先週末、DU新宿ジャズ館ではフリージャズ・セールがあったようで、平日の空いた時間に寄ってみるとその残滓が並んでいました。
DUさんはいつもいろんなセール企画を打って、普段ジャズのディープな話をする相手がいなくて淋しい思いをしている孤独なマニアの
心を癒してくれる稀有な存在です。 その内容は偏りのない幅広いものなので、マニアの多様なニーズに答えてくれます。 豊富な買取で
確保した商品をただ棚に並べるだけではなく、それらをいろんな切り口で編集して見せるということですが、そういうのを我々マニアと
一緒になって楽しみながらやっている、という感じが好ましいところなんじゃないでしょうか。
私の場合、そういう○○セールという企画の中で今のところ唯一興味を惹かれるのがフリージャズ・セールなのですが、それでも休日にわざわざ
それだけのために出かけるのはちょっと、というやる気のなさなので、毎度の周回遅れの買い物です。 整理券を貰うために並んで、阿鼻叫喚の
中をかき分けて~、というおもしろ話をご披露できない(30年前ならきっとやってた)、退屈な記事がダラダラと続きます。
今回は価格帯はぼちぼちという感じのラインナップで、量もちょうどいい感じです。普段は全然見かけないのは、こういう風にストックされて
いるからなんだなあ、と改めて思います。 ここ2カ月ほどレコードも買っていないので、エヴァン・パーカーを軸に少し多めに買いました。
■ Evan Parker / Process And Reality ( FMP CD 37 )
1991年ベルリンのFMPスタジオで録音されたソプラノのソロ演奏。 空白を恐れるかのような循環呼吸による切れ目のない音で埋め尽くされた
演奏です。 16曲収録されているということになっていますが、一体どこから次の曲に変わったのかなんて全然わかりません。
わかっているのはもしかしたら本人だけなのかもしれません。
この手の音楽の性質上、また演奏力に自信があることもあってかソロの作品が多い人ですが、まだ他のソロ作品は聴いていません。 時系列に
聴いていくと演奏の質が上がっていくことがよくわかるんだそうですが、なんせ中古で出てこないものでそういうところがまだわからないのが
残念です。
本領発揮の演奏が展開されて、音楽を聴いているという感じは一切なく、楽器の異形な音をただひたすら聴いていくだけという感じです。
楽器としての可能性を極め尽くそうとするかのような音が最後まで続きます。 でも、それでいいのです。 そういうのを聴きたくて
買ったわけですから。
家のスピーカーでこの音盤を聴くと、ネコが驚いて部屋から走って逃げて行きます。 そういう内容です。
■ Evan Parker, Barry Guy, Paul Lytton / at Les Instants Chavires ( psi records 02.06 )
1997年モントリオールで行われたライヴ録音で、ピアノレス・トリオによる演奏。 エヴァン・パーカーの演奏はフレーズはフリーのそれですが、
かなり知的に抑制されており、よくライヴで聴かれる感情の赴くままにというような演奏ではありません。 尺八のような音で吹いてみたり、
ロリンズみたいに吹いてみたり、と表情はクルクルと変わります。
ベースとドラムがいるおかげで楽曲の土台はしっかりしていてハチャメチャな印象はなく、安定感のある演奏に終始します。 コードを無視した
フレーズばかりで和声とは無縁の音楽だとは言え、ここまで安定感がしっかりしていると特に不安な気持ちになることもなく聴き通せます。
テナーの音もしっかりしていてとにかく上手い人なので、いい音楽を聴いたなあという率直な感想を覚えるから不思議です。
こう考えると、音楽が人を感動させる要素って本当に例の3原則だけなのか?と疑問が出てきます。
ちなみに、これだと猫は逃げません。 何なら、スピーカーの前で寝てたりします。
■ Evan Parker, Barry Guy / Obliquities ( Maya Recordings MCD9501 )
1994年英国のスタジオで録音されたベースとのデュオ作品。
ベースが大きな音で縦横無尽に駆け回るのが印象的ですが、そのせいか、とても伸びやかでなめらかな質感の音楽になっています。
パーカーも比較的中庸な(彼にしては、ですが)演奏で、ベースとの交流を楽しんでいるかのような雰囲気があります。
個人的にはこれが一番気に入りました。
■ Steve Lacy & Evan Parker / Chirps ( FMP CD 29 )
尊敬するスティーヴ・レイシーとのデュオ録音で、1985年ベルリンでの録音。 右チャンネルがレイシー、左チャンネルがパーカー、と
親切に書かれています。 ソプラノ2本だけの録音なので、まあ、必要な情報です。 FMPっていつも素っ気ないパッケージで、そんなのは
音楽には関係ないでしょ、という冷たいイメージですが、実は意外に親切なんだ・・・・・
パーカーは自我を抑え、レイシーに寄り添うかのような演奏に終始しています。 だからフリー特有のうるさい咆哮などは全くなく、まるで
2羽の鳥がさえずりながらクルクルと絡み合って大空を行ったり来たりしながら飛んでいるような音楽になっています。
スティーヴ・レイシーはもちろんソプラノ・フリーの草分けですが、メインストリームとの距離の取り方が他のフリー奏者とは少し違った人で、
聴く者を置き去りにするようなことはなく、常にこちらを見ているような親密さがどこかあるように思います。 この音盤にもそういう
ところがあって、一般的なフリーのイメージにはまったく当てはまらないこの人独自の音楽になっていて、パーカーはそれにうまく歩調を
合わせて微笑ましいのどかな雰囲気に満ちています。
普段はあまり出会わないエヴァン・パーカーなのでいい機会と思いまとめて聴いてみましたが、色々感じるところもあり、いい猟盤でした。
他にもいくつか買っていますが、また次の機会に。
DUさんはいつもいろんなセール企画を打って、普段ジャズのディープな話をする相手がいなくて淋しい思いをしている孤独なマニアの
心を癒してくれる稀有な存在です。 その内容は偏りのない幅広いものなので、マニアの多様なニーズに答えてくれます。 豊富な買取で
確保した商品をただ棚に並べるだけではなく、それらをいろんな切り口で編集して見せるということですが、そういうのを我々マニアと
一緒になって楽しみながらやっている、という感じが好ましいところなんじゃないでしょうか。
私の場合、そういう○○セールという企画の中で今のところ唯一興味を惹かれるのがフリージャズ・セールなのですが、それでも休日にわざわざ
それだけのために出かけるのはちょっと、というやる気のなさなので、毎度の周回遅れの買い物です。 整理券を貰うために並んで、阿鼻叫喚の
中をかき分けて~、というおもしろ話をご披露できない(30年前ならきっとやってた)、退屈な記事がダラダラと続きます。
今回は価格帯はぼちぼちという感じのラインナップで、量もちょうどいい感じです。普段は全然見かけないのは、こういう風にストックされて
いるからなんだなあ、と改めて思います。 ここ2カ月ほどレコードも買っていないので、エヴァン・パーカーを軸に少し多めに買いました。
■ Evan Parker / Process And Reality ( FMP CD 37 )
1991年ベルリンのFMPスタジオで録音されたソプラノのソロ演奏。 空白を恐れるかのような循環呼吸による切れ目のない音で埋め尽くされた
演奏です。 16曲収録されているということになっていますが、一体どこから次の曲に変わったのかなんて全然わかりません。
わかっているのはもしかしたら本人だけなのかもしれません。
この手の音楽の性質上、また演奏力に自信があることもあってかソロの作品が多い人ですが、まだ他のソロ作品は聴いていません。 時系列に
聴いていくと演奏の質が上がっていくことがよくわかるんだそうですが、なんせ中古で出てこないものでそういうところがまだわからないのが
残念です。
本領発揮の演奏が展開されて、音楽を聴いているという感じは一切なく、楽器の異形な音をただひたすら聴いていくだけという感じです。
楽器としての可能性を極め尽くそうとするかのような音が最後まで続きます。 でも、それでいいのです。 そういうのを聴きたくて
買ったわけですから。
家のスピーカーでこの音盤を聴くと、ネコが驚いて部屋から走って逃げて行きます。 そういう内容です。
■ Evan Parker, Barry Guy, Paul Lytton / at Les Instants Chavires ( psi records 02.06 )
1997年モントリオールで行われたライヴ録音で、ピアノレス・トリオによる演奏。 エヴァン・パーカーの演奏はフレーズはフリーのそれですが、
かなり知的に抑制されており、よくライヴで聴かれる感情の赴くままにというような演奏ではありません。 尺八のような音で吹いてみたり、
ロリンズみたいに吹いてみたり、と表情はクルクルと変わります。
ベースとドラムがいるおかげで楽曲の土台はしっかりしていてハチャメチャな印象はなく、安定感のある演奏に終始します。 コードを無視した
フレーズばかりで和声とは無縁の音楽だとは言え、ここまで安定感がしっかりしていると特に不安な気持ちになることもなく聴き通せます。
テナーの音もしっかりしていてとにかく上手い人なので、いい音楽を聴いたなあという率直な感想を覚えるから不思議です。
こう考えると、音楽が人を感動させる要素って本当に例の3原則だけなのか?と疑問が出てきます。
ちなみに、これだと猫は逃げません。 何なら、スピーカーの前で寝てたりします。
■ Evan Parker, Barry Guy / Obliquities ( Maya Recordings MCD9501 )
1994年英国のスタジオで録音されたベースとのデュオ作品。
ベースが大きな音で縦横無尽に駆け回るのが印象的ですが、そのせいか、とても伸びやかでなめらかな質感の音楽になっています。
パーカーも比較的中庸な(彼にしては、ですが)演奏で、ベースとの交流を楽しんでいるかのような雰囲気があります。
個人的にはこれが一番気に入りました。
■ Steve Lacy & Evan Parker / Chirps ( FMP CD 29 )
尊敬するスティーヴ・レイシーとのデュオ録音で、1985年ベルリンでの録音。 右チャンネルがレイシー、左チャンネルがパーカー、と
親切に書かれています。 ソプラノ2本だけの録音なので、まあ、必要な情報です。 FMPっていつも素っ気ないパッケージで、そんなのは
音楽には関係ないでしょ、という冷たいイメージですが、実は意外に親切なんだ・・・・・
パーカーは自我を抑え、レイシーに寄り添うかのような演奏に終始しています。 だからフリー特有のうるさい咆哮などは全くなく、まるで
2羽の鳥がさえずりながらクルクルと絡み合って大空を行ったり来たりしながら飛んでいるような音楽になっています。
スティーヴ・レイシーはもちろんソプラノ・フリーの草分けですが、メインストリームとの距離の取り方が他のフリー奏者とは少し違った人で、
聴く者を置き去りにするようなことはなく、常にこちらを見ているような親密さがどこかあるように思います。 この音盤にもそういう
ところがあって、一般的なフリーのイメージにはまったく当てはまらないこの人独自の音楽になっていて、パーカーはそれにうまく歩調を
合わせて微笑ましいのどかな雰囲気に満ちています。
普段はあまり出会わないエヴァン・パーカーなのでいい機会と思いまとめて聴いてみましたが、色々感じるところもあり、いい猟盤でした。
他にもいくつか買っていますが、また次の機会に。