廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

箱物は面倒臭い

2021年03月28日 | Classical
レコードにしてもCDにしてもそうだが、箱物は面倒臭い。盤を取り出しにくいし、保管するにも場所を取る。
枚数が多くて、内容量も多いから、途中で飽きて最後まで聴かずに投げ出してしまうこともある。

そんな感じだから、大体はほとんど聴かれていなくて、盤質はきれいなものが多い。それに反比例して、保護用のビニールなどが
非定型サイズに対応できず、箱の外観は擦れていたり汚れて傷んでいるものがほとんど。箱物あるあるである。

ジャズは箱物は少ないので、そういう面での苦労はあまりないが、クラシックは厄介だ。オペラのように作品が長大なものが多いし、
「全集」としてまとめることが多いから、箱物を避けて通ることは難しい。




タチアナ・ニコラーエワのショスタコーヴィチ、24の前奏曲とフーガ。彼女は初演者且つ史上初の全曲録音者で、生涯に3度も録音しているが、
これはその第1回目の全集録音で4枚組。まあ、4枚くらいならまだ問題なく聴き通せる。そもそもこの楽曲は偏愛しているし。





同じくニコラーエワのバッハのパルティータ全集、6枚組。パルティータはその作品の性格上、全曲聴いて初めてその価値が理解できるので、
当然こういう全集ものとしてリリースされる。ただ1度に全曲聴こうとするとさすがに途中で飽きるので、いつも小分けにして聴く。





マリア・グリンベルクのベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集、13枚組。ロシアの録音史上初めて作られたベートーヴェンの全集で、
演奏も最高に素晴らしいので何も問題ないのだが、13枚を一気に聴くなど不可能。長いスパンをかけて、ボチボチ聴くのが当たり前。





ギルバート・シュフターのシューベルトのピアノ曲全集で15枚組。ここまでくるともはや百科事典で、こんなものを買ってわざわざ聴くのは
相当物好きな変わり者だけだろう。かく言う私もまだ5合目を超えたあたりで、こちらもボチボチと聴いている。


これらのレコードはすべて箱から出して、白ジャケに入れて簡単に取り出せるようにしてある。年代物の箱は触ると今にも崩壊して
しまいそうなので、空箱の状態でラックの中で静かに保管されている。こうしておけば億劫になることなく、気軽に聴くことができる。

こんなことが楽しいのだが、一般的には理解しては貰えない。だから、普段は誰にもこんな話はしない。
こうしてコソコソとブログに書いて、同好の士にだけ「うんうん」とうなずいてもらえればそれでいいのである。


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芸術性を感じるジャズ

2021年03月20日 | Jazz LP (Savoy)

Curtis Fuller / Blues-stte  ( 米 Savoy MG 12141 )


猟盤は変わらず不調で、完全にネタ切れである。しかたがないので手持ちのレコードを細々と聴く日々が続いている。
でも、さすがにどれも耳タコ状態で、もはや新鮮な感想など湧いてくることもないが、ブログを放置するのも何なのでいまさら盤を取り上げる。

間違いなく素晴らしい作品で、非の打ちようがない。メロデイアスで、仄暗いムードで、ハード・バップ芸術の頂点にあるアルバムだろう。
ゴルソン・ハーモニーの究極形が聴けるし、フラナガンのピアノの良さが際立っているし、素晴らしいところは無数にあるが、
そういう個々の要素を超えた全体のあまりに完璧な形が芸術として成立しているのが素晴らしい。芸術性を感じるジャズなのだ。

RVGカッティングの音も完璧だし、未だに何なのかよくわからないジャケット・デザインも見慣れればそれなりに愛着も湧いてくるし、
モノ作りとしての出来も申し分ない。

有名な2曲以外も出来が良くて、私はB面トップの "Minor Vamp" が好きで、いつもB面から聴く。テーマ部がカッコいいのだ。
収録された楽曲がどれも魅力的だし、演奏も高度で圧倒される。

そんな訳で長く聴き続けてきたアルバムだが、唯一の問題は聴き過ぎてしまったことによる新鮮味の無さ。
もう現時点では聴いてもよく知っているその素晴らしさをただ確認するだけの作業になり、アルバムには何の罪もないにもかかわらず、
良さよりもつまらなさが先に立ってしまう。いまさらの名盤の宿命だが、そこがなんともやりきれなく、複雑な気持ちにさせられる。


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グレン・グールドの原風景

2021年03月14日 | Classical

Rosalyn Tureck / Goldberg Variations  ( 米 Allegro ALG 3033 )


グレン・グールドが影響を受けた唯一のピアニストが、このロザリン・テューレック。グールドは若い頃はホロヴィッツに憧れて
あの正確無比なテクニックを身につけるべく練習に励んだが、バッハの演奏はこのテューレックをお手本にして発展させた。

テューレックは録音が少なく、公式録音はバッハしか残していないし、アメリカのピアニストということもあって、ドイツを中心とする
ヨーロッパが本場であるクシックの世界では亜流扱いで誰も見向きすらしない存在だったが、グールドが唯一影響を受けたことを公言したことで、
後年になって見直されることになった。そのせいで晩年になって録音をせがまれて残した演奏もあるが、さすがに衰えを感じさせる内容で、
聴いていて痛々しい。

ゴルトベルク変奏曲は各楽章を繰り返して演奏するのが一応正しいスタイルだが、グールドが繰り返しを省略して演奏したので、
その後は省略するスタイルの方が主流となり、大抵はレコード1枚に収まるようになった。でも、グールドの原点であるテューレックは
繰り返すスタイルで、このレコードは2枚組で箱に入れられている。録音は1947年とも1952年とも言われてるが、どちらが正しいのかは
よくわからない。彼女は1958年に英国HMVへ2度目の録音をしており、一般的にはそちらが彼女の演奏の代名詞になっているけれど、
レコードとしてはこちらの方がはるかに稀少だ。

彼女の演奏の特徴は聴けばすぐわかる通り、その異様なテンポの遅さにある。曲としての外形を崩すことを厭わず、語りかけるかのような
演奏に終始する。とても正当な解釈とは言えず、あまり相手にされなかったのは当然と言えば当然だが、グールドはここにこの曲の真髄を見た。
デビュー時の第1回目の演奏は流れるようなレガートで速いスピードで演奏したものの、最後の第2回目の録音は明らかにこのテューレックを
下敷きにしている。随所にまるでグールドによってコピーされたかのような、彼そっくりの演奏が出てくる。
この古いレコードの中には、謎めいたグレン・グールドという天才の原風景が残されているのがわかる。

このレコードはLP初期のアメリカでの製造なのでオートチェンジャー仕様になっていて、A面の裏がD面、B面の裏がC面という、
聴くには甚だ迷惑な作りになっているし、箱物だから取り扱いも厄介で、且つそもそも演奏が長いからすべてを聴くのに時間がかかる。
この面倒臭さを我慢してでもこういう古いレコードを敢えて聴くのだから、レコードマニアというのはやはり変わった生き物なのだ。


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レコードはどこへ行った?

2021年03月07日 | Jazz LP (国内盤)

Harold "Shorty" Baker, Doc Cheatham / Talk That Talk  ( 日本ビクター SMJ-7579 )


みなさん、レコード拾えてます?

私は全然ダメ。2月に拾ったのは、ワン・コインのこのレコードたった1枚だけ。こんなことは、前代未聞の出来事かもしれない。
これは、というレコードが本当にない。

定期的に「新入荷」としてエサ箱には出ているようだけど、ホントに新入荷なの?と疑うような感じじゃないだろうか。
高額盤から安レコに至るまで、本当にスカスカな状態。一体、レコードはどこに行ったのだろう?

ユニオンの店舗も元気がない感じがしません? 店員さんは元気なのだが、並んでる商品に元気がない。ムンムンと唸るような圧がない。
お宝が埋まっているエサ箱からは怪し気な妖気が漂うものだが(と言っても、そんなものが見えるのは一部のヘンタイだけだろうけど)、
最近は焚き火が終わって時間が経った後の、寒々しく冷えた木炭の山のような雰囲気しか感じられない。

しかたがないから海外発注するんだけど、それらはすべてクラシックで、例年なら2週間ほどで届く荷物も今は1ヵ月くらいかかって、
月末にまとめてドサッと配達される始末。おそらく海外の郵便事情は働き方が制限されていて、一定期間分を纏めて処理しているみたいだ。
国によっては送料が高くて割高な買い物になっているので、あまり満足感は高くないんだけど、背に腹は代えられない。
それらを1ヵ月かけてボチボチと聴いている日々なので、ブログの筆もすっかり鈍ってしまっている。


閑話休題。
このレコードは Swingville が原盤でRVG録音だけど、このビクター盤もとてもいい。自然なステレオ感で、音に艶があり、輝いている。
シンプルで穏やかな演奏が心に染みる、大人の音楽。どうも原盤には触手が伸びず、こちらを探していたので、まあよかった。


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