Lee Konitz / Jazz A Juan ( デンマーク Steeplechase SCS-1072 )
1974年アンチーブ・ジャズ・フェスティバルでのライヴ演奏で、マーシャル・ソラール、ペデルセン、ユメールらがバックについている。
ライヴということもあってか、ダニエル・ユメールがやたらとシンバルをよく鳴らしていている。マーシャル・ソラールはキレのある演奏で、
50年代のレコードで聴ける退屈なピアニストというイメージを払拭してくれる。どことなくコルトレーン・カルテットの匂いがする瞬間があり、
非常におもしろい。そういうバックの演奏に感化されて、コニッツも普段のスタジオワークでは見せない表情で臨んでいる。
コニッツはこんな風にも吹けるんだぞ、と言わんばかりに太い音を出して吹いていく。フレーズもいつものなめらかな流れではなく、モーダルでも
バップでもない短めの強いアクセントをつけた独特のものだ。でも、そこはコニッツらしく聴き易いフレーズで、決してフリーキーでもなければ、
アヴァンギャルドでもない。誰かの物真似ではない演奏になっているから感心させられる。
ミュージシャンは時間の流れの中で様々に変化していく。変われない者は脱落していく。聴き手は自分の好きな時代の演奏スタイルを常に望むもの
だけれど、ミュージシャン本人はそんな話を相手にするわけにはいかない。だから、聴き手は好きな時代のレコードを好きなように聴いていれば、
という話になる。こうやって両者の距離は拡がっていく。コニッツの場合も、この時代の演奏まで聴いている人の数はグッと減ってくる。
でも、後期の演奏にもいいものが結構ある。長く活動できたミュージシャンの作品は、その変化を楽しむところに音楽を聴く楽しさがある。
幸か不幸か、どれも例外なく安レコなんだから、もっと広く聴かれるようになったらいいのにと思う。