報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「“はこね”30号」

2019-12-22 19:47:30 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[11月25日16:10.天候:晴 神奈川県足柄下郡箱根町 箱根湯本駅→小田急ロマンスカー“はこね”30号3号車内]

 温泉に入った稲生達は、今度はバスで再び箱根湯本駅に戻った。
 帰りのロマンスカーまで、駅前の商店街や駅の中の売店を覗いたりした。

 稲生:「帰りはロマンスカーに乗ろうと思います」

 稲生は魔女3人にそう言った。

 エレーナ:「おー、ロマンスカーか。稲生氏らしいプランだぜ」

 都内で仕事をしているエレーナだけは、その列車について知っていた。
 恐らく宿泊客からも、そういった話が出て来るのだろう。

 ルーシー:「新幹線じゃないの?」
 稲生:「残念ながらね。でも、新幹線とはまた違った面白い電車だよ」
 エレーナ:「展望席か?」
 稲生:「さすがにそれは無理だった」
 エレーナ:「……だよなぁ、いくら平日とはいえ」
 稲生:「その代わりに、コンパートメント席が取れた」
 エレーナ:「んん?」
 稲生:「キップは1人ずつ持とう」
 マリア:「了解」

 1番ホームに行くと、白い車体が目立つ50000形VSEが停車していた。

 稲生:「改めて見ると、東武スペーシアとはまた違った趣きだなぁ……」

 豪華性(個室や広いシートピッチ)を重視した東武スペーシアは、他の東武特急と同様、頑なに展望席を設けようとはしなかった。
 それに対し、小田急ロマンスカーでは展望席を復活させた。
 展望席を廃止した30000形EXEが主流になったらどうなったかは、【お察しください】。
 鬼怒川と箱根では、客層が違うのだろう。
 写真を撮るのは稲生だけではない。

 ルーシー:「稲生さん、この列車の最高速度は?」
 稲生:「車両の設計速度は130キロと、東武スペーシアと同じだよ。但し、営業速度は110キロと東武スペーシアよりも遅い」

 走行距離が東武スペーシアよりも短いからかもしれないし、東武スカイツリーラインより、小田急小田原線の方が混んでいるからというのもあるだろう。
 線形に問題は無いので、それが原因ではない(むしろ東武の方がよっぽど線形に問題がある)。

 エレーナ:「真正面から見たら、合体ロボの頭部みたいだな」
 稲生:「それは言えてる。戦隊ヒーローが話の終盤で乗り込んで敵と戦う……」

 その時、ルーシー以外のメンバーにケンショーレンジャーの思い出がフラッシュバックした。

 稲生:「……ま、この話はここまでしておこう」
 エレーナ:「了解だぜ」
 マリア:「激しく同意」
 ルーシー:「? 皆、どうしたの???」

 ケンショーレンジャーはゴレンジャーのインスパイア。
 当然、ケンショーレンジャーがショボい合体ロボで戦うシーンもあった。

 稲生:「いや、いいんだ、ルーシー。『知らぬが仏』っていう言葉がある」
 エレーナ:「……仏教徒が使う言葉じゃねーからな?」

〔「お待たせ致しました。1番ホームの特急“はこね”30号、新宿行き、まもなくドアが開きます」〕

 ドアが開いて乗客達が乗り込み始めた。
 稲生達もその中に続く。

 稲生:「ここだ、ここ」

 東武スペーシアみたいな完全な個室ではなく、通路とは座席の脇をガラスパーテーションで仕切っただけのボックスシートであった。
 但し、普通列車のそれと違ってシートピッチは広いし、真ん中に大きなテーブルもある。
 構造上、リクライニングはしない。

 稲生:「東武スペーシアほど高級な席ではないから、僕達が乗っても大丈夫だと思うよ」
 エレーナ:「ま、この程度ならな」

〔「ご案内致します。この電車は16時26分発、特急ロマンスカー“はこね”30号、新宿行きでございます。停車駅は小田原、本厚木、町田、新宿の順です。全ての車両が指定席です。お手持ちの特急券の座席番号をお確かめの上、指定の席にお掛けください。……」〕

 マリア:「ワゴンサービスがあるの?」
 稲生:「あるある。ありますとも。だから、アイスクリームも売ってます」

 稲生は荷棚の上に乗っている人形達の方をわざわざ見ながら言った。

 ミク人形:「アイス早よ!」
 ハク人形:「アイス早よ!」
 マリア:「因みにこの席って、他の席とは違って特別料金掛かったりしないの?」
 稲生:「しますよ。但し、1つからくりがありまして、4人で乗れば実質的に一般席と同じ料金になるよう設定されています。3人以下で乗ると割高ってことですね」
 エレーナ:「なるほど。そこはホテルとはまた違う売り方だぜ」
 稲生:「まあ、列車だからね」

[同日16:26.天候:晴 小田急ロマンスカー“はこね”30号3号車内]

 ホームから発車メロディが聞こえて来る。
 “箱根八里”をアレンジしたものだ。
 上りだとアップテンポにアレンジされている為、原曲を知らないと何の発車メロディだか分からないかもしれない。
 列車は定刻通りに発車した。
 停車していた1番線は本線ホームなのでポイントを渡ることもなく、そのまま本線に入る。
 どこの路線でもそうだろうが、やはり優等列車は運行上においても優遇されている。
 連接台車なので、床下から聞こえてくる車輪と線路のジョイント音が違う。
 車内放送は自動放送だが、車内チャイムが“ロマンスをもう一度”である。
 これは小田急ロマンスカーのCMソングだ。

 エレーナ:「山から下りるって感じだな」
 稲生:「小田原までが、本来の登山鉄道だからね」

 今、小田原〜箱根湯本間における電車は小田急の車両しか無い。
 この区間は利用者が多い為、箱根登山鉄道の路面電車に毛を生やしたような小さな車両では利用者を捌けないからである。

 稲生:「お土産、だいぶ買ったねぇ……」
 エレーナ:「先生へのお土産もあるぜ」
 ルーシー:「同じく」
 マリア:「師匠には健康枕とかでいいと思ったけど……」
 稲生:「あと、温泉饅頭とかね。うちの先生も、甘い物好きですから」
 マリア:「それもそうだね」
 ルーシー:「いいね、永住者は……」
 エレーナ:「お?だったらルーシーも永住者になったらどうだぜ?」
 ルーシー:「そう簡単に行くわけないでしょう……」

 ルーシーは溜め息をついた。
 ダンテが離日するのは明日。
 つまり、日本国籍を有している者や永住者達以外はダンテに付いて離日しなければならないのだ。

 ルーシー:「本当はもう少しいたいんだけど……」

 と、その時、ルーシーの水晶球が光った。
 師匠ベイカーからの着信である。
 ルーシーは水晶球を出すと、それを大きなテーブルの上に置いた。
 と、同時に今度は稲生のスマホに着信がある。

 稲生:「あっ、先生からです。ちょっと失礼します」

 稲生はスマホを手にデッキに向かった。
 実はルーシーの着信内容と、稲生の着信内容はほぼ同じ。
 その内容は何なのかというと……次回へ続く!
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“大魔道師の弟子” 「箱根湯本温泉」 2

2019-12-22 16:18:47 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[11月25日14:30.天候:晴 神奈川県足柄下郡箱根町 某日帰り浴場]

 魔女3人に見習魔道士1人の温泉日帰り旅。
 これは魔女の1人、ルーシーが新幹線に乗りたがったからこその旅である。
 が、帰りはもっと違う電車に乗るつもりの稲生。

 稲生:「ふぅ……。やっぱり温泉はいいよなぁ……」

 露天風呂で寛いでいると、内湯の方から稲生の知っている顔がやってきた。

 ケンショーグリーン:「先般の総幹部会における大感動は、未だ冷めやらぬものであります」
 稲生:「また出た……。ホント懲りないなぁ……」

 稲生はもはや呆れ顔。

 ケンショーグリーン:「クフフフフ……。稲生さん、よく会いますね?お隣、失礼します」
 稲生:「アンタに『よく会うね』って言われたくないよ。さっきの枕詞からして、今度は魔界共和党理事としてではなく、ケンショーレンジャーとして僕に会いに来たわけ?」
 ケンショーグリーン:「折伏は顕正会員としての使命です」
 稲生:「それは宗門も同じだよ。カントクはロクにやってないけど……」

 雲羽:ギクッΣ(゚Д゚)→φ(`д´)→『余計なこと言うな!』(←スケッチブックに書かれたカンペ)

 ケンショーグリーン:「以前にも申し上げましたが、ケンショーレンジャーは解散しました」
 稲生:「創設者のポテンヒットさんが来られなくなったからねぇ……」
 ケンショーグリーン:「ええ。いずれはカントクを顕正会に連れ戻してくれる役を期待していたのですが……」
 稲生:「それで?今日は僕に何の用?マリアさんの下着ならやらないよ?」
 ケンショーグリーン:「いえいえ。今日はたまたま街頭折伏に来ただけ。これは偶然です。御仏智ですね。稲生さん、引いてはカントクに顕正会に戻って頂く為の」
 稲生:「ヤだよ!」
 ケンショーグリーン:「それに、『戦利品』なら既に頂きましたので。クフフフフフ……」
 稲生:「お、おい、まさか?」
 ケンショーグリーン:「御覧になりますか?クフフフフフ……」
 稲生:「マリアさんの下着じゃないだろうな?」
 ケンショーグリーン:「それは分かりません」
 稲生:「なにっ?」
 ケンショーグリーン:「私の分析によれば、確かに魔女さん達のどなたかの物ではなかろうかと思うのですが、いやはやさすがは魔女さん達です。これ以上は魔法のプロテクトで、私の分析力が働かないのです」
 稲生:「歳を取って、ヤキが回っただけじゃないのか?」
 ケンショーグリーン:「これは手厳しい。クフフフフフ……」
 稲生:「とにかく見せろ。どこにある?」
 ケンショーグリーン:「それでは脱衣所にご案内致しましょう。クフフフフフフ……」

 稲生はケンショーグリーンに付いて、露天風呂から脱衣所に戻った。

 ケンショーグリーン:「私の秘蔵コレクションの中の最新品、とくとご覧あれ!」

 グリーンの服の中に隠されるようにして、一組のブラショーツが現れた。
 青色の少し高そうな下着である。
 シルクを基調とした素材だった。

 稲生:「……いや、マリアさんのじゃないな。マリアさんはあまり、こういう素材のは着ないんだ」
 ケンショーグリーン:「クフフフフフ……。私の分析通り。さすがの私も先約のいらっしゃる方は、御遠慮させて頂いておりますよ。ですから、どうかご安心を」
 稲生:「そういう問題じゃないって」
 ケンショーグリーン:「ついでにお伺い致しますが、では、この下着はどなたのでしょう?」
 稲生:「うーん……。多分、エレーナのじゃないかなぁ?」
 ケンショーグリーン:「あの跳ねっ返り魔女の!?……どうしてそう思われるのですか?」
 稲生:「ルーシーはボクサーショーツ派だし、エレーナの契約悪魔のシンボルカラーは青だし、確か鈴木君がエレーナに青いブラショーツをプレゼントしたとか言ってたけど……」
 ケンショーグリーン:「おおっ!どこかで見たことがあるかと思っていましたが、これは正しく私が鈴木君にアドバイスしたものですよ!」
 稲生:「ちょっと待ってくれ」

 稲生、自分の荷物の中からスマホを取り出す。

 稲生:「あー、もしもし、エレーナ?下着泥棒の犯人、ケンショーグリーンだったんだけど、どうする?」

 すると電話の向こうで怒号が聞こえた。

 エレーナ:「なにぃっ!?やっぱケンショーグリーンだとォ!?首根っこ掴んで引きたてーい!!」
 ケンショーグリーン:「嗚呼ッ、そんな!稲生さん、同じ男じゃないですか!御無体な!」
 稲生:「下着ドロは犯罪だからな!」

 稲生、グリーンの首根っこを掴んで脱衣所の外へ引き立てた。
 そこでは頭に怒筋をいくつも立てたエレーナが待ち構えており、ホウキにくくり付けられて、どこかへと連行されてしまった。

 ケンショーグリーン:「あ〜れ〜……」
 稲生:「あーあ……」

 恐らく、箱根山ロープウェイの支柱のてっぺんにでもくくり付けられる刑に処されるのだろう。
 こんな時、魔女がホウキに乗って行けば楽だ。

 稲生:「グリーンもバカだな。よりによってエレーナの貰い物をパクるんだから……」
 マリア:「何だかんだ言ってエレーナのヤツ、鈴木からのプレゼントを使ってるんだな」
 稲生:「そういうことです。まんざらでもないのかもしれませんね」
 マリア:「だな」
 ルーシー:「ていうか稲生さん……」

 ルーシーは水晶球を手に、眉間に皺を寄せた。

 稲生:「な、何だい?僕は下着ドロのことは知らないよ?」
 ルーシー:「何で私の下着がボクサーショーツだって知ってるの?」
 マリア:「えっ!?」

 マリアも怒筋を浮かべて稲生を睨みつけた。

 稲生:「お、怒るなよ。ほら、鬼怒川に泊まった時、皆で二次会して、そのまま寝ちゃっただろ?」
 ルーシー:「それがどうしたの?」
 稲生:「で、起きた時……」

 その時、同じく眉間に皺を寄せていたマリアが急に表情を変えた。

 マリア:「あっ、あー!そういうことか!」
 ルーシー:「なに?マリアンナ」
 マリア:「いや、皆して酔っ払って寝たもんだから、寝相とか変なことになってたんだよ。私も含めて」
 ルーシー:「それで?」
 マリア:「ルーシーは目が覚めた時、気づかなかったの?あんた、浴衣の下はだけてパンツ丸見えになってたよ?」
 ルーシー:「は!?」
 稲生:「ご、ゴメン。それ、僕見ちゃって……」
 ルーシー:「〜〜〜〜〜〜〜っ!!」

 ルーシーは急に顔を真っ赤にした。

 稲生:「それで分かったんだ。はははは……」
 マリア:「いや、私は勇太に注意しといたからね?その後、すぐに勇太の部屋に向かったし……」
 ルーシー:「そういう問題じゃない!!」

 取りあえず、稲生はマリアの弁護とルーシー自身の不注意ということでパンモロ目撃の罪は不問となった。

 稲生:「ルーシーもマリアさんと同じ、綿100%のプリントショーツが似合うと思うよ?」
 マリア:「そういうことは言わなくていいから!」

 男は皆ヘンタイということで。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする