報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「鬼怒川温泉を出発」

2019-12-06 19:25:55 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[11月24日08:00.天候:雨 栃木県日光市鬼怒川温泉 あさやホテル]

 稲生とマリアが合流したのは朝食会場で、であった。
 尚、ダンテ達、貴賓室に宿泊した大魔道師達だけはどういう手続きをしたのか部屋食にしたらしい。
 チェックアウトの9時半までには行くようにすると稲生に言ってきた。

 エレーナ:「よお、稲生氏とマリアンナ」( ̄▽ ̄)

 エレーナは遅れてやってきたイリーナ組の2人に、ニヤけた顔で挨拶した。

 稲生:「な、何だよ?」
 エレーナ:「さっきまでお楽しみだったのか?」
 稲生:「うっ……!」
 マリア:「エレーナ!やっぱりか!」
 エレーナ:「で、どうなんだ?え?あ?」
 ルーシー:「そこまでにしてあげなさいよ、もう」

 ルーシーがエレーナの肩を掴む。

 マリア:「……楽しませてもらったよ」

 マリアはそれだけ言うと、稲生の隣の椅子に座った。

 ルーシー:「マリアンナはまだ控え目だからいいのよ。先生達なんか【お察しください】」
 エレーナ:「まあな。『魔法道を極めし者の特権』とかなんか先生仰ってたけど、確かにあれじゃ教会の連中から見たら不潔だよなぁ……」
 ルーシー:「逆に聖職者はそういう高潔さが求められてるからね。それは物凄く大きなストレスであり、それを耐えるのが聖職者の修行でもあるわけだけれど……」
 エレーナ:「そのストレス解消の矛先が、私ら魔女に向けられるってわけだぜ。こりゃ稲生氏の宗教団体も怪しいもんだ」
 ルーシー:「何故か大師匠様から、仏教は認められているからね」
 エレーナ:「ぶっちゃけ仏教にも、こっちの敵対教会と大して変わらん所もあるだろうに……」
 ルーシー:「稲生さんの所は大丈夫みたいね。過去に、教会に襲われたコ達を助けてくれたこともあったんでしょう?」
 エレーナ:「あれは助けたくて助けたというよりかは、何て言うんだろうなぁ……。ま、私ら魔女を狩りに来る教会ってのは、他の宗教とも相容れないってことかな」

 ルーシーとエレーナも稲生達の向かいに座った。

 稲生:「うん、これは美味いですね」
 マリア:「これも美味しいよ」
 エレーナ:「おい、マリアンナ。『はい、あなたあーんして、あーん』ってやってみてくれよ?」
 マリア:「あぁ?何言ってんだ?」
 ルーシー:「エレーナ、やめなさいって」
 エレーナ:「ルーシーはカタいなぁ」
 ルーシー:「そういうのは正式に結婚してからでしょ」
 エレーナ:「結婚すればいいのか?」
 ルーシー:「いや、いいでしょ。さすがに」
 マリア:「やっぱりエレーナは、うちの師匠とポーリン先生がケンカしている間にブチ殺すべきだった」
 稲生:「まあまあ」

 一口にダンテ一門といっても、各師匠ごとに魔法のジャンルが別れ、ジャンル1つ違えばまるで違う魔法門に来たかのような感覚に陥るという。
 基本的に1度入門すれば、他の組に移籍することはまず無いが、門内にゴタゴタがあったりすると例外的に移籍を命じられることもある。
 人数の多い組に、その傾向がある。
 その為、弟子の人数が最も多いアナスタシア組は何度か弟子の入れ替えがされたことがある。
 それはつまり、アナスタシア自身にも問題があるということでもあるのだが。
 その移籍経験者が語っていたことだ。

 稲生:「食べ終わったら、売店とか覗いてみましょう。まだ少し時間があるんで」
 マリア:「分かった」
 エレーナ:「よし、私も行くぜ」
 マリア:「オマエなぁ!」
 ルーシー:「わ、私もちょっと興味があるかも……」
 稲生:「皆で行こう、皆で」

[同日09:30.天候:雨 栃木県日光市鬼怒川温泉 あさやホテル→東武鉄道鬼怒川温泉駅]

 

 外国人旅行客というのは往々にして時間にルーズで、集合時間を伝えても時間通りに集まらないというイメージが日本人にはある。
 恐らく実際そうなのだろうが、ダンテ一門は基本的に皆集まった。
 そこは上意下達が浸透している(逆を言えば上下関係が厳しい)ことが分かる。
 昨日駅から乗ったバスと同じ観光タイプのバスに乗り込み、それで駅に向かった。

 稲生:「皆様、おはようございます。あっという間の鬼怒川温泉でしたが、お楽しみ頂けましたでしょうか?」

 稲生はマイクを取ると、後ろの席に向かって呼び掛けた。
 後ろの広い席に固まって乗っている創始者や大魔道師達は大きく頷いた。

 稲生:「ありがとうございます。報道によりますとローマ教皇は長崎県に到着したとのことで、僕達がこれから東京に戻っても大丈夫でしょう。これから再び電車に乗って、都内へ向かおうと思います。10時12分発、特急“きぬ”120号、浅草行きです。これは……」

 稲生はチラッとルーシーを見た。

 稲生:「往路で乗ったものと違い、新幹線的なスタイルの車両ですのでご安心ください」

 エレーナ:「それじゃ1ばーん!エレーナ・M・マーロン、歌いまーす!」
 稲生:「カラオケの設備は無いから!」

 そのバスに揺られて約10分。
 バスは鬼怒川温泉駅に到着した。

 エレーナ:「おっ、そういえば駅にも売店はあるんだったな」
 稲生:「そうだよ。観光地の駅だからね」

 運転手がバスの荷物室のドアを開けると、そこから荷物を降ろす魔道士達。
 師匠の荷物持ちをするのも弟子の役目だが、大きな荷物を持っているのはアナスタシア組だけだ。
 基本的に魔道師は大きな荷物を持つことは無いが、それもジャンルによるのだろうか。

 ルーシー:「稲生さん、改札の中にはもう入れないかな?」
 稲生:「あー、僕達団体だから、皆一緒でないとね。それに、まだ電車はいないと思うよ。9時59分着の折り返しだから」
 ルーシー:「そう」
 稲生:「それにしても、実は浅草駅から少し歩くんだよな。向こうも雨だったらどうしよう?」
 マリア:「ローブを着てれば大丈夫でしょう。少し歩くの?」
 稲生:「浅草も観光地ですし、それに僕にとっては謗法なんですけど、あそこは浅草寺というお寺が有名な所ですから。教会の連中も寺の中では何もできませんから、いざとなったら境内に逃げ込むという手も使えます」
 マリア:「そうかな。……ま、勇太を信じるか」
 エレーナ:「教皇は長崎だろ?きっと皆、そっちの方に目が行ってると思うぜ」
 稲生:「いやあ、僕もそう思うんだけどねぇ……」

 稲生は駅の外を見た。
 駅の内外は観光客で賑わっている。
 もちろんその中には、稲生達のような外国人旅行客の姿も多く見られた。
 教会のスパイは見受けられないような気がしたが、やはり油断はできない。
コメント
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