廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

長引く梅雨空の下の安レコ

2019年07月17日 | Jazz LP (安レコ)


長引く梅雨空の3連休、街は10インチ祭りだというのでのんびりと徘徊。 すべて安レコ。

状態がイマイチなものが多くて買えるものは少なかったけど、まあこれだけ安ければ文句も言えまい。

所用で土曜日は行けなかったので落穂拾いだったけど、以前から気になっていたタイトルばかりが拾えたので満足。



 

3枚とも素晴らしい内容で、コスパ最高である。 こんな価格設定はユニオンにしかできないだろう。

こういう買い物が一番楽しい。 いつもこうだといいんだけどな。



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金曜日の夜の安レコ

2019年06月12日 | Jazz LP (安レコ)


毎週恒例、金曜日の仕事帰りに新宿で拾った安レコ。 2枚買って、2千円でお釣りがくる。

Tha Mastersounds は680円で最安値記録を更新。 "Ballads And Blues" というタイトル通りの内容。

Buddy Childersは随分前に聴いたけど、内容は全く覚えていなかった。

ターコイズの溝有りフラットだけど艶なしで、もしかしたらセカンドなのかもしれない。 カゼヒキは全くなくて、良好な音質。

これ、実はハービー・スチュワードを聴く盤だったんだな。



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"Fantasy祭り" は "安レコ祭り" と同義語

2019年06月05日 | Jazz LP (安レコ)


先週末に拾った安レコ。 Fantasyレーベルを軸に、すべてが千円台。

カル・ジェイダーはいいヴァイブ奏者だが、誰からも相手にされない。 

上段右のアルバムはピアノはソニー・クラーク、フロントはブリュー・ムーアのワンホーンなのに、

ジェイダー名義になった途端にマニアからは完全無視される。

そういうところが不憫で、Fantasy祭りと相成ったわけである。


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疲れていても、金曜日の夜は安レコ

2019年05月29日 | Jazz LP (安レコ)



先週金曜日に拾った安レコ。 疲れていたけど、レコ屋に行くと疲れはどこかへ消えるなあ。

リヴァーサイドは2,000円、あとは3ケタ(800円、500円)。

トニー・スコットは意外な拾い物だった。 いずれ、個別に取り上げる。

トニー・ベネットのこのマルーン・フラット、昔は10,000円じゃ買えなかった。 この凋落振りはどうだろう。


今はブルーノートがブームだから値段が高騰して、という話をよく聞く。

でも、その一方で優れた内容のレコードが同時並行して安レコ化しているのを見ていると、

ジャズという音楽を巡る状況は、リスナーの鑑賞力も含めて、全てが衰退していっているのかもしれないと思うことがある。

定番ブランドしか嗜好できない感度の悪さというか、想像力の無さというか。


正常化する日は来るのだろうか?



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探していたものが安レコとして現れる時

2018年02月14日 | Jazz LP (安レコ)



先週拾った安レコたち。

ホーキンスのキャピトル盤って案外見つからないなあ、と諦めかけていたところだったので、これは何とも嬉しい。

モータウンで一番好きな曲が "Neither One Of Us"。 学生時代にデヴィッド・サンボーンがこの曲の魅力を私に教えてくれた。
300円という値段が相場から言って安いのか高いのかよくわからないけれど。

ジョニー・マンデルをズートのワンホーンで聴けるということで探していた。 "Cinnamon And Cloves" をやっているのが嬉しい。 
音質は最高レベル。 全編がスロー・バラードとスロー・ボッサの、大人の夜のジャズ。


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3ケタのオリジナルたち

2018年02月07日 | Jazz LP (安レコ)



先週拾った安レコたち。 左上から順に、800円、350円、650円。 なんだか不憫で、泣けてくる。

ジャズテットの黄色のヤツは再結成して来日した際に録音された日本オリジナルで、他国ではプレスされていない。 
こんなレコードがあるなんて知らなかったけど、中古CD市場の方では廃盤として高値が付くらしい。

ESPのパウエルは以前から気になっていた1枚。 試聴したら音質が思いのほか良かったので、慌てて購入。
エアチェックか何かなのかと思ってたけど、ちゃんとマスターテープの音だった。

しかし、どれも安いなあ、立派なオリジナルなのに。 
こんなのばかり漁っていると、2~3,000円のレコードが「ちょっと高いな」とか思うようになる。



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夏休みの安レコ

2017年08月13日 | Jazz LP (安レコ)



やっと夏休みに入ったけど、天気が悪く、気分もスッキリしない。 だからという訳でもないけど、ブラブラとレコードを漁る。
どこも如何にも夏のセールが終わった跡、という感じの無残な荒れ様だったけど、安レコのコーナーはそういのとは無縁のフレッシュさだ。 
3枚とも3ケタ台。





イタリアの Soul Note は質の高い作品が多く、録音もいい良質なレーベル。 後期アンドリュー・ヒルの良さに開眼したので、当然拾っておく。
この値段の安さが彼の人気の無さを表している。 彼はブルーノートでちょっと頑張り過ぎた。 そのせいで、リスナーから敬遠されるようになってしまった。





日本制作のソロ・ピアノ集。 例のDENONのPCM録音シリーズだが、個人的にはこの技術は楽器の音の線が細く、音楽が痩せて聴こえるのであまり好きではない。
でも、このレコードではそういう傾向は感じられず、違和感なく聴くことができた。 良くも悪くも日本人が作りそうな作品だが、彼のソロ作品は数が少なく、
もしかしたらこれだけなのかもしれない。 





昔はゴロゴロ転がっていたけど、今ではほとんど見かけることもなくなった。 だから懐かしくて、つい手に取った。
12インチシングルは音がいいと言うけど、果たしてどうなんだろう、これから聴くのが愉しみだ。


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今週の安レコ ~ コーラスの愉楽編

2017年07月29日 | Jazz LP (安レコ)



今週の安レコたち。 旧いアメリカ音楽をコーラスで聴く愉楽は他の何にも代え難い。 でも、イマドキは誰も聴かないんだろう、総じて安レコである。
もったいないなあと思いながらも、黙々と拾っておく。 いいのかなあ、こんなに安くて、と思いながら。





やっと見つけた、もう1枚のディック・レーン・カルテット。 凄まじいヴォイス・テクニックを駆使したスピード感のある仕上がりは他の追随を許さない。
これと比べると、マンハッタン・トランスファーも霞んでしまう。 音質も抜群に良くて、重層的なコーラスの姿が生々しく捉えられている。




ビーチ・ボーイズもカヴァーした名曲 "Graduation Day" が聴ける、フォー・フレッシュメンの夢見るようなバラード・アルバム。 他の曲も名曲ばかりだ。
一般的に代表作とされる "5 Trombones" よりも、こちらのほうが好き。 彼らにはたくさんアルバムがあって、当時いかに人気があったかがよくわかる。




ミルス・ブラザーズのきれいな10インチがいとも簡単に転がっているなんて、時代が変わったんだなあと実感させられる。 
こういうのを見つけると、つい、ニコニコしてしまう。




コーラスものからは外れるけど、これも探していた1枚。 まあ、とにかく最高の内容だ。 カウント・ベイシー・オーケストラのこの只ならぬドライヴ感は、
一体何なんだろう。 そして、フル・バンドよりも大きな声量で爆発するトニー・ベネット。 これを聴いて興奮しない人なんて果たしているんだろうか。
アメリカのTVドラマを見ていると、トニー・ベネットの名前がよく出てくる。 きっと今でも広く尊敬されている人なんだろう。
トニー・ベネットを聴くアルバムだけど、カウント・ベイシー・オーケストラを聴くアルバムでもある。


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安レコに潜む魔物

2017年07月15日 | Jazz LP (安レコ)
ここ数週間の安レコの収穫。 暑い中、よく頑張った。



安レコは回転が速いので、こうやってキャッチできるものは流通しているブツの中のごく一部に過ぎない。 買い切れずに一旦は見逃して、やっぱり買っておこうと
再度訪れてみても、もう無いということも多い。 このあたりの匙加減はなかなか難しい。




キング・プレジャーは好きなヴォーカリスト。 このアルバムは傑作。 United Artists のグレイサックスのステレオプレスだけど、これがとてもいい音場感。
1つ1つの音の艶やかさもモノラル盤を上回る。 コンテンポラリーのレコードと同じパターンだ。 こうなると、アンダーカレントのステレオ盤も聴いてみたいなあ。




East Wind オリジナルのライヴらしい寛いだ雰囲気が好ましい作品。 アート・ファーマーの日本制作にハズレなし。 日本人が愛して大事にしたアーティストの
1人として我々の身近なところに常にいる人で、そういう雰囲気が濃厚に漂っている。 それが嬉しい。




昔は幻のシグネチャー・レーベルという理由でそこそこの値段が付いて買えなかったけど、今や身近な存在となった。 ジャケ写通りのギターとハーモニカを
自在に操る佳作。 ハーモニカが切々と謳う "Misty" が最高の名演。 モノラル期の作品では、これが1番いいと思う。




こんな顔ぶれが揃うのは後にも先にもないだろう。 そういう意味では奇跡の1枚。 ショーターの優し気な振る舞い、ホールの瑞々しいプレイ、それらの
視線の先には常にペトルチアーニがいるような気がする。 ジャケットを見ているだけで、なんだか胸を打たれる。 




ジム・ホールのコンコード時代の傑作。 ピアノレスでガッツリとギターを弾いている。 バラードでの幻想的で深い音色が素晴らしい。 
レコードではあまり流通していないのか、この5枚の中では1番値段が高かった。


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先週のとある昼下がり、閑散としたDUの某店で安レコを漁っていると、ジャズ・レコードのコレクターとしても有名なあのお方が店に入ってきた。 最初は
よく似た人かと思ったけど、髪型でご本人だとわかった。 白いものが混じった無精ひげ、モスグリーンの古着っぽいTシャツ、膝丈に切ったジーンズ、
手にはCDの入ったDUの袋をぐしゃっと持っていた。 年齢を感じさせない贅肉のないがっしりとした体形で、アスリートのような感じだった。

廃盤コーナーには目もくれず、新入荷の安エサ箱に直行し、とても熱心に漁っておられた。 でも、いい物が無かったようで、全部見終わると残念そうにエサ箱を
じっと見つめて、その後は店内をブラブラと歩き、壁棚に置かれたボックスセットを手に取ったり、壁に掛かった高額盤を眺めたり、廃盤コーナーのインパルス欄を
眺めたり、と去り難く名残惜しそうな感じだった。

店員たちも気付いていて何やらヒソヒソと話をしていたけど、声をかけるような無粋なことはせず、もちろん私もそんなことはしなかった。 
レコード屋で見かけてもそっとしておいて欲しい、と常々言っているを知っているから。

新入荷のところだけを探していたということは、よく来ているということなんだろう。 あれだけたくさんのレコードを持っていながら、それでも猟盤を
しているわけだから、この趣味には魔物が潜んでいるんだな。


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直近の猟盤での成果

2017年06月24日 | Jazz LP (安レコ)
この2週間ほどの猟盤の成果はこんな感じ。 相変わらずの安レコ狙いで、今はこれが一番面白い。

ちなみに、ここで言う安レコとは2,000円未満のレコードのことを言っていて、これはDUの定義に準拠している。 DUでは2,000円未満を「ロー・プライス」、
2,000~8,000円未満を「ミドル・クラス」、8,000円以上を「高額廃盤」、と呼んでいる。 まあ、妥当な線引きじゃないだろうか。




特に意識しているつもりはないんだけれど、最近はスティープルチェイスをよく聴いているような気がする。 全部、1,000円台だ。 安レコ狙いになると、
当然のようにこのレーベルの存在感が増してくる。 昔聴いていた国内盤LPやCDはどれも音が硬くてサウンドに空間的な拡がりが感じられず、音楽を全然
愉しめなかった。 そういう印象があったのでこれまでは避けていたのだが、オリジナルを聴いてみるとそれまでの印象とは全然違う音場感の良さだし、
よくよく考えると値段も安いし、ということで自然と手が出るようになったのかもしれない。 最近24bitデジタルリマスタされてCDが再発されているけど、
音はどうなのかなあ。





Horizonレーベルはチリチリと音の出る盤が結構多くて買えていなかったが、ようやくノイズのない盤が見つかった。 これは嬉しい。
ルネ・オファーマンはちゃんと聴いたことがなかったから、この機会に聴いてみようということで。 どちらも当然1,000円台。





この2枚はさすがに安レコというわけにはいかず、ミドル・クラス。 左の黄色いジャケットのものが青レーベルのレギュラー盤で、右のベージュ色のものが
緑レーベルの初出盤。

緑レーベルのほうが音がいいから、ということで廃盤専門店では高い値段が付いているけれど、こうして聴き比べるとそんなのは嘘だということがわかる。
どちらもフラットだけど材質には違いがあって、緑のほうはブルーノートのレキシントンのような硬くて重い材質、青のほうは普通のルースト盤の材質。
でも音の質感はまったく変わらない。 ちなみに12インチも音の質感は同じで、材質的には最も安定している。 12インチのきれいなものは材質起因の
ノイズは全くないから、やっぱりこれは12インチで聴くのがいいと思う。

だから、緑レーベルは青レーベルと比べて別格の音とか、物凄い音とか、そういう話にはダマされないでね。 




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ワン・コインのレコードたち

2017年04月15日 | Jazz LP (安レコ)


今週拾った安レコたち。 エヴァンス以外はどれもワン・コイン。 

最近は国内盤の良さを再認識している。 特に East Wind は内容が SteepleChase あたりと近い雰囲気があり、もっと知りたいと思うようになった。
当時は人気があったらしく、結構版を重ねてプレスされていて、この中の初版規格のものはレコードの造りも丁寧で、音質もとてもいい。

このあたりは元々CDで聴いていた作品で、家聴き用にレコードに切り替えるために拾っている。 その際CDは処分するから、実質的な支出はほぼゼロだ。
レコードの値段が下がったお陰で、こういうことができるようになったわけだ。 DUに行くと、こういう安レコの在庫が唸るほど置いてある。 




Art Farmer / Yesterday's Thoughts  ( 日本 East Wind EW-8025 )

全編フリューゲルホーンで通しているけど、この音色の美しさはどうだろう。 適度に残響が効いた音場感も素晴らしい。

甘ったるいところがなく、整理された抒情感が硬派な雰囲気すら醸し出している。 シダー・ウォルトンも熱が入った演奏をしている。 これが日本
オリジナルということが誇らしい。 日本はファーマーを丁寧に処遇したのがよかった。 いいレコードがたくさん残っていて、これはその代表作の1つ。

"Yesterday's Thoughts" はベニー・ゴルソンが書いた隠れた名曲で、ファーマーが穏やかな表情で吹き切った名演。 
このアルバムは、本当に素晴らしい。




Hank Jones / Hanky Panky  ( 日本 East Wind EW-8021 )

クラウス・オガーマンの名曲 "Favors" をここでもやっている。 素晴らしい演奏だと思う。 いつもの鍵盤の上に指を置いていくような弾き方ではなく、
かなりしっかりとアドリブをとった演奏になっているけれど、そこはこの人らしく上品で無駄がないラインで、すべてのピアニストのお手本になるような
ピアノと言えるのではないか。 地味ながらもいい選曲で、聴いていて飽きるということがない。




Gil Evans / Live At The Public Theater (New York 1980)  ( 独 Blackhawk BKH 525 )

この時期のギル・エヴァンスは自己のオーケストラからアンサンブルを排除することで、それまでのビッグ・バンドの既成概念を覆した。 メンバーたちの
スポンティニアスな飛翔を誘発するために大きくスペースを拡げて、自由に遊ばせる。 ビッグ・バンドを音数少ないスモール・コンボのように演奏させた。
アーサー・ブライスのアルトが悲しげに鳴る "Alyrio" が素晴らしい。

オリジナルは日本のトリオ盤だけど、これは後発のドイツ・ブラックホーク盤。 トリオ盤は聴いたことがないけど、この独盤はやたらと音がいい。




Bill Evans / Eloquence  ( 米 Fantasy F-9618 )

エディ・ゴメスとのデュオが半分、エヴァンスのソロが半分、という未発表曲集。 国内盤は違うデザインに差し替えられて(当然だ、これじゃ売れん)、
スイング・ジャーナル誌のゴールド・ディスクになっている。

ここに収められた演奏は、他の未発表集に比べてエヴァンスのピアノの出来がいい。 きっと発売当時は歓迎されたんだろうと思う。 エヴァンス・ファンが
ブートレグを追いかける気持ちがよくわかる。 演奏途中でエレピに切り替えたり、ライヴ演奏があったり、とごった煮な感じだけど、エヴァンスの
圧倒的なピアニズムという一本の横糸が通っているので、不思議と全体的には統一感があるのだ。 これは正規作品にも勝る名盤だと思う。


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アルトの巨匠の傑作ライヴを安レコで

2017年04月08日 | Jazz LP (安レコ)


今週拾った安レコは、アルトの巨匠たちの傑作ライヴ。 趣味の良さと高い音楽性を兼ね備えた、大人のための音楽。
ジャズが好きな人が最後にたどり着くのは、きっとこのあたりだろうと思う。

そういうレコードたちを抱えて店を出て、ドトールで珈琲を飲みながら煙草を燻らせて、三千円でお釣りがくる。
疲れていたはずの週末なのに、家に向かう足取りはなぜか軽い。




The Paul Desmond Quartet / Live  ( 米 Horizon SP-850 )

エド・ビッカート、ドン・トンプソンらカナダのギタートリオをバックにトロントのバーボン・ストリートで行われたライヴをベースのドン・トンプソンが
録音した作品。 そのせいか、手作り感と親しみやすい音場感を持ったレコードだ。

デスモンドが作曲した "Wendy" が桜の花のようにほんのりと切ない。 こんな曲を書くんだからなあ。 デスモンド・トーンがどこまでも優しい。
エド・ビッカートのギターも全体のトーンをシックで穏やかに染めていて、上品なことこの上ない。 デスモンド・ファンの期待を裏切ることのない作品だ。




Phil Woods / Live From The Showboat  ( 米 RCA Victor BGL2-2202 )

フィル・ウッズ中期の最高傑作はこれだろう。 艶やかで輝くようなトーンで理知的に制御した演奏に終始している。 バックは無名のミュージシャンで
固めているにもかかわらずとても上手くて纏まりのいい演奏をしていて、ライヴにありがちな粗いところはまったくなく、スタジオ録音かと思うような
仕上がりになっている。

軽快に弾むような "A Sleepin' Bee" で始まるとワクワク感が一気に高まってくる。 ブラジリアン音楽のテイストが効いた曲も多く、しっとりと
丁寧に演奏されていて、2枚組の全編が素晴らしい。 こういう作品はジャズではちょっと珍しい。

音質の良さにもぜひ触れておかねばならない。 オーディオ的な快楽度が高く、音楽の素晴らしさをありのままに伝えてくれる。


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今週の拾い物

2017年03月04日 | Jazz LP (安レコ)


今週の拾い物たち。 他にも何枚かあったけれど、いくら安レコとは言え、無節操に買うようなことはしない。 欲しいと思った物の半分を上限にして拾う。
これからも継続して猟盤を愉しむためにも、そのほうがいい。 こういうのは釣り人の心境に近いかもしれない。 漁場を守るのだ。



Bill Evans / Conception  ( 米 Milestone M-47063 )

最近はエヴァンスの未発表録音ものをよく買っているような気がする。 特に意識して探している訳でもないんだけど、よく目に付くからかもしれない。

彼の死後に集中的に発売されたこれらはアウトテイクだからと軽んじられる傾向があるだろうけど、実は内容はどれも素晴らしいのだ、ということが実際に
聴くようになってわかった。 エヴァンスの場合、演奏の出来が悪いからお蔵入りした訳ではなく、当時のレコードという器に盛れる容量には限りがあり、
更にエヴァンス自身がリリースOKを出す基準が厳し過ぎただけなのだ。 

ここに収録されたソロ演奏の数々はどれも素晴らしく、ヴァーヴの"Alone"なんかと比較しても全く引けを取らない演奏なんじゃないかと思う。
音質も良好だし、何一つケチの付けようがない。 "Like Someone In Love" の幻想的でシルクのような手触りは絶品だ。 ジャケットも最高だし。



Steve Kuhn / Mostly Ballads  ( 日本ポリドール 28MJ3546 )

学生時代からの愛聴盤だが、最初からCDで聴いてきたのでレコードだとどんな感じかなとずっと興味があった。 ハーヴィー・シュワルツのベースがより大きく
深く鳴っていて、とてもいい。 

それまではどちらかと言えばカルト的な位置付けだったけれど、この作品は日本や欧米で好意的に迎えられて、以降はたくさん録音を残すようになった。
ちょうどキースのスタンダーズがジャズ界を席巻して頃でもあり、受け入れやすい状況だったこともあったのだろう。 私の一番のお気に入りのアルバム。



The Modern Jazz Quartet / Pyramid  ( 米 Atlantic 1325 )

MJQなんてもう誰も聴かないんだろう、完オリなのに安レコ化している。 そう言えば、「騎士団長殺し」にもこのアルバムが出てきてたなあ。

グループとしての一体感がピークだったのがアトランティック時代で、プレスティッジ時代よりも演奏に生命感が溢れている。 クラシックとの融合、
なんてここには存在しない。 ミルトのヴィブラフォンが全体を支配しながらも、パーシー・ヒースとコニー・ケイが大胆な演奏を展開しているのが意外だ。
この2人の演奏を追いかけて聴くと、とても楽しい。 "Undercurrent" でも取り上げられた "Romaine" が聴けるのが嬉しいアルバム。


エヴァンスのリヴァーサイド作品の日本ビクター盤を聴いてみたくなって在庫があるかな、と仕切りを覗くと、驚くことに1枚もない。 しかも、そういう
状態が何週間も続いている。 どんなフォーマットであれ、人気があるんだなあ、と今更ながらに感心する。 そういうのも含めて、安レコ漁りは愉しい。

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安レコの底ヂカラ

2017年02月25日 | Jazz LP (安レコ)


今週拾った安レコたちにはテーマがある。 かつてCDで聴いて、音が悪くて投げ出してしまった音盤たち、というテーマである。
レコードで聴き直してみようと思ったまま長らく忘れていたが、偶然、目の前に揃って現れた。



Enrico Pieranunzi / Deep Down  ( 伊 Soul Note SN 1121 )

水も滴るようなピアノの美音が降り注ぐ。 部屋の中の空気がガラリと変わるのがはっきりとわかる。 これがあれば、空気清浄機なんていらないな。
マーク・ジョンソンのジャスト・インなリズムとラインがとても効いていて、演奏を格上げさせている。 "Antigny" "Evans Remembered" という
素晴らしいキラー・チューンに心から酔わされる。 後者では、3人の演奏にはもはやエヴァンス・トリオが乗り移っている。

とにかく、CDとは別次元の音である。 ピエラヌンツィのピアノの音の輝き、マークの太い低音、ジョーイの濡れたようなシンバル、どれをとっても
最高の美音で迫って来る。 この作品の真価が初めてわかった。



Kenny Barron / 1 + 1 + 1  ( 米 Blackhawk Records BKH 5060L )

ベースとデュオで対話する作品で、ベース奏者はロン・カーターとマイケル・ムーアが分担して受け持つ。 マイケル・ムーアはとても好きな人。
ケニー・バロンは過去の偉人たちのいいところを全部1箇所に集めたような、隙1つない完成されたピアニストだ。 黙って拝聴すれば、それでいい。
こんなに素直にスタンダードを歌わせるピアニストは他にはあまりいないんじゃないだろうか。

ブラックホークというレーベルはゲッツのアルバムもそうだったけど、CDの音が私にはどうもダメなので、こうしてレコードで聴くしかない。
期待通りの伸びやかでとても自然な音が心地よい。 初めてまともにこの作品を聴いた気持ちになった。



The Great Jazz Trio / At The Village Vanguard  ( 日本 East Wind EW-8053 )

言うまでもなく、これがオリジナル。 昔からトニーのドラムスの音が凄いことで有名だ。 床が重低音で振動するのがわかる、甚だ近所迷惑な1枚。
でも、聴きどころはそれだけじゃない。 ハンク・ジョーンズの抑えの効いたピアノにも圧倒される。 ロン・カーターは相変わらず音程が悪いけど。
それでもやっぱり、トニーは最高のドラマーであることをこれが裏付ける。 この頃の日本のレーベルは企画・制作を乱発していたけど、その中には
最高のジャズを記録したものも確かにあるのだ。 クラウス・オガーマンが書いた名曲 "Favors" でのハンクの情感が切ない。

これもどういうわけかCDは音の粒度が粗く、興醒めする。 それがレコードだと自然な音場感で、とてもいい。 700円でこれが聴けるんだからなあ。


安レコの底ヂカラを改めて実感させられた3枚。 安レコにしか興味が無くなったせいで、レコード屋にいる時間が以前よりも長くなった。
物量の多さが桁違いだからだ。 結構疲れるけれど、それでもゴソゴソと探すのは楽しくて、あっという間に時間が過ぎている。


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今週末の安レコたち

2017年02月18日 | Jazz LP (安レコ)


今週拾った安レコたち。 この辺りはふと聴きたくなる時があるので、手許にあると重宝する。 だから安いのが見つかった時に、サボらずに拾っておく。 



Bill Evans / Time Remembered  ( 日本ビクター VIJ-4035 )

これは探していた未発表録音ものの1枚。 エヴァンスのカッコいい時代の写真をあしらったジャケットが嬉しい。 これを聴くと、日本ビクター盤の
音質の品格の良さが改めてよくわかる。 日本ビクター盤でリヴァーサイド諸作を買い直そうかな、と考え込んでしまう。 何だかんだ言ったところで、
私はこの音を聴いて育ったのだ。 愛着の度合いはオリジナルなんかよりはるかに深い。



Jimmy Rowles / We Could Make Such Beautiful Music Together  ( 米 Xanadu 157 )

スタンダードを原曲のメロディーを解体して演奏しているので何の曲を演奏しているのか一聴するとよくわからないものが多い、とてもよく考えられた
内容になっていて、なかなか硬派だ。 単なる甘いスタンダード物にしていないところに、ベテランの矜持を感じる。 ザナドゥはプレスの版数が多く、
レイタープレスは音が薄くて興醒めするが、初期プレスの盤で聴くと音質はいい。



Mel Torme / At The Crescendo  ( 米 Bethlehem BCP 6020 )

昔からメル・トーメの代表作と言われるけれど、エンターテイメント過剰なところがあり大味な内容だと思う。 同じクレッセンドのライヴなら、
素直に歌に集中しているコーラル盤のほうが出来が良い。 あちらは、作者本人の "The Christmas Song" が聴ける。



Jimmy Raney / Solo  ( 米 Xanadu 140 )

この人はプレスティッジ盤などで聴いても本当の良さはわからない。 クリス・クロス盤やザナドゥ盤で聴いて初めてギタリストとしての良さがわかる。
これは無伴奏のソロ演奏なのでギタリストとしての真価がよくわかる内容で、年老いた見た目の印象とは違う瑞々しさが素晴らしい。 ギターを触ったことが
あれば、この作品の良さは身に染みるはず。


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