報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「愛原の記憶」

2025-02-02 17:26:45 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月1日23時00分 天候:曇 群馬県吾妻郡東吾妻町某所 ペンション『いたち草』地下3階]

 ペンションの地下3階は書庫や資料室になっていた。
 中は案外広い。
 埃っぽいが、朽ち果てているわけではないから、今でも使われているのだろうか?

 愛原「クリーチャーやBOWはいそうかな?」
 リサ「うーん……そんな感じはしないねぇ……」

 資料室程度だと、そんなものは保管されていないか。

 愛原「ん?」

 本棚と本棚の間には、映像資料も保管されていて、それが閲覧できるようになっていた。
 DVDプレイヤーとモニターとヘッドホンが置かれている。

 愛原「『バイオハザードリベレーションズ』?何だこれ?」

 私はこのDVDを再生してみた。
 するとそれは、2004年に地中海で起きたテラグリジアパニックの真相を映した動画が入っていた。
 即ち、実行犯たる宗教テロ組織ヤング・ホーク団……もとい、ヴェルトロのボス(ジャック・ノーマン)と、それを依頼したFBCの長官(モルガン・ランズディール)の闇取引の隠し撮り映像だった。
 彼らは英語で喋っているが、編集済みなのか、ご丁寧に日本語の字幕がついている。

 ジャック「……して、散布手段は?」
 モルガン「用意した偽装客船にUAVを積んでおいた。散布に使えるだろう」
 ジャック「いいだろう。では、ブツを見せてもらおうか?」

 モルガン、ジュラルミンケースを粗末な木製テーブルの上に置き、ジャックに向けてそれを開く。
 中には紫色をしたガラス製の大きなアンプルが数本入っていた。

 モルガン「Tアビスだ。ワクチンは無い。まだな」
 ジャック「まあ、そうだろう。これだけの量で町1つをひっくり返せるというわけだ」
 モルガン「話は済んだ。帰らせてもらうよ」
 ジャック「……誰も想像付かないだろうな?我々、忌むべきテロリストに力を与えたのが、親愛なるFBCの長官殿であるとは……」

 ここで映像は終わっている。

 愛原「へえ……。これ、デイライトさんの資料映像で観たことあるけど、やっぱりアンブレラが関わっていたのか」

 もっとも、アメリカ本体のアンブレラはその時点で倒産している。
 独立採算制で設立された日本法人、日本アンブレラ製薬だけが、その後何年かしぶとく生き残ったわけだ。

 愛原「こういう資料映像が他にもあるかもしれないな。それも、まだデイライトさんが持っていないようなヤツ」
 リサ「そうだね」
 愛原「よし、手分けして探そう。ホテル並みに広いペンションの地下だから、ここも割と広い。迷子にならないようにな?」
 リサ「うん」

 私とリサは手分けして、貴重な映像を探した。
 デイライトやBSAAから見せられたことのない映像が手に入れば万々歳だ。
 他にも資料とか……。
 ……因みに、私が個人的に探しているものがある。
 それは、長野県の屋敷を訪れた時に起こった記憶障害。
 アンブレラなどの組織は、逐一映像に残しているようだから、私の身に何が起こったのかも分かれば良いと思ったのだ。

 愛原「うん?」

 エレベーターは地下3階まで下りたが、どうやら資料室は2艘構造構造になっているようだった。
 階段が中央にあり、それを昇ると、また本棚が並んでいたからだ。
 ここは地下2階、あるいは地下中3階(エレベーターの表示的には、『MB3』と表記されるフロア)なのだろう。
 そこは照明が点いていなかったが、階段を昇った先に、先ほどエレベーターの横にあったのと同じレバーがあったので、それを操作してみた。
 すると、ここも照明が点いた。

 愛原「本当に、結構広いんだなぁ……」

 私が首を傾げていると、ある物を見つけた。
 それは1本のVHSテープ。
 DVDに焼かれているだけではなく、VHSそのままのヤツもあるのだ。

 愛原「ん!?」

 拾って見てみると、ラベルの所には、『長野 白馬 探偵A』と書かれていた。
 こ、これはもしかして……!?
 私はすぐに近くのモニターに移動した。
 幸いそこにはDVDデッキだけではなく、VHSデッキもある。
 それを再生してみた。

 愛原「ああっ!?」

 その映像は正しく、私が昔、訪れた長野県白馬村の屋敷であった。
 視点は……あの執事か!?

 愛原「あ、あの……私は……」

 玄関の向こう側から、若かりし頃(今から15年くらい前)の私が入って来る。

 愛原「ぱ、『パンツ穿かせてください』!」
 執事「どうぞ。中で御主人様がお待ちです」

 あの執事の声がした。
 どうやら執事がカメラを回しているらしい。
 しかし、私の記憶では執事はカメラは持っていなかったはずだ。
 恐らく、着ていたタキシードの中に小型カメラを隠し持っていたのだろう。
 屋敷内はこのペンションよりも更に薄暗かったし、執事が着ていたタキシードも黒かったので、黒いレンズのカメラには気づかなかったのだ。

 愛原「『あなたと一緒に食事がしたいな』」

 執事の後ろを付いて行く過去の私が、要所要所で暗号を執事に伝える。
 そして、過去の私が主人の部屋の前に着く。
 ここで私は、『ありがとう』と礼を言って、執事の頬にキスをするはずだ。
 もちろん妙な趣味があってやったわけではなく、これも暗号の1つである。
 そうしてやっと主人の部屋に入ろうとした時、中から叫び声がして、主人の部屋に飛び込んだら……そこで私の記憶が途切れているのだ。
 私が知りたいのは、記憶が途切れている間、何があったのかだ。
 ところが!!

 愛原「ん!?え?え?え?」

 画面を観ている私は狼狽した。
 何故なら、画面の中の過去の私は、今の私の記憶と違う行動をしたからだ。
 画面の中の私は、普通に主人の部屋をノックした。
 すると!

 執事「ノックと言えば、横山ノック~~~~~!!」

 執事がタキシードの中から警戒棒のようなものを取り出すと、それで私の頭を殴り付けた。
 いきなり後ろから殴られた過去の私は、抵抗する間も無く、後頭部から血を噴き出し、主人の部屋のドアに叩きつけられるかのように倒れ、そのまま動かなくなった。

 愛原「!?!?!?」

 私は何が何だか分からなくなった。
 記憶と違うぞ!?
 どういうことだ!?
 映像に映る来客は、私で間違いない。
 40年以上付き合った自分の顔を忘れるわけがない。
 私が茫然としていると、主人の部屋のドアが開いた。

 白井「またサンプルが見つかったようだな」

 何と、それは白井伝三郎!
 五十嵐皓貴元社長ではなかった!

 執事「ははっ!」
 白井「いつもの通り、例の場所へ運んでおけ」
 執事「ははっ!大沢警備長!」
 大沢「はっ!」

 どこからともなく、警備服を着た守衛が2人ほど現れて、倒れた私を担架に乗せて運んで行った。

 執事「……このようなこと、群馬の兄には到底言えませぬ」
 白井「悪かったな。だが、この仕事は今夜で最後だ。上野博士の居場所が見つかったからな」
 執事「何と……!」
 白井「私は私で明日、ここを発つ。社長にそう伝えておけ」
 執事「かしこまりました。白井本部長」

 ここで映像は終わっている。

 愛原「…………」

 私は……一体何をされたんだ???
 と、とにかく、このテープは頂いていこう。
 とんでもない証拠品だ。

 愛原「そ、そうだ。リサは……?」

 私はヨロヨロと椅子から立ち上がると、リサを探すことにした。

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