[10月22日20:30.天候:曇 アルカディアメトロ1番街駅]
〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく1番街、1番街です。お出口は、右側です。2号線ドワーフ・バレー方面、6号線直通電車、高架鉄道環状線、中央線、軌道線ターミナルはこちらでお降りください。本日、冥界鉄道公社による魔列車の運行はございません。詳しくは高架鉄道線の駅窓口でお尋ねください」〕
電車は3面6線の広い地下駅の真ん中のホームに滑り込んだ。
ここで電車を待つ乗客は多い。
ドアが開いて、稲生達は電車を降りた。
マリア:「バァル決戦の時は、停電して真っ暗な駅でしたけどね」
イリーナ:「平常時は賑わう駅なわけね」
この駅は人間界の駅並みに照明が明るい。
ここは魔界共和党の党本部も近く、魔族もそうだが人間の利用者も多いからであろう。
照明の薄暗い電車内との対比が大きい。
稲生:「僕が死んでいる時ですね?」
マリア:「そう」
イリーナ:「マリア、蘇生魔法に失敗した時はわんわん泣いてたもんね」
稲生:「えっ!?」
マリア:「そ、それは、その……!今度は完全蘇生魔法をマスターしますから!」
イリーナ:「おおっ!?大きく出ましたなぁ……。アタシでも修得が難しい魔法だよ?」
稲生:(ザオリクかな?メガンテやパルプンテもあるんだろうなぁ……)
駅の外に出ると雪は止んでいた。
積もってもいない所を見ると、すぐに止んだらしい。
だが相変わらず、日本の東京の冬といった感じの寒さではあった。
吐く息も白い。
常春の国なのに、冬が来るとは何とも不思議であった。
[10月22日20:45.天候:曇 魔王城新館]
さすがに城内は暖房が入っているのか、寒くはなかった。
横田:「横田です。先般の九州大会における大感動は、未だ冷めやらぬものであります」
マリア:「げ……!」
イリーナ:「あらあら?」
稲生:「ウソだよ!絶対に行ってないだろ!」
横田:「これはしたり。言葉に気をつけて頂きたい。今の私は魔界共和党総務担当理事ですよ?」
稲生:「だったら、最初の枕詞は何だ!」
横田:「それより、総理にお取り次ぎを致しますので、こちらで暫しお待ちをば」
横田は稲生達を応接室に通した。
イリーナは素直にソファに座ったが、マリアは立ったままだ。
イリーナ:「マリア、座らないの?」
マリア:「きっと座った所に盗撮カメラが仕掛けられていて、私のスカートの中が覗けるようになっているはずです。あの変態理事のことですから!」
イリーナ:「そんなことしなくても、もうあの理事は透視の異能があるみたいだけどね」
マリア:「ううっ……!」
マリアはスカートの裾を押さえて、覗かれないように警戒した。
横田:「クフフフフフフフ……。『服の上依り、内を見通す。是、法華経の極意也』と大聖人も仰せです」
稲生:「ウソだよ!そんなの聞いたことないよ!」
安倍:「すみません。うちの横田は相変わらずで……」
稲生:「安倍総理!」
安倍:「稲生さん、よくぞ来てくれました。ルーシーも大喜びです。夕食がまだでしょう?晩さん会をご用意しておりますので、もうしばらくお待ちください」
稲生:「は、はい!」
安倍:「それと……」
安倍はマリアに近づいた。
マリアはまだ稲生以外の男性に警戒心を持っているので、スッと離れる。
そして、さっきまでマリアが立っていた場所まで来るとしゃがんだ。
安倍:「横田ぁ〜!変態行為もいい加減にしろよ?」
横田:「な、なな……何のことでしょうか?わ、私はさっぱり……」
マリアが立っていた場所には、しっかり超小型のカメラレンズが床に仕掛けられていたのだった。
安倍:「すいませんでした。画像は後でちゃんと消させますので……」
マリア:「今消してください!さもないと勇太連れて帰りますよ!!」
マリアは色白の顔を真っ赤にして安倍に詰め寄った。
こんなことしても、何故かクビにならない横田であった。
[同日21:00.天候:曇 魔王城新館・ゲストルームエリア]
安倍:「先ほどは大変失礼致しました。もう横田には勝手なマネはさせませんので」
イリーナ:「そうしてもらいたいですね」
安倍:「ゲストルームにご案内致します。今夜はそちらでお寛ぎください」
稲生:「また、隠しカメラが仕掛けられていたりしませんか?」
安倍:「その心配はありませんよ。準備に当たりまして、魔王軍近衛兵隊が厳重警備を行いました。横田の出入りは一切ありませんでしたので」
稲生:「なるほど……。でも、共和党理事って高い地位なんでしょう?近衛兵隊がその下にあったりしたら……」
安倍:「いえ、近衛兵隊は魔王軍からも切り離された宮内省直轄の警備兵隊なんです。共和党本部からの権限の及ばない所にあります」
魔王軍からも切り離されているとはあるが、宰相の下には属しているらしい。
宰相、つまり首相だから安倍だ。
安倍:「こちらのお部屋です」
確かに部屋の入口には、近衛兵隊2人がビシッと立哨に当たっていた。
安倍達の姿を見つけると、青いブレザー調の上着に白ズボン姿をはき、青いドゴール帽を被った兵士達がビシッと敬礼してサッとドアの脇に避け、そのドアを開けた。
稲生:「スイートルームだ。一晩泊まるだけじゃ、もったいない」
稲生は素直な感想を漏らした。
安倍も笑みを浮かべて言う。
安倍:「稲生さんは今は国賓のようなものですから、一晩と言わず、何日でもゆっくりしてらして構わないんですよ」
イリーナ:「でもその分、提供する血の量は増えそうだけどね」
マリア:「一泊だけで立ち去らないと、血を搾り取られるぞ」
安倍:「はははは……。ルーシーはそんな器の小さい女王じゃありませんよ。吸血鬼として、最低限の吸血を行うだけですから。まもなく晩餐会が始まりますので、お荷物を置いたら、大食堂までご案内致します」
因みにスイートルームは、空間が1つだけではない。
何と、和室まであって、稲生は一瞬そこに寝ようかと思ったくらいである。
キングサイズのベッドで1人分らしいから、それが2つあったので、そこはイリーナとマリア用か。
稲生は和室の方に布団でも敷いて寝ようかと思ったわけである。
イリーナ:「じゃあ、荷物を置いて早く行こう。陛下もお待ちだよ」
稲生:「そうですね」
マリア:「……はい」
それでも隠しカメラなどが無いか気にするマリアだった。
それにしても、別に服装規定があるわけでもないのに、アナスタシア組のスーツ以外で下がスカート以外を着用している魔女はほとんどいない。
〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく1番街、1番街です。お出口は、右側です。2号線ドワーフ・バレー方面、6号線直通電車、高架鉄道環状線、中央線、軌道線ターミナルはこちらでお降りください。本日、冥界鉄道公社による魔列車の運行はございません。詳しくは高架鉄道線の駅窓口でお尋ねください」〕
電車は3面6線の広い地下駅の真ん中のホームに滑り込んだ。
ここで電車を待つ乗客は多い。
ドアが開いて、稲生達は電車を降りた。
マリア:「バァル決戦の時は、停電して真っ暗な駅でしたけどね」
イリーナ:「平常時は賑わう駅なわけね」
この駅は人間界の駅並みに照明が明るい。
ここは魔界共和党の党本部も近く、魔族もそうだが人間の利用者も多いからであろう。
照明の薄暗い電車内との対比が大きい。
稲生:「僕が死んでいる時ですね?」
マリア:「そう」
イリーナ:「マリア、蘇生魔法に失敗した時はわんわん泣いてたもんね」
稲生:「えっ!?」
マリア:「そ、それは、その……!今度は完全蘇生魔法をマスターしますから!」
イリーナ:「おおっ!?大きく出ましたなぁ……。アタシでも修得が難しい魔法だよ?」
稲生:(ザオリクかな?メガンテやパルプンテもあるんだろうなぁ……)
駅の外に出ると雪は止んでいた。
積もってもいない所を見ると、すぐに止んだらしい。
だが相変わらず、日本の東京の冬といった感じの寒さではあった。
吐く息も白い。
常春の国なのに、冬が来るとは何とも不思議であった。
[10月22日20:45.天候:曇 魔王城新館]
さすがに城内は暖房が入っているのか、寒くはなかった。
横田:「横田です。先般の九州大会における大感動は、未だ冷めやらぬものであります」
マリア:「げ……!」
イリーナ:「あらあら?」
稲生:「ウソだよ!絶対に行ってないだろ!」
横田:「これはしたり。言葉に気をつけて頂きたい。今の私は魔界共和党総務担当理事ですよ?」
稲生:「だったら、最初の枕詞は何だ!」
横田:「それより、総理にお取り次ぎを致しますので、こちらで暫しお待ちをば」
横田は稲生達を応接室に通した。
イリーナは素直にソファに座ったが、マリアは立ったままだ。
イリーナ:「マリア、座らないの?」
マリア:「きっと座った所に盗撮カメラが仕掛けられていて、私のスカートの中が覗けるようになっているはずです。あの変態理事のことですから!」
イリーナ:「そんなことしなくても、もうあの理事は透視の異能があるみたいだけどね」
マリア:「ううっ……!」
マリアはスカートの裾を押さえて、覗かれないように警戒した。
横田:「クフフフフフフフ……。『服の上依り、内を見通す。是、法華経の極意也』と大聖人も仰せです」
稲生:「ウソだよ!そんなの聞いたことないよ!」
安倍:「すみません。うちの横田は相変わらずで……」
稲生:「安倍総理!」
安倍:「稲生さん、よくぞ来てくれました。ルーシーも大喜びです。夕食がまだでしょう?晩さん会をご用意しておりますので、もうしばらくお待ちください」
稲生:「は、はい!」
安倍:「それと……」
安倍はマリアに近づいた。
マリアはまだ稲生以外の男性に警戒心を持っているので、スッと離れる。
そして、さっきまでマリアが立っていた場所まで来るとしゃがんだ。
安倍:「横田ぁ〜!変態行為もいい加減にしろよ?」
横田:「な、なな……何のことでしょうか?わ、私はさっぱり……」
マリアが立っていた場所には、しっかり超小型のカメラレンズが床に仕掛けられていたのだった。
安倍:「すいませんでした。画像は後でちゃんと消させますので……」
マリア:「今消してください!さもないと勇太連れて帰りますよ!!」
マリアは色白の顔を真っ赤にして安倍に詰め寄った。
こんなことしても、何故かクビにならない横田であった。
[同日21:00.天候:曇 魔王城新館・ゲストルームエリア]
安倍:「先ほどは大変失礼致しました。もう横田には勝手なマネはさせませんので」
イリーナ:「そうしてもらいたいですね」
安倍:「ゲストルームにご案内致します。今夜はそちらでお寛ぎください」
稲生:「また、隠しカメラが仕掛けられていたりしませんか?」
安倍:「その心配はありませんよ。準備に当たりまして、魔王軍近衛兵隊が厳重警備を行いました。横田の出入りは一切ありませんでしたので」
稲生:「なるほど……。でも、共和党理事って高い地位なんでしょう?近衛兵隊がその下にあったりしたら……」
安倍:「いえ、近衛兵隊は魔王軍からも切り離された宮内省直轄の警備兵隊なんです。共和党本部からの権限の及ばない所にあります」
魔王軍からも切り離されているとはあるが、宰相の下には属しているらしい。
宰相、つまり首相だから安倍だ。
安倍:「こちらのお部屋です」
確かに部屋の入口には、近衛兵隊2人がビシッと立哨に当たっていた。
安倍達の姿を見つけると、青いブレザー調の上着に白ズボン姿をはき、青いドゴール帽を被った兵士達がビシッと敬礼してサッとドアの脇に避け、そのドアを開けた。
稲生:「スイートルームだ。一晩泊まるだけじゃ、もったいない」
稲生は素直な感想を漏らした。
安倍も笑みを浮かべて言う。
安倍:「稲生さんは今は国賓のようなものですから、一晩と言わず、何日でもゆっくりしてらして構わないんですよ」
イリーナ:「でもその分、提供する血の量は増えそうだけどね」
マリア:「一泊だけで立ち去らないと、血を搾り取られるぞ」
安倍:「はははは……。ルーシーはそんな器の小さい女王じゃありませんよ。吸血鬼として、最低限の吸血を行うだけですから。まもなく晩餐会が始まりますので、お荷物を置いたら、大食堂までご案内致します」
因みにスイートルームは、空間が1つだけではない。
何と、和室まであって、稲生は一瞬そこに寝ようかと思ったくらいである。
キングサイズのベッドで1人分らしいから、それが2つあったので、そこはイリーナとマリア用か。
稲生は和室の方に布団でも敷いて寝ようかと思ったわけである。
イリーナ:「じゃあ、荷物を置いて早く行こう。陛下もお待ちだよ」
稲生:「そうですね」
マリア:「……はい」
それでも隠しカメラなどが無いか気にするマリアだった。
それにしても、別に服装規定があるわけでもないのに、アナスタシア組のスーツ以外で下がスカート以外を着用している魔女はほとんどいない。