Bobby Timmons / Little Barefoot Soul ( 米 Prestige PR 7335 )
4カ月振りにHMV新宿に行ったら、ジャズの売り場面積が半分に縮小されて、在庫も1/3くらいになっていた。 新着品もすべて3ケタの国内盤ばかり。
フロア全体の大きさは変わっていないので、その分別ジャンルが広くなったようだ。 予想はしていたとは言え、やはり目の当たりにするといささか
ショックである。 ここは遅かれ早かれ、ジャズからは撤退するのかもしれない。
ユニオンなんかを見ていても、やはり1番の稼ぎ頭はロックなんだろうと思う。 私のロックに関する知識は大学時代で完全に止まっているから、90年代
以降のシーンの状況などさっぱりわかっていないけれど、ロックの廃盤セールで幅を利かせているのはやっぱりビートルズを筆頭に60~80年代の黄金期の
もののような印象を受ける。 おなじみのメジャーアーティストでも帯付き国内盤にそこそこの値段が付いていてビックリさせられるけど、プレスされた
枚数がジャズなんかとはケタが違うからレコードそのものの稀少度では競えず、マトリクスやプロモや帯というところで差別化を図っているみたいで、
これはこれでものすごく大変なんだろうと思う。
ジャズの廃盤セールに群がっているのは、そのほとんどが50~60代だ。 40代の人もいるだろうけど、数は少ない。 街のレコード屋でレコードを
買って聴いていた最後の世代だから当然この世代が中心になるだろうけど、彼らも数年後には年収が目に見えて下がり始めて、10年後には年金受給者
になる。 昨今のユニオンの廃盤セールの狂乱振りだけを見ていると感覚が麻痺してしまうけれど、それ以外のところではジワジワと先細りし始めて
いるのを肌身で感じる。
高額盤の何割かは外国人(特にアジア系)が買っている。 彼らの買い方はいわゆるブランド買い。 ブランド品ならなんでもいい。 アジア人が新宿で
壁に掛かっている6ケタ前後のブルーノートをすべて剥がして買っていくのを見た時には唖然としてしまった。 また、Jazz Tokyoなんかは特定の客には
店頭には出さずに直接売ったりもしている。 そういう客には高額盤でもセルフ試聴を許していて、まあやりたい放題だ。 平常時に私が安レコを
セルフ試聴している横で、その客は通常のプライスタグに6~8万円の値段が印字されたプレスティッジのレコードを10枚くらい束で持って試聴して、
根こそぎ買っていく。 ユニオンも上客を繋ぎ止めるためには手段を選ばないようだけど、この手のお得意さんの数も徐々に減っていくだろうし、
老舗専門店のご主人によると外国人の爆買いも年々減ってきているとのことだ。 この先どうなっていくか、愉しみ半分、心配半分だ。
連休にも関わらず客のいないガランとして縮小したHMVのジャズコーナーで拾ったボビー・ティモンズ。 リヴァーサイドのイメージが強いけれど、
プレスティッジ後期にもアルバムが残っている。 リヴァーサイド諸作はスタンダードを無難に弾いただけでどれも印象が薄いが、プレスティッジの
ほうは選曲や演奏がもっと黒っぽく、音楽がくっきりとしていて印象に残る。 ただ、どことなく寂し気な音楽だ。 特にセールスを期待していわけ
でもないだろうし、聴きたい人だけに聴いてもらえればそれいいよ、という雰囲気があって何だか切ない内容だった。