Jimmy Hamilton / Clarinet In High Fi ( 米 Urania UJLP 1208 )
高名なエリントニアン達がたくさんのソロ作品を残したことを思えば、ジミー・ハミルトンの作品数は少ないかもしれない。 でもそれは彼の評価が低かったから
ということでは当然なく、バップ期以降のクラリネットという楽器の一般的な需要の低さが影響している。 パーカーの出現でバップ期におけるサックスの地位は
不動のものになり、クラリネットは片隅に追いやられた。 管楽器の演奏を習得する場合はまずクラリネットから始めるのがいいというのが教育上の定説だったので、
パーカーも高校時代に最初に手にしたのはクラリネットだったけれど、サックスに持ち帰ることで彼は "バード" になった。
ジミー・ハミルトンのクラリネットの音色はマイルドで哀感がこもっている感じで、例えば先輩のバーニー・ビガードのスーパー・プレイと比べるともっと身近で
親しみやすい。 だから、こういう小編成での音楽には非常に上手く馴染むように思う。
ウラニアのこのアルバムは2つのセッションから成っていて、1つはジミー・ウッドとサム・ウッドヤードがバックのワンホーン、もう1つはラッキー・トンプソンや
アーニー・ロイヤルらウラニアお抱えのメンバーと演った多管編成。 どちらも穏やかな表情の上質なスイング系の好セッションで、聴いているとその心地よさに
時間が経つのを忘れてしまう。 ラッキー・トンプソンとアーニー・ロイヤルは一切出しゃばらず、ハミルトンの引き立て役に徹しているのが何とも立派。
堅牢なリズム・セクションに支えられて、音楽は流れて行く。
ベイシー楽団のソリスト達のソロ作品はテンポのいい明るいものが多いのに対して、エリントニアンたちのソロ作品はゆったりとした雰囲気のものが多いような
気がするのは無理なこじ付けだろうか。 でも、何となく母体のオーケストラの特質がある程度ソロの方にも自然と反映されているような印象がある。
ハードバップはうるさくて耳障りに感じる気分の時に、こういう音楽の存在はありがたいと思うのだ。