報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「出発の朝」

2024-11-27 20:38:31 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月14日05時30分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家4階・愛原の部屋]

 枕元に置いたスマホがアラームを鳴らす。
 私は手を伸ばして、そのアラームを止めた。

 愛原「ん……もう朝か……。どれ……」

 私は伸びをしてベッドから這い出た。
 真冬と違い、この季節では寒くて布団から出られないなんてことはない。
 部屋の鍵は1つだけ。
 前のマンションでは、リサ侵入防止用に3つほど付けていたのとはだいぶ緩くなっている。
 リサも成長しつつあり、さすがに部屋への侵入は遠慮しているらしい。
 その代わり……。

 愛原「シャワー使用中か……」

 リサは毎朝シャワーを浴びるようになった。
 別に、きれい好きになったというわけではない。
 私への思いを発散する為、毎晩オ○ニーに興じるようになり、そのせいで発生する体臭を洗い流す為である。
 鬼の女は、往々にしてそういうことが多いらしい。
 私はトイレを済ませて、それから洗面所で顔を洗った。
 シャワールームは後付けである為、付属の脱衣所は存在しない。
 私が顔を洗っている間は、リサは全裸で外に出られないはずなのだが……。

 リサ「先生……バスタオル取って……?」

 シャワーの音が止まると、リサは折り戸を僅かに開けて、わざとモジモジしながら私にバスタオルを要求した。
 この時、本当にバスタオルを渡すとリサに手を掴まれ、シャワールームの中に引きずり込まれてしまう。
 こういう時は……。

 愛原「『悪鬼滅殺』の御札」
 リサ「ヒッ!?」

 ドアを閉めて、『悪鬼滅殺』の御札を貼り付けると良い。
 こんな物効くか?と思うかもしれないが、リサは暗示に掛かりやすいタイプなのである。
 この御札は効くと暗示を掛ければ、案外効く。

 愛原「洗面所、使い終わったら剥がしてやる」
 リサ「そんなぁ~!」

 リサはドンドンとドアを叩く。
 鍵なんか掛かってないのに、本当に開けられないようだ。
 案外、怪奇現象で、『掛かってないはずのドアに、鍵が掛かって閉じ込められた』なんてのも、正体はこういうのだったりしてな。

[同日06時30分 天候:晴 同地区内 愛原家→日本交通タクシー]

 

 パール「先生、タクシーが到着しました」
 愛原「よし、早速行こう!忘れ物は無いか?」
 パール「大丈夫です」
 愛原「戸締りはしっかりとな!」
 パール「かしこまりました!」

 私達はタクシーに近づいた。
 気づいた運転手が助手席後ろのスライドドアを開ける。

 愛原「予約していた愛原です」
 運転手「愛原様ですね!」

 実は私達、ある程度の大きさの荷物がある。
 探偵調査の為に必要な機材が入っていたりする為だ。
 もちろん、飛行機だと機内持ち込みサイズくらいの大きさなのだが、それを1人1つくらい持っていたりするものだから、車だと後ろに積むことになる。
 運転手にハッチを開けてもらい、そこに積み込んだ。
 それから、リアシートに乗り込む。
 こういう時、トールワゴンタイプのタクシーだと後ろに3人余裕で乗れるから楽だ。

 運転手「それでは……東京駅八重洲口のタクシー降り場で宜しいですか?」
 パール「はい、お願いします」
 運転手「かしこまりました」

 車が走り出す。

 パール「これで行っても、予定の新幹線には少し早いくらいですが?」
 愛原「その余裕がいいんだよ。駅弁ゆっくり選べるし、キミもゆっくりタバコ吸えるだろう?」
 パール「確かに。ありがとうございます」
 リサ「駅弁……🤤」

[同日06時55分 天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR(東海)東京駅]

 タクシーは八重洲中央口のタクシー降車場に到着した。
 既に多くのタクシーが列を成しており、入るのに少々時間が掛かったが。

 運転手「お待たせ致しました。ありがとうございました」
 愛原「どうも」

 アプリ配車で予約している為、紙の領収証も発行されない。
 タクシーを降りると、リアシートに積んであった荷物を降ろした。
 交通費の精算は、帰って来てからやることになる。

 愛原「次はキップの購入だ」

 大丸百貨店の建物の中を通じて、八重洲側から東京駅の中に入った。
 元々は旧国鉄1つであった東京駅を、JR東日本と東海で無理やり分けた感が高い。
 八重洲中央口など、券売機が東日本と東海でバラけている感が凄い。
 そりゃまあ、新幹線のキップならどちらの券売機でも購入できるのだが……。

 愛原「で、支払いはカードにしておく」
 パール「ポイントが溜まるわけですね」
 愛原「ポイントは後ほど還元するさ」
 リサ「おー!」

 新富士駅までは片道1時間程度なので、自由席で十分である。
 キップを買っていると、ぞろぞろと修学旅行の高校生らしき集団が有人改札口から中に入って行った。

 パール「あらま、リサさんと同世代のコ達が……」
 愛原「そして、絵恋さんと同世代のコでもあるというわけか……」
 リサ「見たこともない制服だねぇ……」
 愛原「都内でも、城西とか、多摩方面の高校かもしれないな」

 一瞬、他県からの修学旅行生で、これから地方に帰る所かとも思ったが、その割には朝が早過ぎる。
 また、彼らが話す言葉には、地方の訛りっぽいものは聞こえなかったので、やはり都内のどこかだろう。

 愛原「自動改札を通るから、キップは1人ずつ持とう」
 パール「ありがとうございます」
 リサ「わたし、先生の隣ぃ~!」
 愛原「自由席だっつってんだろw」

 修学旅行生達をやり過ごし、私達は自動改札機からコンコースに入る。
 そこで、ふと思った。
 当たり前の話だが、こうしてリサや他の首都圏の中高生が修学旅行で地方に行くわけだから、逆に地方から都内へ修学旅行に来る学校もあるだろう。
 私は仙台市の中学校だったが、修学旅行は東京都内であった。
 リサと秋北学院の太平山美樹は、たまたま偶然、沖縄で会った。
 他の地方にも、鬼の末裔がいることを考えると、そんなコ達が修学旅行で都内に来ることもあるだろうと思った次第だ。
 聞いた話、秋北学院の修学旅行は海外が無い代わりに、国内での行き先に選択肢の幅を持たせているという。
 その中に、首都圏もあるということだ。

 リサ「先生、駅弁買っていい!?」
 愛原「ああ、そうだな。俺も買って行こう」

 私達はホームに上がる前に、駅弁売店に立ち寄った。

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