報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「レトロスペクティブ浅草」

2019-12-09 21:16:58 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[11月24日12:40.天候:雨 東京都台東区 某料亭]

 東武浅草駅を出たダンテ一門の魔道師達は、徒歩で稲生が予約した料亭へと向かった。

 稲生:「40名で予約した稲生です」
 女将:「お待ちしておりました。それではどうぞこちらへ」
 稲生:「先生方、靴を脱いで上がってください」
 ダンテ:「うむ」
 下足番:「お履き物、お預かりします」
 イリーナ:「あの……勇太君」
 稲生:「何でしょうか、先生?」
 イリーナ:「日本に来た以上、是非とも日本食を堪能してもらいたい。その気持ちはよく分かるわ」
 稲生:「何か問題でしょうか?」
 イリーナ:「私もポーリン姉さんもナスっちも、歳だから腰が痛いのよ。座敷に正座はちょっとね……」
 ポーリン:「姉さん言うな!」
 アナスタシア:「私を勝手に巻き込むな!」
 稲生:「あ、大丈夫です。安心してください。掘り炬燵形式ですから」

 座敷に畳ではあるが、実際の席としては椅子のように座るタイプのこと。
 掘り炬燵から炬燵布団を取り去ったようなものだと思ってもらえれば良い。
 最近の和食料理屋の座敷席にはよく見られるパターンである。
 インバウンドの外国人観光客が増えたことで、イリーナなどの座敷が苦手な者に配慮したものだろう。
 かくいう作者も正座は苦手で、勤行の時は椅子に座るか、起立して行い、どうしても正座しなければならない場合は正座椅子を使う。
 尚、顕正会では『御本尊様に足を向けるとは何事だ!』と怒られ、正座を強制させられる。
 恐らくこの事が、『大石寺の奉安堂は大御本尊様に足を向けるから怪しからん!』→『大御本尊様を御安置している場所に土足で踏み入るとは何事だ!』となったのだろう。

 イリーナ:「なーんだ。そうなの」

 イリーナは蒼くなった顔をコロッと変えた。

 稲生:「上座はこちらです。大師匠様の御席はこちら」
 ダンテ:「うむ。ありがとう」
 稲生:「次席ですが、如何致しましょう?」
 ダンテ:「ここは日本料理を出す店だ。席次も日本の風習に合わせるとしよう。日本には『年功序列』という風習がある。私の1番弟子から順に座りなさい」

 一口に1期生と言っても、あくまでそれはダンテの直弟子という意味であって、その1期生達の中にも上下関係はあるのである。
 2期生もそう。
 今や弟子持ちが殆どとなった1期生達の弟子、ダンテから見れば孫弟子に相当する者達が2期生と呼ばれるのである。
 そして、そんな2期生達の中にも少数ながら弟子持ちとなった者達がいる。
 ダンテから見れば曾孫弟子となる。
 彼らは3期生と呼ばれる。
 稲生は1期生のイリーナに弟子入りをしたので、2期生ということになる。
 しかし同じ2期生でもマリアという先輩弟子(姉弟子)がおり、やはり2期生の中にも上下関係はあるのである。
 但し、エレーナなどを見ていれば分かる通り、1期生達ほどのガチガチな先輩後輩関係というほどのものでもない。
 ましてや3期生に至っては更に少数ということもあり、仲間意識が強く、上下の意識はもっと無い。

 稲生:「当然ながら、僕が末席ですね」
 エレーナ:「いいよ、稲生氏。私と一緒に座ろう」
 マリア:「退きな、そこは私の席!」
 エレーナ:「1期生席は全席指定だが、2期生席は自由席だぜ?」
 マリア:「誰がそんなこと決めた!」
 エレーナ:「私」
 マリア:「おい!」
 アンナ:「『1人の男を巡る女2人のドロドロ愛憎劇』と『2人の女に二股を掛けていた男が堕獄し、獄卒となった女達からの復讐拷問』の話とどっちが聞きたい?」
 稲生:「どっちも勘弁してください……」
 ルーシー:「皆、いい加減にしないと先生達に怒られるよ」
 ダンテ:「ダンテ一門綱領に『仲良き事は美しき哉』とあることを忘れてはいけない」
 ポーリン:「エレーナ!あれほど火の粉を撒くのはよせと言ったはずだろう!」
 アナスタシア:「アンナ!稲生君には先約がいるんだから、早く諦めなさい!」
 イリーナ:「マリアも本気でケンカしないの」
 ベイカー:「うちのルーシーは、こういったトラブルには真っ先に調整役を引き受けるいいコでございまして……」
 稲生:「えー、それでは乾杯の音頭を大師匠様にお願いしたいと思います」
 ダンテ:「私がかい?まあ、いいだろう。昨日は非常に楽しい温泉であった。今日からこの東京には2泊する予定である。私に構わず、東京観光を楽しんでもらいたい。だが、如何に教皇が今は西の方の町へ向かったとはいえ、東京にはまだ教会の者が残っておろう。そしてその中には、我々魔道師の存在を『悪魔の手先』『神に仇なす者』『悪魔そのもの』などと勝手に決めつけ、魔女狩りに来る者達がいるかもしれない。けして油断してはならぬ」
 稲生:「一応、日蓮正宗の寺院は都内に分布しておりますので、いざとなったらそこへ逃げ込んでください。こちらはクリスチャンだと分かった以上、間違い無く折伏しますから。そして皆様も御存知の通り、仏教には魔女狩りの歴史はございません。日蓮正宗も迫害を受ける側でした。ですので、安心してセーフティーゾーンとして利用してください」
 ダンテ:「そういうわけだ。それでもダメは場合は、教会の者達の方が教皇に怒られるほどの大騒ぎを起こしてやればよろしい」

 そして、そこから昼食会が始まった。

 エレーナ:「おっ、寿司だぜ、寿司。マリアンナ、寿司苦手だろ?私が代わりに食べてやんぜ」
 マリア:「待て!」

 マリアがエレーナが取った皿を取り返すと、自分がそれを頬張った。

 稲生:「ま、マリアさん?無理しなくていいんですよ?」
 マリア:「だ、大丈夫。私のトラウマは川魚だから」

 マリアは人間時代、移民ということでヒドい迫害を受けたことがある。
 強い魔法の素質を持っていたことを“魔の者”に目を付けられ、マリアが苦しんで最後には自殺に追い込まれるよう仕向けたものであった。
 その1つに川に突き落とされたというものがあったが、その際、泳いでいた魚が口の中に飛び込んで来たというものがあり、それがトラウマとなって魚が食べられなくなっていた(特に生魚)。
 それが今や……。

 マリア:「海の魚は食べれるようになったから。もうこれで大丈夫」
 稲生:「マリアさん、少しずつトラウマを克服するようになってきましたね!」

 集団レイプ(輪姦)を何度もされたトラウマは、稲生だけOKになった。
 それ自体が凄い事だと、他の似たような目に遭わされた魔女達から羨望や驚愕、嫉妬まで受けている。

 マリア:「うん。勇太のおかげだよ」
 エレーナ:「あれ?でも今マリアンナが食べたの、鮭じゃね?」
 マリア:「鮭?サーモン?」
 エレーナ:「確か寿司ネタにするヤツは、産卵で川に遡上するヤツを捕獲するんだろ?てことは、これも川魚じゃね?」
 マリア:「うっぷ……!」

 マリアに突然訪れた酷い吐き気。
 そして、急いでトイレに向かう彼女であった。

 ルーシー:「何であなたはブチ壊しにするのよ?」
 エレーナ:「これが魔女ってモンだぜ」
 稲生:「あれ?寿司ネタにするヤツって、海で捕獲するんじゃなかったっけ?」

 急いでスマホで調べる稲生。
 因みにこういう料亭ではいざ知らず、回転寿司などの安いネタにおいては養殖モノを使用するので悪しからず(但し、寄生虫対策の為、天然モノであっても必ず冷凍処理されたものを解凍している)。
コメント
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