Charlie Mariano / A Portrait Of Charlie Mariano ( 米 Regina Records LPRS-286 )
ラージ・アンサンブルやストリングスをバックに朗々と吹く、というのはアルト奏者にとっては1つのステータス若しくは憧れだったのかもしれない。
パーカーが確立したこのスタイルを踏襲した人は多く、アート・ペッパー、ポール・デスモンドやフィル・ウッズもやったが、このマリアーノも例外
ではなかった。レコーディングには金がかかるので誰でもやらせてもらえる訳ではなく、エスタブリッシュメントにしか叶わないアルバムだが、
その割には一般的に人気がない。
マリアーノは最高のトーンで自由自在に歌っていて、素晴らしい。単なるスタンダード集ではなく自作も持ち込み、音楽的な深みを出している。
ドン・セベスキーのスコアも甘さは排除されていて引き締まっており、アルトを邪魔しない。ジャケットの印象からくる抽象性のようなものもなく、
音楽全体が親しみやすく、最後まで飽きずに聴くことができる。
マリアーノの良さはアルトの見本のような適度の甘さとよく抜けるビッグ・トーンで優し気でなめらかなフレーズを紡いていくところだと思うけど、
このアルバムではその美点がそのまま反映されていて、素晴らしい出来だ。ワンホーン・カルテットなんかだと気を抜くと単調になりがちだが、
この作品は構成要素がそれなりに多く複雑でもあるので、そういう背景の中では彼の美質はより際立ってくる。タイトルの「チャーリー・マリ
アーノの肖像」というのはこのアルバムの内容を上手く表していると思う。
モノラルプレスも同時リリースされているが、このアルバムはステレオプレスが圧倒する。楽器の艶やかさや音場感の拡がりがひと味違う。