Bill Evans / At The Montreux Festival ( 英 Verve VLP 6243 )
"お城のモントルー" の英国モノラル盤が転がっていたので拾ってきた。 このレコードのオリジナルはUSステレオ盤でモノラルは存在せず、モノラル盤が
あるのは英国プレスのみ、というのはマニアの常識となっている。
私は常々このUSオリジナルは音が悪いと思っていた。 ステレオと言っても音響的な意味でのステレオ感はまったく無く、全体的に音が素な感じがする。
疑似ステレオというほどの人為的な感じはないけれど、各音のまとまりが無くて各楽器の位置関係も悪く、そのせいか演奏にもまとまりが感じられない。
そもそも楽器の音に艶が無く、音が生気なく死んでいる。 そんな訳で、英国プレスのモノラル盤を見かけて聴いてみようという気になったのだ。
案の定、モノラル盤はUSステレオとは違う種類の音が出てくる。 1番の違いは楽器の音の艶で、これは明らかにモノラルのほうが音の艶がいい。
楽器の音が非常にクッキリとしているので、演奏の細部までよく聴こえるし、その結果として演奏の全容がより理解し易くなっている。 "Enbraceable You"
でのエヴァンスとゴメスの対話と絡み方が生々しく、ああ、こういう演奏をしていたのか、というのが初めてわかったような気がした。
また、3つの楽器の位置関係もこのモノラル盤のほうが良くて、例えばゴメスはエヴァンスのすぐ隣の向こう側にいて、エヴァンス越しにベースの音が
まっすぐに聴こえてくる。 ステレオ盤ではこういう聴こえ方はしない。 今まではさほどいい演奏だとは思えなかったこの作品の本当の姿が
ここでようやく見えたような気がした。 今更ではあるが、やはり名演だったのだ。
これはステレオとモノラルのどちらが音がいいか、というような短絡的な話ではない。 想像するに、このオリジナルマスターはモノラル録音だった
のではないだろうか。 そう考えるのは、単純にモノラル盤のほうがより自然な定位感と音場感だからだ。 このライヴ演奏を録音したのはスイスの
ラジオ局のテクニカル部門だから、モノラル録音をしていた可能性はあるだろう。
ただ、これも的外れな想像かもしれない。 このアルバムはまだ他に英国ステレオプレスやドイツのステレオプレスも同時期に出されていて、
それらを聴くとまた違う所感を得ることになるのかもしれないが、私にはそこまで首を突っ込む気はない。 ここから先は別の人に任せようと思う。
この記事を拝読してから6年くらいでようやく入手しました。あっけなく安価で。慌てずゆっくりが良かったかもです。
聴いてみると、欧州盤全体の特長そのもので、雑味がない、透明度が高い自然な音ですね。それで音圧があるのが嬉しい。
Blogで教授頂いて深謝申し上げます。
ついに、ですね。欲しいレコードは長い目でみれば、大抵の物は手に入ります。
欧州ジャズは好きにはなれませんが、欧州プレスは質のいいのがあって、安ければ買うのもいいと思います。
このタイトルは特にUS盤の音がダメなので、英国盤モノがいいと思います。