今週拾った安レコたち。 エヴァンス以外はどれもワン・コイン。
最近は国内盤の良さを再認識している。 特に East Wind は内容が SteepleChase あたりと近い雰囲気があり、もっと知りたいと思うようになった。
当時は人気があったらしく、結構版を重ねてプレスされていて、この中の初版規格のものはレコードの造りも丁寧で、音質もとてもいい。
このあたりは元々CDで聴いていた作品で、家聴き用にレコードに切り替えるために拾っている。 その際CDは処分するから、実質的な支出はほぼゼロだ。
レコードの値段が下がったお陰で、こういうことができるようになったわけだ。 DUに行くと、こういう安レコの在庫が唸るほど置いてある。
Art Farmer / Yesterday's Thoughts ( 日本 East Wind EW-8025 )
全編フリューゲルホーンで通しているけど、この音色の美しさはどうだろう。 適度に残響が効いた音場感も素晴らしい。
甘ったるいところがなく、整理された抒情感が硬派な雰囲気すら醸し出している。 シダー・ウォルトンも熱が入った演奏をしている。 これが日本
オリジナルということが誇らしい。 日本はファーマーを丁寧に処遇したのがよかった。 いいレコードがたくさん残っていて、これはその代表作の1つ。
"Yesterday's Thoughts" はベニー・ゴルソンが書いた隠れた名曲で、ファーマーが穏やかな表情で吹き切った名演。
このアルバムは、本当に素晴らしい。
Hank Jones / Hanky Panky ( 日本 East Wind EW-8021 )
クラウス・オガーマンの名曲 "Favors" をここでもやっている。 素晴らしい演奏だと思う。 いつもの鍵盤の上に指を置いていくような弾き方ではなく、
かなりしっかりとアドリブをとった演奏になっているけれど、そこはこの人らしく上品で無駄がないラインで、すべてのピアニストのお手本になるような
ピアノと言えるのではないか。 地味ながらもいい選曲で、聴いていて飽きるということがない。
Gil Evans / Live At The Public Theater (New York 1980) ( 独 Blackhawk BKH 525 )
この時期のギル・エヴァンスは自己のオーケストラからアンサンブルを排除することで、それまでのビッグ・バンドの既成概念を覆した。 メンバーたちの
スポンティニアスな飛翔を誘発するために大きくスペースを拡げて、自由に遊ばせる。 ビッグ・バンドを音数少ないスモール・コンボのように演奏させた。
アーサー・ブライスのアルトが悲しげに鳴る "Alyrio" が素晴らしい。
オリジナルは日本のトリオ盤だけど、これは後発のドイツ・ブラックホーク盤。 トリオ盤は聴いたことがないけど、この独盤はやたらと音がいい。
Bill Evans / Eloquence ( 米 Fantasy F-9618 )
エディ・ゴメスとのデュオが半分、エヴァンスのソロが半分、という未発表曲集。 国内盤は違うデザインに差し替えられて(当然だ、これじゃ売れん)、
スイング・ジャーナル誌のゴールド・ディスクになっている。
ここに収められた演奏は、他の未発表集に比べてエヴァンスのピアノの出来がいい。 きっと発売当時は歓迎されたんだろうと思う。 エヴァンス・ファンが
ブートレグを追いかける気持ちがよくわかる。 演奏途中でエレピに切り替えたり、ライヴ演奏があったり、とごった煮な感じだけど、エヴァンスの
圧倒的なピアニズムという一本の横糸が通っているので、不思議と全体的には統一感があるのだ。 これは正規作品にも勝る名盤だと思う。