

Bill Evans / At Shelly's Manne-Hole, Hollywood, California ( 米 Riverside RM 487 )
2017年の最後は、お気に入りのアルバムを聴いて締め括りたい。
親密な空間の中から、静かにエヴァンス・トリオの音楽が聴こえてくる。 ニューヨークのクラブと比べると、ここの観客はずっと静かに、そしてより熱心に
音楽に耳を傾けている。 拍手の大きさからもそれが伺える。 ニューヨークの観客の拍手は疎らで投げやりで、どこか寒々しかった。
冒頭の "Isn't It Romantic" から "The Boy Next Door" へと流れていく、この2曲が何よりも好きだ。 メロディ-の歌わせ方がとてもいい。
エヴァンスのピアノは以前よりも穏やかな表情へと変化している。 風のない日の湖面が陽光を反射させながら静かに佇んでいるように。
チャック・イスラエルのベースは正確なリズムをキープしながらもシックな深い音で、そしてラリー・バンカーのブラシは軽やかでタメの効いた間合いで
エヴァンスに寄り添っている。 3人の一体感は、先代のトリオとはまた違う別の種類の極みへ向かって進んでいる。
イスラエルのベース・ラインが大人しいので、トリオの音楽がより内向的で暗く沈んでいると言われがちだけれど、そんなことはないとは無いと思う。
特にエヴァンスのピアノは音に芯があって、おだやかで明るい表情だ。 レコードで聴くと音の分離もよく、彼の調子の良さがよく伝わって来る。
とても好きなレコードで、個人的にエヴァンスのリヴァーサイド盤では1、2位を争う。


Bill Evans / Time Remembered ( 日 ビクター音楽産業 VIJ-4035 )
エヴァンスのこの時のシェリーズ・マンホールへの出演は2週間で、最初の週はイスラエルとのデュオ、後の週がバンカーを加えたトリオだった。
それらの中から、当時未発表に終わった演奏をエヴァンスの死後に掘り起こしたものがここにまとめられている。 演奏は同様に素晴らしく、何の遜色もない。
特筆すべきは、このビクター盤の音質。 何と優雅で上質な音なんだろう。 上記の第1集とはまた傾向の違う素晴らしい音質で、エヴァンス・トリオの
演奏に花を添えている。 おそらくはマスターテープの状態が良かったのだろう、そしてそれを上手くここにトランスファーしている。 ビクターは頑張った。
一聴をお薦めしたい。