Grossman / Hold The Line ( DIW 912 )
再プレスされて、店頭に並んでいました。 これも中古ではまったく流通しない盤なので、当然買い求めました。
1曲目が "Ray's Idea" で始まるなんて、嬉しいじゃないですか。 それだけでニコニコしてしまいます。
先日このブログに載せた "Standards" は全編ロリンズそっくりな演奏でしたが、こちらは全編ショーターそっくりな演奏です。
わざとそうしているのかただの偶然なのかよくわかりませんが、とにかくそう感じます。 でも、もちろん物真似なんかではなくて、
ちゃんとワン&オンリーな世界です。
この人にはメジャーキーのスタンダードはあまり似合いませんが、それでもどんな素材であっても全編豊かなアドリブを展開していく様は
素晴らしく、これこそがジャズの姿だ、と聴き手をねじ伏せてしまうようなところがあります。 コルトレーンもそうだったけど、
ただ、彼が展開した音楽はあまりにも個人的過ぎて、結果的に聴き手を選ぶようなことになってしまったのはとても残念なことです。
その点、グロスマンは広く汎用的にアピールできる音楽をしているので、ちゃんと聴き手も正面から受け止めることができます。
これも本当に素晴らしい演奏です。
■ Eddie Jefferson / Body and Soul ( Prestige OJCCD-396-2 )
ジャズの世界にヴォーカリーズを持ち込んだ人として名高いですが、そのダミ声のせいか、それ以上のいいね!が貰えない気の毒な人。
でも、味のある音楽になっていて、私は好きです。
このアルバムで面白いのは、"So What" 。 そのバックの演奏がかなりいい出来です。 バックを務めるのは、ジェームス・ムーディー、
デイヴ・バーンス、バリー・ハリスら一流どころですが、この演奏がマイルスのあのオリジナルの雰囲気をすごく上手く再現していて、
エディーには申し訳ないけどそちらに耳を奪われてしまいます。 これは隠れた名演です。
あまり多くは録音されなかったのが残念ですが、ここにも明らかにジャズのスピリットが宿っているのを見ることができます。
■ Peter Brotzmann / Lost & Found ( FMP CD 134 )
ブロッツマン渾身の2006年のソロ・ライヴ・パフォーマンス。
音に全身全霊を込めて吹いていくのが手に取るようにわかる演奏で圧倒されます。 ただ、やはり衰えを感じないわけにはいきません。
まあ、65歳の時の演奏ですから仕方はありません。 と言っても、上記のグロスマンなんかでもその足元にも及ばない演奏なわけで、
老いてもなお怪物はやっぱり怪物です。
成熟さや昇華感が漂うところがあって、もうフリージャズというようなありふれたレベルの音楽ではなくなっています。
途中で迷うこともなく、スタイルを変えることもなく、信じる音楽をやってきた人はやはり違います。
その内容がどういう種類であれ、ブレずに貫くというのはこういうことなんだな、と思います。
この人を聴いていると、もしかしてフリージャズというのは正しい音楽だったのかもしれない、と思うことがあります。