[10月8日10:00.天候:晴 埼玉県さいたま市西区 DCJロボット未来科学館]
敷島:「すまないな、アリス。休日返上でルカを修理してくれて……」
アリス:「後で休日料金は頂くからね」
敷島:「そこはKR団に請求してくれよ」
アリス:「ところで例のフランケンだけど、チェーンソーでも装備しているの?」
敷島:「えっ、何で?」
アリス:「まるで刃物で切ったかのように、スッパリ切れていたよ」
敷島:「フランケンがバカ力で引きちぎったんじゃないのか!?」
アリス:「切り口がきれいだもの。刃物で切ったとしか思えない。ルカにそんなことができるのは、チェーンソーとか油圧カッターとか……」
敷島:「うーむ……。元々は人型の工作機械ロボットとして開発されたヤツだって話だからな、もしかしたらそんなものが付いていたのかも……。ルカのメモリーはどうだ?チップは警察に提供してしまったが、大元のサーバーには残ってるだろ?」
アリス:「ダメだね。フランケンに組み付かれた時に、バッテリーが破壊されたせいで、そこで映像が止まってる」
敷島:「そうか……」
アリス:「それに、ルカの体の使用期限があと1年になっていたでしょう?このまま修理するより、まだ製造途中の新しいボディを急いで完成させて、そのままその体に移行させるっていう方が安くて早いかもしれない」
敷島:「おっ、その手があったか。じゃあ、それで行こう」
敷島とシンディは、研究室の中で上半身だけの状態になっているルカと面会した。
ルカ:「社長。ご迷惑をお掛けして、申し訳ありません……」
敷島:「お前は悪くない。悪いのはフランケンと、それを使っている人間達だ。お前は何も気に病むことは無いぞ」
ルカ:「私の体はどうなるのでしょうか?」
敷島:「アリス達が今、新しい体を作っている最中だ。それを使えるようにしてやるぞ」
もちろん、設計は今までと全く同じ。
部品交換だけでは追いつかなくなる為、ロイドにはそれぞれボディの使用期限が決められている。
ルカ:「ありがとうございます。また私、皆さんに歌を聴いてもらいたいです」
敷島:「うん。仕事の方は心配しなくていいぞ。怒りの矛先は全て、フランケンとその一味に向けられている。俺達も手をこまねいていないで、早いとこ捕まえてやるさ」
シンディ:「手土産にフランケンの部品をここに持ってきてやるから安心しな」
ルカ:「は、はあ……。(いらなーい……)」
[10月9日15:05.天候:晴 JR東京駅]
敷島と井辺はJR東京駅にいた。
敷島:「いいのかい?キミまで巻き込まれる必要は無いんだよ?」
井辺:「いえ、社長。私も敷島エージェンシーの社員として、ルカさんを破壊された憤りがありますので。ご協力致します」
敷島:「そうか」
井辺は大きなキャリーケースを引いていた。
まるで海外に長期出張で行くような感じの大きさだ。
記者:「敷島社長!今から仙台へ向かわれるのですか?」
敷島:「ええ、そうですよ。一刻も早く、ルカをファンの皆さんの前に復活させたいですからね。その為には平賀先生の協力無しには叶いません」
記者:「その鞄の中に、昨日仰っていたモノが入ってるんですね?」
敷島:「ええ。何しろ平賀先生は私の旧友とはいえ、今や世界的なロボット科学者です。その彼に頼むわけですから、安い金額にするわけにはいきませんよ」
敷島は得意げに語った。
井辺:「申し訳ありませんが、そろそろ新幹線の時間ですので……」
敷島:「おっ、そうだな。じゃあ、すいませんけど、この辺で」
記者:「防犯対策とかは大丈夫なんですか、そんな大金を……」
敷島:「大丈夫、大丈夫です」
一体、何なのだろうか。
敷島達は改札口を通って、東北新幹線乗り場に向かった。
途中でスポーツ新聞を購入する。
〔21番線に停車中の電車は、15時20分発、“はやぶさ”25号、新函館北斗行きと“こまち”25号、秋田行きです。グランクラスは10号車、グリーン車は9号車と11号車です。……〕
敷島達は9号車のグリーン車の列に並んだ。
そして、買った新聞を広げる。
そこにはまたもやフランケンが宝石店を襲撃し、宝石を根こそぎ奪い取っていった事件が報道されていた。
そして、それ絡みとして、敷島がバッグを持って得意げに語る写真と記事が掲載されている。
『巡音ルカの修理に5千万円?!』『敷島社長、自ら現金を携え東北工科大へ!』『平賀太一教授へ修理依頼か?』
井辺:「大丈夫ですか、社長?こんなに大々的に宣伝してしまって……」
敷島:「ああ。大丈夫だ。これだけ宣伝しておけば、KR団がフランケンを派遣してくるだろう」
井辺:「周りの人達が巻き込まれる恐れが……」
敷島:「いや、それが意外と大丈夫っぽい。今までのフランケンが起こした事件を見ると、ルカみたいなロイドやロボットは壊されているが、意外と人間には危害が加えられていない。もしかしたら、純粋にただ命令を守っているだけなのかもしれないな」
井辺:「そういうものですかね」
敷島:「もっとも、今回はどうかは分からない。もしヤツが現れたら、キミは真っ先に避難するんだ。いいな?」
井辺:「その時は社長も御一緒に。敷島エージェンシーは社長がいないと動かせません」
敷島:「シンディに任せてからだな。平賀先生には『エミリーを無償で貸す』とか言ってくれてるが、もしかしたら、フランケンは東北工科大に現れるかもしれない。その時、エミリーがいた方がいいから断った」
井辺:「なるほど……」
[同日同時刻 天候:晴 都内のとあるイベント会場]
KAITO:「僕の腕と足は♪ジェットで空を飛べる♪アストロボーイ♪アストロボーイ♪マイティ・アトム♪」
鏡音レン:「僕の腰の中は♪マシンガンの光♪アストロボーイ♪アストロボーイ♪マイテイ・アトム♪」
KAITOと鏡音レンがアニメ“鉄腕アトム”第2期のEDを歌っている中、ステージの後ろでMEIKOが自分の担当マネージャーに話し掛ける。
MEIKO:「マネージャー、私達は“鉄腕アトム”関係の歌歌っていいの?」
マネージャー:「社長の話では初音ミクだけがダメらしい。それも、全部の歌がダメってわけじゃない。例のあの歌だけがダメらしいんだ」
MEIKO:「そうなの」
鏡音リン:「リンも10万馬力欲しいなー」
MEIKO:「ボーカロイドには必要無いでしょ」
マネージャー:「関係各所との取り決めで、ボーカロイドには一切の武力を持たせないことになっているからな。それより、そろそろ社長達を乗せた新幹線が動く頃だ」
初音ミク:「そうですね。たかお社長達……心配です」
MEIKO:「大丈夫だよ。社長とプロデューサーは絶対に成功してくるさ。必ずルカの仇を取ってくれるよ」
マネージャー:「あのー、ルカさんは生きてますけど……」
KAITO&鏡音レン:「……未来の為に♪戦うぞ♪さあ♪皆で行こうよォ〜♪」
歓声が沸き起こる会場。
ボーカロイド達は着実にファンを増やし続けている。
その性能を最大限に生かし、また、それを売り上げに繋げている敷島エージェンシーであった。
まもなく、戦いの火ぶたが切って落とされようとしている。
敷島:「すまないな、アリス。休日返上でルカを修理してくれて……」
アリス:「後で休日料金は頂くからね」
敷島:「そこはKR団に請求してくれよ」
アリス:「ところで例のフランケンだけど、チェーンソーでも装備しているの?」
敷島:「えっ、何で?」
アリス:「まるで刃物で切ったかのように、スッパリ切れていたよ」
敷島:「フランケンがバカ力で引きちぎったんじゃないのか!?」
アリス:「切り口がきれいだもの。刃物で切ったとしか思えない。ルカにそんなことができるのは、チェーンソーとか油圧カッターとか……」
敷島:「うーむ……。元々は人型の工作機械ロボットとして開発されたヤツだって話だからな、もしかしたらそんなものが付いていたのかも……。ルカのメモリーはどうだ?チップは警察に提供してしまったが、大元のサーバーには残ってるだろ?」
アリス:「ダメだね。フランケンに組み付かれた時に、バッテリーが破壊されたせいで、そこで映像が止まってる」
敷島:「そうか……」
アリス:「それに、ルカの体の使用期限があと1年になっていたでしょう?このまま修理するより、まだ製造途中の新しいボディを急いで完成させて、そのままその体に移行させるっていう方が安くて早いかもしれない」
敷島:「おっ、その手があったか。じゃあ、それで行こう」
敷島とシンディは、研究室の中で上半身だけの状態になっているルカと面会した。
ルカ:「社長。ご迷惑をお掛けして、申し訳ありません……」
敷島:「お前は悪くない。悪いのはフランケンと、それを使っている人間達だ。お前は何も気に病むことは無いぞ」
ルカ:「私の体はどうなるのでしょうか?」
敷島:「アリス達が今、新しい体を作っている最中だ。それを使えるようにしてやるぞ」
もちろん、設計は今までと全く同じ。
部品交換だけでは追いつかなくなる為、ロイドにはそれぞれボディの使用期限が決められている。
ルカ:「ありがとうございます。また私、皆さんに歌を聴いてもらいたいです」
敷島:「うん。仕事の方は心配しなくていいぞ。怒りの矛先は全て、フランケンとその一味に向けられている。俺達も手をこまねいていないで、早いとこ捕まえてやるさ」
シンディ:「手土産にフランケンの部品をここに持ってきてやるから安心しな」
ルカ:「は、はあ……。(いらなーい……)」
[10月9日15:05.天候:晴 JR東京駅]
敷島と井辺はJR東京駅にいた。
敷島:「いいのかい?キミまで巻き込まれる必要は無いんだよ?」
井辺:「いえ、社長。私も敷島エージェンシーの社員として、ルカさんを破壊された憤りがありますので。ご協力致します」
敷島:「そうか」
井辺は大きなキャリーケースを引いていた。
まるで海外に長期出張で行くような感じの大きさだ。
記者:「敷島社長!今から仙台へ向かわれるのですか?」
敷島:「ええ、そうですよ。一刻も早く、ルカをファンの皆さんの前に復活させたいですからね。その為には平賀先生の協力無しには叶いません」
記者:「その鞄の中に、昨日仰っていたモノが入ってるんですね?」
敷島:「ええ。何しろ平賀先生は私の旧友とはいえ、今や世界的なロボット科学者です。その彼に頼むわけですから、安い金額にするわけにはいきませんよ」
敷島は得意げに語った。
井辺:「申し訳ありませんが、そろそろ新幹線の時間ですので……」
敷島:「おっ、そうだな。じゃあ、すいませんけど、この辺で」
記者:「防犯対策とかは大丈夫なんですか、そんな大金を……」
敷島:「大丈夫、大丈夫です」
一体、何なのだろうか。
敷島達は改札口を通って、東北新幹線乗り場に向かった。
途中でスポーツ新聞を購入する。
〔21番線に停車中の電車は、15時20分発、“はやぶさ”25号、新函館北斗行きと“こまち”25号、秋田行きです。グランクラスは10号車、グリーン車は9号車と11号車です。……〕
敷島達は9号車のグリーン車の列に並んだ。
そして、買った新聞を広げる。
そこにはまたもやフランケンが宝石店を襲撃し、宝石を根こそぎ奪い取っていった事件が報道されていた。
そして、それ絡みとして、敷島がバッグを持って得意げに語る写真と記事が掲載されている。
『巡音ルカの修理に5千万円?!』『敷島社長、自ら現金を携え東北工科大へ!』『平賀太一教授へ修理依頼か?』
井辺:「大丈夫ですか、社長?こんなに大々的に宣伝してしまって……」
敷島:「ああ。大丈夫だ。これだけ宣伝しておけば、KR団がフランケンを派遣してくるだろう」
井辺:「周りの人達が巻き込まれる恐れが……」
敷島:「いや、それが意外と大丈夫っぽい。今までのフランケンが起こした事件を見ると、ルカみたいなロイドやロボットは壊されているが、意外と人間には危害が加えられていない。もしかしたら、純粋にただ命令を守っているだけなのかもしれないな」
井辺:「そういうものですかね」
敷島:「もっとも、今回はどうかは分からない。もしヤツが現れたら、キミは真っ先に避難するんだ。いいな?」
井辺:「その時は社長も御一緒に。敷島エージェンシーは社長がいないと動かせません」
敷島:「シンディに任せてからだな。平賀先生には『エミリーを無償で貸す』とか言ってくれてるが、もしかしたら、フランケンは東北工科大に現れるかもしれない。その時、エミリーがいた方がいいから断った」
井辺:「なるほど……」
[同日同時刻 天候:晴 都内のとあるイベント会場]
KAITO:「僕の腕と足は♪ジェットで空を飛べる♪アストロボーイ♪アストロボーイ♪マイティ・アトム♪」
鏡音レン:「僕の腰の中は♪マシンガンの光♪アストロボーイ♪アストロボーイ♪マイテイ・アトム♪」
KAITOと鏡音レンがアニメ“鉄腕アトム”第2期のEDを歌っている中、ステージの後ろでMEIKOが自分の担当マネージャーに話し掛ける。
MEIKO:「マネージャー、私達は“鉄腕アトム”関係の歌歌っていいの?」
マネージャー:「社長の話では初音ミクだけがダメらしい。それも、全部の歌がダメってわけじゃない。例のあの歌だけがダメらしいんだ」
MEIKO:「そうなの」
鏡音リン:「リンも10万馬力欲しいなー」
MEIKO:「ボーカロイドには必要無いでしょ」
マネージャー:「関係各所との取り決めで、ボーカロイドには一切の武力を持たせないことになっているからな。それより、そろそろ社長達を乗せた新幹線が動く頃だ」
初音ミク:「そうですね。たかお社長達……心配です」
MEIKO:「大丈夫だよ。社長とプロデューサーは絶対に成功してくるさ。必ずルカの仇を取ってくれるよ」
マネージャー:「あのー、ルカさんは生きてますけど……」
KAITO&鏡音レン:「……未来の為に♪戦うぞ♪さあ♪皆で行こうよォ〜♪」
歓声が沸き起こる会場。
ボーカロイド達は着実にファンを増やし続けている。
その性能を最大限に生かし、また、それを売り上げに繋げている敷島エージェンシーであった。
まもなく、戦いの火ぶたが切って落とされようとしている。