Claude Thormhill / Play The Great Jazz Arrengements Of Gerry Mulligan And Ralph Aldrich ( 米 Trend TL -1002 )
"Dream Suff !" がスロー・サイドだったのに対して、こちらはアップ・サイドで、快活な楽曲が並んでいる。ジェリー・マリガンの編曲にはさほど感心
するところはないように思うけれど、当時のアメリカでは重宝がられていたようだ。ラルフ・オルドリッチは何者なのかはよく知らない。
ビッグ・バンドが嫌いな人は多数の楽器の合奏がもたらす「圧」が苦手なことが多いが、このオケにはそういううるさい「圧」はない。全楽器が
音を鳴らしても、独特のシルクのような繊細なハーモニーとなって現れる。ビッグ・バンドでこういうハーモニーを出す例を他には知らない、
だから、アップ・サイドであっても穏やかな気持ちで聴くことができる。
テナーやアルトらのリードが活躍する箇所もあり、ちゃんとジャズとしての快楽も味わえる。クラシックと同じような演奏をしても面白くない。
ビッグ・バンド・ジャズにはそれでしか味わえない魅力があるのであり、それが無ければわざわざ聴く価値はないだろう。そういうポイントを
外さずに、素晴らしいオーケストレーションが響き渡るのだ。
ソーンヒルの正規音源はその高名さを考えるとあまりにも少ない。録音にあまり積極的ではなかったようで、それが残念なところだ。
アメリカではビッグ・バンドは人気が高い分野で需要はたくさんあっただろうに、レコードが少ないのがもったいない。
昔、スペインのフレッシュ・サウンズがRCA音源の12インチ盤をリリースして、あれのオリジナルを必死で探したものだが、どうやら12インチ
としてのオリジナルは存在しないらしい。一体どうやって12インチ化したのかよくわからないが、わざわざ自前でそういう編集をしてまで
レコードを作ってしまうあのレーベル・オーナーの見識はすごいと思ったものだ。そこまでやってしまう気持ちは私にもよくわかる。