廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

頂上を目指して真っすぐに進むアルバム

2014年12月29日 | Jazz LP (Europe)

Tete Montoliu Trio / A Tot Jazz 2  ( Concentric 5703 SZL )


このころのテテ・モントリューはまだコードをたくさん鳴らしてメロディーを構成するスタイルで、単音でフレーズを紡ぐ時はどこを切っても
バド・パウエルのフレーズそっくりの、まだまだ発展途上のピアニストでした。 特にこのレコードを聴くと、この人はバド・パウエルの演奏をお手本に
練習していたんだなあ、ということがよくわかります。

ところが、そのパウエル・ラインに被さってくるのが当時世界を席巻していたコルトレーン・カルテットのサウンドの影響をモロに受けたベースとドラムで、
その中でもビリー・ブルックスのドラムはエルヴィン・ジョーンズのドタバタ太鼓のまんまコピーなので、ジャズに精通したリスナーはバド・パウエル~
ジミー・ギャリソン~エルヴィン・ジョーンズという、決してあり得ないはずのピアノ・トリオを聴いている感覚に面喰ってしまうことになります。

ピアノの上手さはこの時点で既に完成していて、最後に収められた "ソルト・ピーナッツ" の長いアドリブを一息で弾き切ってしまう様子は圧巻です。
まるで雪解けで水量の増した渓流の早い流れを見ているようで、ピアノの音が発する情報量のおびただしさにこちらが押し倒されてしまう感があり、
そういう意味においてはジャズピアノというよりはクラシックピアノに近いものがあります。

楽曲が本来持っているモチーフをドラマチックに表象させるのがとにかく上手い人で、"チム・チム・チェリー" の8小節の主題からブリッジに移る時の
ジェットコースターのような急降下ラインは、場面転換時に流れる舞台歌劇曲のようだし、"シークレット・ラヴ"ではモードジャズっぽい独特の
アレンジで最後まで幻想的に進みながらも、なぜか懐かしいビング・クロスビーの歌が聴こえてくるような美旋律の陶酔感があります。

これを聴いていると、この録音の3~4年後にやってくるこの人の音楽的頂点に向かって真っすぐに伸びた道が見えてくるような気がしますが、
上記のような音楽的にかなり凝った仕掛けがあちこちに施されているなかなか高度なアルバムです。



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2014年を振り返ると

2014年12月27日 | Jazz CD
2014年、これほどCDをたくさん買って聴いた年は今までありませんでした。 

実際に色々聴いていくと、ただ単に表舞台に出ていないというだけで内容の素晴らしい音楽がこんなに眠っているのか、と驚愕することの連続で、
それを知ってしまうと深掘りしないわけにはいかなくなった、ということかもしれません。

CDは売り買いが楽なので回転率が高く、結構たくさん買った割には1年前と架蔵枚数の総量はさほど変わっていないので、それだけ手放したものも
多かったということですが、そういう流動的な中でも魅力が褪せることなく、手元に残った盤がいくつかあります。 最初に聴いた時には
これはいいと思っても、時間が経てばそうは思わなくなるものもたくさんありますが、そういう時間の洗礼という試練に耐えた音盤は自分にとっては
真の名盤ということになるんでしょう。






新品も結構買ったと思います。 昔はありえなかった「店頭試聴」というやり方のおかげだと思います。 元々はヴァージンレコードやHMVなどの
メガストアが日本に持ち込んだものですが、これがなければここまで新品には手が出なかったと思います。 メガストアが試聴可能にしていた
のは発売元が大々的な宣伝費をかけて売ろうとするメジャー盤ばかりでしたが、DUさんは店員さんがこれはいいと思うお勧め盤を試聴機に載せる
というのがユニークで、このおかげでどれだけの名演を聞き逃さずに済んだかと思うと、感謝の一言しかありません。

ここに載せた盤のほとんどが店頭で聴いてノックアウトされたもの。 未だにその感動は衰えません。 また、エンヤとブルーノートのリマスター再発
シリーズは、リマスター技術へのそれまでの偏見(元々あまり信用していなかった)を払拭してくれただけではなく、「アナログのオリジナル信仰」を
見直すきっかけになりました。 今後、この動向が進んでいくことは間違いない気がします。







中古漁りを定期的にするようになったのも今年から。 次から次へ知らない名前や音盤が出てきて、何でもわかってると思うのは大間違いだよな、
ということを教えられた1年でした。 こうやって無意識に並べてみるとサックスものばかりで、ピアノやボーカルが1枚もないというのは
どういうことだ?と自分の料簡の狭さに呆れてしまいます。 来年はもっと視野を拡げていきたいです。 




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The Christmas Waltz

2014年12月23日 | Jazz LP (Vocal)

Frank Sinatra / A Jolly Christmas  ( Capitol W-894 )


12月になってこのレコードをよくかけるようになると、「もうすぐクリスマスね」と相方が毎年嬉しそうに言います。
「何がそんなに嬉しいんだ?」と訊くと、「だって、嬉しいでしょ?」と答える。

宗教観に関係なく、クリスマスには人を暖かい気持ちにさせるところがあります。 
人々の心の中の、ある共通したところから生まれてきたものだからなのかもしれません。 

他の音楽ジャンルと比べてジャズにクリスマス・アルバムが多いというのは、この音楽のある側面を象徴しているような気がします。
そして、私たちがジャズが好きな理由も、そういうところに無意識のうちに惹かれているからなのかもしれません。

シナトラはコロンビアにもクリスマス・アルバムを残していますが、まだ若い頃の歌唱で声の線も細く、物足りないところがあります。
それに比べてこちらのアルバムは声に深みがあり、ゴードン・ジェンキンズの繊細で感動的な伴奏も素晴らしく、私にとっては最高のアルバムです。
昔はクリスマス・アルバムを見かけるたびにあれこれと買い漁っていましたが、今はもうこれだけあれば十分です。

このアルバムにはジュール・スタイン&サミー・カーンが書いた "The Christmas Waltz" という素晴らしい曲が収録されており、これが私の一番の
お気に入りです。 アメリカのジャズのクリスマス・アルバムには、数多くの定番の曲たちの中に必ずこういう地味だけど素晴らしい曲を1つ、
こっそりと忍ばせるのが "暗黙のお約束" になっていて、それを聴くのも大きな愉しみの1つです。 そこに、アルバム制作者のセンスが問われます。
みんなそういうところで、実はひそかに競争していたんですね。




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Ernestine Anderson の素晴らしさ

2014年12月21日 | Jazz LP (Vocal)

Ernestine Anderson / It's Time For Ernestine  ( Metronome Records MLP 15015 )


私がサラ・ヴォーンの次に好きな女性シンガーが、このアーネスティン・アンダーソンです。

この人を好きになったきっかけはジジ・グライスのシグナル盤に収録された "(You'll Always Be) The One I Love" を聴いたことでした。
変なクセのない真っすぐで伸びやかな歌声が忘れられず、当時はこのレコードをかける時はこの曲は入ったA面ばかりを聴いたものです。
私は、例えば、"We Are The World" の映像を観ても、一番感動するのはダイアナ・ロスの歌のパートだったりするので、こういう黒人女性シンガーの
ストレートな歌い方に根本的に弱いのかもしれません。

ジジ・グライスのセッションへの参加後の1956年、彼女はロルフ・エリクソンのスェーデン・ツアーに誘われて渡欧し、全くの無名だったにも関わらず、
3か月の滞在中にクラブで歌ったりラジオでその歌声が流れるようになると現地では暖かい好意をもって受け入れられ、ストックホルムに来ていた
デューク・ジョーダンのトリオや地元のハリー・アーノルド楽団たちと初めての本格的なレコーディングを行います。 

これらの録音は、まず1956年にメトロノーム社から数曲がEP盤として数枚リリースされ、そのすぐ後に米マーキュリー社から "Hot Cargo"という
タイトルでLPが発売されます。 すると、これがアメリカでスマッシュ・ヒットとなり、彼女の名前は広く知られるようになりました。
そこでメトロノーム社もようやく重い腰を上げてこの録音を1958年にLPとしてリリースすることになり、それが写真のアルバムになるわけです。
スェーデン録音だからこのメトロノーム盤がオリジナルなんだろうと思っていたのですが、このジャケットの裏の解説を読むと上記のような経緯が
書かれており、なんだ、マーキューリー盤のほうが初出だったのか、とがっかりしたのでした。

まあ、それはいいとして、このアルバムで聴かれる彼女の歌声は素晴らしい。 帯域は芯のしっかりとしたアルトですが、原曲のメロディーを
変にいじらずに大事にした歌い方で、歌がしっかりと自分の中に入ってきます。 そしてなにより伸びやかな歌声に聴き惚れてしまいます。
ハリー・アーノルド楽団も立場をよくわきまえた、歌を邪魔しない控えめな伴奏をしており、これも大変好ましいです。 

珍しいコール・ポーターの "Experiment" が収録されていますが、これが感動的な名唱となっていて絶品です。 
私にとってこれは女性ヴォーカルの3指に入る大事なアルバムとなっています。




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最近の成果

2014年12月20日 | Jazz CD
仕事が色々立て込んでいて中古CD漁りにはあまり行けませんでしたが、それでも時間のやり繰りをしてDUには顔を出したりします。
好きなことなら、こういうのは何の苦もなくできるものです。





■ George Robert - Tom Harrell Quintet / Lonely Eyes  ( GPR Records GPR 1002 )

新品輸入盤を2枚以上購入で10%Offというのをやっていたので、どれどれ、と1Fをウロウロしている時に見覚えのあるジャケットだったので購入。
裏ジャケットがステージ上での写真だったのでライヴなのかと思ったら、ローザンヌのスタジオ録音でした。

評価著しいジョルジュ・ロベールをちゃんと聴いたのはこれが初めてでしたが、なるほど、みんなが褒めるわけがよくわかりました。
ジャズファンが一番求めるタイプのアルトです。 マクリーンやウッズ直系の超正統派です。 凄いビッグトーンです。

2人のオリジナル曲で占められた選曲ですが、これがどれもセンスのいい楽曲で、これにも驚かされます。 演奏も明快でストレートな現代の
ハードバップで、適度な抑制も効いており、感心させられます。 いい演奏は探せばいくらでも見つかるもんですね。


■ George Robert Quartet feat. Clark Terry / Live at Q-4  ( TCB Records 90802 )

ということで、さらにジョルジョ・ロベールのいいのがないかと物色すると、これが見つかりました。
クラーク・テリーを迎えた2管クインテットのライヴ録音です。 

クラーク・テリーという人は自身のスタイルであるスイング系以外のタイプの音楽にも柔軟に対応できる賢い人で、こういうハードバップの演奏に
招かれるとスイングスタイルのメーター値を少し下げてモダン寄りの演奏を見せてくれます。 この微妙なさじ加減すごくいい。
グループとしての纏まりもよく、最高のハードバップが聴けます。 これも素晴らしい。

そして何より、このCDの音圧のレベルの高さが凄くて圧倒されます。 頭がクラクラします。 





■ Chris McCann / On Ths Night  ( Unity UTY-146 )

カナダのドラマーがリーダーでテナーとアルトの2管フロントのピアノレスカルテットで、ライヴ録音です。
新宿ジャズ館でちょうど廃盤セールをやっていて、その中から拾い上げました。 といっても、2,000円くらいでしたが。

ピアノレスというところがミソで、全編硬派で気骨のあるハードバップを展開してくれる嬉しい内容です。 こういうライヴを小さな小屋で
聴きたいなあ、と心底思います。 Tempus Fugit がカッコいい演奏でシビれます。 ビ・バップ時代に書かれた曲ではこれが一番好きです。

愛すべきマイナー盤。 こういうのに出会った時が一番楽しいです。


■ Paquito D'Rivera  ( Love Records CUCD 6 )

キューバのアルト/クラリネット奏者による1976年録音で、ワンホーンで哀感たっぷりに演奏する隠れた名盤です。
ベースは何とペデルセンが弾いています。 たぶん、きっとこういうジャズの録音は珍しいんじゃないかと思います。

もう1曲目の出だしからまるでブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブのような哀愁が漂います。 現在も続く長いアメリカとキューバの難しい関係を
あざ笑うかのように、ジャズとキューバ音楽の邂逅は当たり前のようにこうして起こっていたんですね。

"I Want To Talk About You" も原曲のムードたっぷりに歌い上げており、キューバの音楽家の音楽性の高さを裏付けています。
彼は1981年にアメリカに亡命しますが、これはその5年前の録音です。 彼にとってはジャズは自由の象徴だったことでしょう。
演奏の中に何かそういう憧憬のようなものが感じられるのです。

音楽家としては世界的には有名な人ですが、ジャズの音盤としてあまり知られていないものだと思います。 
でも、これは知られないままにしておくにはあまりに惜しい音盤です。




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どこまで優しい気持ちになれるかが試される音盤

2014年12月14日 | Jazz LP (Blue Note)

Hank Mobley / and his All Stars  ( Blue Note 1544 )


これは良くも悪くも、ハンク・モブレーという人のテナーがとてもよくわかるアルバムです。

この人には珍しいワンホーンですが、どうもその有難みがあまり感じられないのはひとえにミルト・ジャクソンのvibのせい。 この頃のミルトは
マレットを叩きつけるように演奏しているものが多く、特にこの盤ではそれが顕著です。 ドラムがブレイキーなので、その音に負けないように
そうしていたのかもしれませんが、これがモブレーのテナーよりも前に出てしまうことになって主役を喰ってしまっています。

周りがそういう状況にも関わらず、モブレーはと言えばこれが終始マイペースを貫きます。 テナーの音色は本当にマイルドで、まるで唄うように
とても丁寧に吹いているのがよくわかりますが、どうもモブレーのそういうところを誰も活かそうとする素振りがありません。
唯一、ホレス・シルヴァーだけがテナーに呼応するようなソロやバッキングをしてくれていて、この人だけがモブレーのことを見ているような感じです。

収録された曲はすべてモブレーの書下ろしのオリジナルで、彼としては全力投球しているし、ジャケットもそういうところを上手く捉えていますが、
どうも聴いた印象がそう感じられないところがこの人らしいというか、何と言うか・・・・

捉えどころのない内容でこれを名盤というと嘘になるんですが、とにかく彼のおだやかで優しい人柄が滲み出ているので、そういうところを聴き手として
どこまで汲み取ってあげられるかで評価が大きく分かれる音盤です。 聴き手が音楽の中に自分から分け入って、そこで行われていることをどこまで
見ることができるかにかかっています。 どういうわけか、このハンク・モブレーという人には私にそういう気持ちにさせるところがあって、
いつもの「ヘタだ」の一言で切って捨てるようなことをさせてくれません。 自分ではハンク・モブレーが好きだという自覚はまったくないのですが、
この人のレコードを聴いていると、なぜかそういう気持ちにさせられてしまいます。



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サン・ラーの謎を解く鍵

2014年12月13日 | Jazz Book
数日前のYahooニュースに、衆議院選挙の広島の立候補者の演説応援にデーモン閣下の真似をした男が現れて、当の閣下ご本人がご立腹だった、という
記事が出ていました。 ニヤニヤして読みながらも、あなたはご自分のことを地獄の都 Bitter Valley 出身の悪魔教教祖だと公言しているけど、
でも、そういうのって結局は Sun Ra (サン・ラー)が60年前にやってたことの真似なんじゃないの? と思ったのは、きっと私だけではないはずです。

ジャズの深みにハマればハマるほど、サン・ラーの名前が目についてくるようになるものです。 でも、一体どこから手をつけたらいいのかさっぱり
わからないし、そもそもこの人って一体何? という感じで、敬遠されていることが多いというのが実態ではないでしょうか。
私もこれまで3作ほど聴いてきてよかったのはそのうちの1作だけという状態のまま、うーん、どうするかな・・・、と長らく手をこまねいていました。
そんな時、この本が出版されたのでした。


てなもんや SUN RA 伝 / 湯浅 学

"森羅万象にサン・ラーは宿る”として、「未来という文字を見るとサン・ラーを思い出すことがある」「木の根が外気にむき出しになっているのを
見るとサン・ラーを思い出すことがある」というフレーズで必ず始まる各章はどれも面白く、アルバムの内容のレビューも時系列に網羅されており、
これがサン・ラーを理解するうえで最高の道案内をしてくれる稀有な本となっています。

なぜ "土星からやってきた古代エジプト人の末裔"と公言するのか、なぜ、"Sun Ra" という名前なのか、なぜああいうへんちくりんな格好を
しているのか、なぜオーケストラではなく"アーケストラ"なのか、なぜ無数の録音が存在しオリジナル盤が稀少なのか、というこれまで抱えていた
積年のモヤモヤがこれを読めばすべて解決するし、それらが解決すれば一気にサン・ラーへの音楽の世界に入っていけるようになります。

自分の知らないことで本当に知りたいと思っていることをきちんと教えてくれるし、純粋に書き物としても優れているし、読み物としてもとても面白い、という
これは素晴らしい "書物" です。 (敢えて、本、とは言うまい。)



Sun Ra / Sleeping Beauty  ( Saturn / P-Vine Records PCD-93849 )

2014年はサン・ラー生誕100年ということで、上記の本の上梓や稀少盤の復刻が行われていて、これもその中の1枚です。
サン・ラーの作品の中では最も美しい作品といわれる79年の音盤の紙ジャケット初復刻。

2曲目の " Door Of The Cosmos" がグルーヴィーでソウルフルでとてもカッコいい曲で大好きになりました。 サン・ラー自身は自分のことを
ジャズ・ミュージシャンだと思っていたし、エリントンとフレッチャー・ヘンダーソンがアイドルだったので、彼の音楽をジャズとして
カテゴライズするのは問題ないのですが、その中での適当な席が見つからず、大抵はフリージャズのコーナーに置かれてしまいます。

これがこの人を一般リスナーから遠ざける原因になっていますが、これはちょっとマズいと思います。 トリッキーさやゲテモノさを好む人も
少なからずいるのでそういう人向きには好奇心を刺激するのでいいのかもしれませんが、どちらかと言えばチャーリー・ミンガスなんかのほうが
近いような気がするので、普通にモダンのコーナーでいいと思うし、何ならビッグ・バンドのコーナーでもいいんじゃないかと思います。

てなもんや~を読んでしまった私なので、これからはもっと気さくにサン・ラーと付き合っていきたいと思っています。




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不動の絶対的エース

2014年12月07日 | Jazz LP (Columbia)

Duke Ellington and His Orchestra / Ellington Indigo  ( Columbia CL 1085 )


私にとって、最高のジャズのレコードは、これです。 


本当はこのブログの最終回までとっておくつもりでしたが、だんだんレコードのほうは弾切れが近づいてきて、いつまでレコードの話を続けられるか
わからなくなってきました。 できるだけ他のブログと内容が被らないように、ということを唯一の方針として進めてきましたが、CDほど熱心に
レコードを買うことはないので枚数が一向に増えず、この方針をこの先も長く維持するのは困難です。 今後はゆるやかに汎用的な内容になって
いかざるを得ないし、書き始めて1年経ったので、ちょうどいい機会かもと思います。

「無人島に1枚だけ持って行くとしたら・・・」という問いに代表されるように、好きな音盤に順位をつけることほど難しいことはない。 
この設問は、「そんなの選べるわけないじゃないか」という当たり前の正解を確認するために設定されているだけであって、それにまともに答える
必要はもともとないわけです。 にも関わらず、音楽を好きな人は自分に問いかけ続けることになります、一番好きなレコードは何か、と。

私がこのレコードを知ったのはもう25年以上前のことで、当時は何気なく買った中の1枚に過ぎなかったのですが、時間が経つにつれて自分の中で
この音楽の存在はその大きさを増し続けていき、今ではこれ以上の音楽が聴けるジャズのレコードは他にない、という確信になりました。
それだけの時間の中で出来上がったものなので、この想いが揺らぐことはもうないだろうと思います。

これまで何千枚のレコードやCDを何万回聴いてきたのかはもうわかりませんが、素晴らしい演奏や音楽がたくさんあることは十分わかってはいても、
このレコードの存在を脅かすものは結局ありませんでした。 どんなに稀少であっても、どんなに高価であっても、どんなに世評が高いものであっても、
これ以上の歓びを与えてくれたレコードは他にはありませんでした。

そういうレコードが自分にはある、ということが私にとって唯一の愛好家としての誇りかもしれません。



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今週の成果~女性が活躍するジャズ

2014年12月06日 | Jazz CD
DUの新宿ジャズ館でこの秋のボーナス買取は去年の3倍以上だったとブログにアップされていたので、こりゃあ楽しみだと3Fへ行ってみましたが、
棚出しが全然されておらず、新着は相変わらずの回転の悪さで、何なんだ?一体、とがっかりでした。 そういうのは棚出ししてから書いて欲しい。
Jazz Tokyoも見てみましたが、こちらも目ぼしいものは1枚だけで、あとは新譜を1枚買いました。





■ Cecilia Wennerstrom / Minor Stomp  ( Wela Records WELACD 002 )

なんと女性のバリトン奏者によるワンホーンで、97年ストックホルムのスタジオ録音です。

聴いて驚くのは、音がマリガンのような芯の抜けた音ではなく、ペッパー・アダムス系の重くゴリゴリした音なのに、フレーズが柔らかくて
ものすごく歌っていることです。 バリトンサックスでここまで歌心を感じる演奏は初めてです。 この大きく重たく取り扱いにくい楽器で
よくもここまで歌うように吹けるな、と面喰います。

しかし、楽器と言うのはなぜここまで人によって出てくる音が違ってくるのでしょう。 これこそが聴き比べの面白さです。
この人のバリトンなら、ブラインドテストでも当てられるような気がします。
演奏も落ち着いていて纏まりもよく、とてもオーセンティックです。 録音も各楽器の配置感も自然で、よく出来ています。

こういうのに当たると、CDの世界もいいものだ、と思います。 レコードとはまた違う、深い魅力を感じることができます。


■ Sliding Hammers / A Place To Be  ( Gazell / Spice Of Life Inc. SOL GZ-0001 )

姉妹による、2トロンボーン・クインテットというこれまた珍しい構成のアルバム。

こちらも驚かされるのはトロンボーンの音の大きさと美しさ。 そして伸びやかで滑らかなロングトーン。 早いパッセージではもたつきますが、
スライド・トロンボーンの特質を最大限活かした奏法に徹しています。 この楽器固有の演奏の難しさを克服して、難なく吹いています。
演奏もアンサンブルの仕方も完全に J & K をお手本にしていて、ご本家よりもデリケートでなめらかなハーモニーを実現しています。
これは見事です。 今どきの女性は、何をやらせても凄いです。

ただ、音楽的には表面的なところに気を使い過ぎていて深みがなく、一歩間違うと休日のカフェのBGMに堕してしまいそうな感じです。 
バックのピアノトリオも上手い演奏ですが、上手過ぎて手先だけで弾いているようにも聴こえる。 女性らしい清潔でシルクのような質感の
仕上がりですが、私には音楽的にまったく物足りない。

このCD、帯には寺島某の推薦文が載っていて、これがベタ褒めの内容です。 また、プロのトロンボーン奏者推薦文も載っています。
2人とも如何にこのトロンボーンの演奏が素晴らしいか、ということを示し合わせたかのように書き合っています。
そりゃあ、まあ、そうでしょう、販促文ですからね。 トロンボーンのCDなんてピアノやサックスとは違って人気がないのですから、
元々売るのが難しい商品です。 でも、レコード会社はこれを売らなきゃいけないから、そのためには手段を選ばないわけです。

”久し振りにVery Goodなトロンボーン盤が出た、いっぺんで惚れてしまった、音が気持ちよくバーンと出ている、そしてメロディアス、
 とにかくすばらしい”と寺島某は書いています。 まあ、そうかもしれません。 少なくとも、嘘は書いていない。

ただね、このCD、それだけではないでしょう?と言いたくなります。 この執筆の2人は揃ってこの姉妹の演奏技量をべた褒めしているのですが、
そんなのプロなんだから当たり前なんじゃないのか?と素人的には思ってしまいます。 裏を返せば、それだけ技術力のない演奏家の音盤が
溢れているということなんだけど、そこしか褒めるところがなかったんだな、というのが聴いた後で初めてわかるわけです。

別にレコード会社の意向に従って寺島某は仕事をしているだけで彼は何も間違ったことはしていないのですが、身銭を切ったこちらサイドの
気持ち的には、この野郎~、カネ返せ、と思うわけです。


でも、色々あるとはいえ、女性は頑張っています。 男性ミュージシャンの多くも、これに見習う必要があるんじゃないでしょうか。






■ Hammerhead / Mozaic  ( AIM HH007 )

トランぺッターのジェイソン・ブリュアーを中心にしたオーストラリアの演奏家らによる6重奏団で、ブルーノートのハードバップを現代に
蘇らせたらどうなるか、というようなコンセプトの演奏です。 "Mozaic" や "Speak No Evil" も収録されており、明らかに当時のショーター周辺の
音楽をお手本にしています。

今年になってこういうタイプのCDはたくさん聴きましたが、それらの中ではこれが頭一つ飛び出しているような気がします。
演奏は上手いし、音も抜群にいいし、音楽的にも満足度が高い内容で、これは素晴らしい出来だと思います。 何回でもリピートして聴けます。

まあ、今更こういう内容をやって一体何の意味があるんだ?と思わない訳ではないですが、1枚くらいならこういう内容でもアリかな、と思います。 
やはり、3管ハードバップは好きですから。 ただ、この路線で何作もやられると、さすがに褒める気にはならないだろうとは思います。


■ Peter Brotzmann / Nipples  ( Calig CAL 30 604 )

収録曲は2曲で、タイトル曲はデレク・ベイリー、エヴァン・パーカーが加わったセクステット。

このアルバムはかなり激しい演奏が繰りひろげられていて、やはりエヴァン・パーカーの影響があるんだろうと思います。
ブロッツマンは低音部、パーカーは高音部、と一応最初は層を分担して始まりますが、途中からは近づいたり離れたりを繰り返しながら
曲は進んでいきます。 特にタイトル曲にはどこか祝祭的なムードがあります。

この手の音楽は、人数が増えれば増えるほど混迷の度合いも増えていくし、音楽が持つパワーも増えていく。 あまりに多くなると音が混ざって
しまって何だかよくわからなくなってしまいますが、これくらいなら各人の個性がはっきりとわかるし、演奏する側もやりやすいんじゃないでしょうか。

ブロッツマンの初期の作品はこれでかなりカバーできたかもしれません。 ただ、この人の場合、カタログがよくわからないので、
他にどんな作品があるのかがわからず、いつも出たとこ勝負的に買っていくしかないのが難点。 実際に聴いてみると、作品ごとに
特徴があることがよくわかります。 当たり前だけど、ちゃんと考えながら作品をつくっているんですね。




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