報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「まずは東京駅へ」

2020-07-14 19:50:54 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月5日10:00.東京都江東区森下 ワンスターホテル→JR東京駅 視点:マリアンナ・ベルフェゴール・スカーレット]

 イリーナ:「はい、鍵」
 エレーナ:「ありがとうございました。またのご利用をお待ち申し上げます」

 チェックアウトの時間になり、イリーナは鍵を2つ、フロントに返却した。

 イリーナ:「それじゃポーリン姉さんに払うお金、アルカディア・ゴッズを用意して待ってるから」
 エレーナ:「はい。後で取りに伺います」
 イリーナ:「ついでにプール入って行けば?」
 エレーナ:「いいんですか?あざーっす!」
 マリア:「師匠!」
 イリーナ:「まあまあ。プールでスカイクラッドもいいものよ」
 マリア:「マジですか……」

 マリアは嫌そうな顔をした。
 そこへ外に出ていた稲生が戻って来る。

 稲生:「先生、タクシーが来ました」
 マリア:「勇太には参加させませんからね」
 稲生:「えっ?何の話?」
 マリア:「何でも無い!」
 エレーナ:「おいおい、マリアンナ。稲生氏がアスモデウスを使いこなせたら、スカイクラッドどころか、ポルノのハーレムだぜ?」
 マリア:「師匠!アスモデウス以外に契約悪魔いないんですか!?」
 エレーナ:「もう内定しちゃってるから、どうしようもないよ。それより、車を待たせてるんだから、早いとこ行こうかね」

 ダンテ一門の綱領に『仲良き事は美しき哉』というものがある。
 もちろん、英語にしたらもっと別のニュアンスになるのだろうが、日本語に訳すると、正にこの武者小路実篤の名言になるのだ。
 何しろ英文が、『How beautiful it is to have good friends.』なのだから。
 その為、門内における恋愛・結婚に関しても特に制限は設けられていない。
 むしろ、日蓮正宗のそれに似た法統相続の概念まであるくらいだ。

 稲生:「こちらです」

 ホテルの外に出ると、黒塗りのハイヤーが止まっていた。
 稲生はイリーナに無断でハイヤーを予約したのだろうか?
 イリーナには、「タクシーを呼べ」と言われたが、「ハイヤーを予約しろ」とは言われていない。
 だが、よく見ると、屋根の上には東京無線の行灯がポンと乗っかっていた。

 運転手:「Please.」

 タクシーではあるので助手席の後ろのドアは自動ドアのはずだが、ハイヤーみたいに運転手が手動で外から開けた。
 しかも英語が話せるらしい。

 イリーナ:「勇太君、タクシーよね、これ?」
 稲生:「そうですよ」

 確かに助手席のダッシュボードの上には『空車』という表示器があり、ちゃんと料金メーターもあった。

 稲生:「料金も普通のタクシーと同じです」
 イリーナ:「そう」
 マリア:「師匠、予算ならありますよね?潤沢に」
 イリーナ:「あるけど、あまりダンテ先生が乗られるハイグレードカーに乗るのは忍びないわ」

 顕正会員が浅井会長の日産シーマより高い車に乗るのは忍びない、或いは法華講員が猊下様のトヨタ・セルシオより高い車に乗るのは忍びないという感覚か?
 ん?あれ?でも、どこかの講頭さんはかつてセルシオより高いベンツに乗っていらっしゃったような……?

 マリア:「大師匠様はリムジンでしょ?だったら大丈夫ですよ」

 しかしこの前の『ダンテ先生を囲む会』では、リムジンではなく、大型観光バスを貸し切って移動した(長距離移動は電車)。

 イリーナ:「そうかねぇ……」

 2人の魔女はリアシートに座り、稲生は助手席に座った。

 稲生:「東京駅までお願いします」
 運転手:「はい。東京駅ですね。東京駅のどこにしましょうか?」
 稲生:「八重洲北口でお願いします」
 運転手:「かしこまりました」

 車が走り出した。
 稲生がスマホを取り出して、何やら操作している。
 今から新幹線などの空席情報を確認しているのだろうか?
 イリーナはそっとマリアに耳打ち。

 イリーナ:「昨夜の『お楽しみ』、ちゃんと避妊したんでしょうね?」
 マリア:「あ、当たり前ですよ。勇太はちゃんとゴムを着けてくれました。も、もう切らしたみたいで、『後で買い足す』とか言ってましたけど……」
 イリーナ:「そう。それならいいんだけど……」
 マリア:「あの、一応分かってますから。結婚もしてないのに妊娠なんかしたら、そりゃ、大騒ぎになりますから」

 ただでさえ人間だった頃、性犯罪の被害者であった魔女達の集まるダンテ一門だ。
 マリアもその仲間だったが、いち早くそのトラウマから抜け出せたことが大注目されている。
 今やもう稲生とは体の関係にまで発展したことは、一部の魔女にも知れ渡っている。
 それが、『本当に恋愛の末の性行為』なのか、『やっぱり稲生の性欲の捌け口による乱暴』なのかで、周囲の対応が変わって来る。
 前者であることを主張する為にも、『その都度、避妊具を着けている』『マリアの嫌がることはしない』という暗黙のルールを設けている。

 マリア:「『レイプされて、できたんじゃないか』ってね」
 イリーナ:「面倒だけど、もっと面倒なことになるのを避ける為だから、ガマンしてね」
 マリア:「分かってますよ。私自身、勇太とまさかこんな関係になれるとは思ってもみなかったんですから」
 イリーナ:「うん、正に奇跡ね」

[同日10:25.東京都千代田区丸の内 JR東京駅 視点:稲生勇太]

 タクシーが降車場に到着する。

 イリーナ:「じゃあ、カードで」
 運転手:「ありがとうございます」

 イリーナが手持ちのクレカで料金を払っている間、稲生とマリアはタクシーを降りた。

 マリア:「どうなの?帰りの新幹線、予約は取れそうなの?」

 マリアは稲生の顔に自分の顔を近づけた。

 マリア:「今度は屋敷に帰ったら……ね?」

 上目遣いに胸元を見せながら、思わせるようなことを言う。

 稲生:「う、うん!……で、ゴメン。ずっと“厳虎独白”見てた」
 マリア:「何読んでんの!?あれでしょ!?今、コメント欄が四つ巴の状態になってるあのブログでしょ!?」
 稲生:「そうそう」
 マリア:「新幹線の空席状況とか見てよ!」
 稲生:「ゴメン」
 イリーナ:「なぁに?痴話ゲンカ?痴情のもつれ?」
 マリア:「違います!」
 稲生:「ま、まあとにかく、出札へ行きましょう」

 稲生達は東京駅の中に入った。
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“大魔道師の弟子” 「ワンスターホテルの朝」

2020-07-14 15:29:03 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月5日06:30.東京都江東区森下 ワンスターホテル 視点:マリアンナ・ベルフェゴール・スカーレット]

 マリア:「……!」

 マリアが目を覚ました時、そこは稲生の部屋のベッドの中だった。
 自分は全裸で、稲生も一糸まとわぬ姿でベッドの中にいる。
 昨夜、マリアが稲生の部屋に忍んで行き、そのまま『夜の営み』と相成ったことを思い出す。

 マリア:(替えの下着、もう1つくらいあったっけ……?)

 脱がされてベッドの下に落ちている自分の下着を手に、マリアはバスルームに入った。
 黒いスポブラに同じ色のビキニショーツだが、魔界に行く時は大体こんなスポーティーな下着を着けて行く。
 魔界ではエンカウント(敵に遭遇)して戦闘に入る確率が高く、動き易さと洗濯のしやすさを選んだ為。

 マリア:「汗かいたから、このまま部屋には戻れないか……」

 シャワーで流してから部屋に戻ろうと思った。
 多分イリーナは分かっているだろうが、後でエレーナに冷やかされるのは容易に想像できた。

 マリア:「昔は考えられなかったなぁ……」

 シャワーで流した後、自分の体をミラーに映してみる。
 普通の人間だった頃に受けた暴行の傷痕は、もう全く見当たらない。
 ダンテ一門内でも、『奇跡の魔女』などと呼ばれるくらいだ。
 最初は裏切り者扱いして嫌がらせしてくる者もいたが、今は好意的に捉えてくれる者の方が多い。
 体を拭いてショーツだけ穿いてバスルームから出てくると、ライティングデスクの上に置かれた稲生のスマホのアラームが鳴った。
 何の音楽かは分からないが、恐らく稲生の趣味の鉄道に関するものだろう。
 マリアに複数回子種を発射したことで体力を使い切った稲生は、いつも寝起きが良いのに、今回はあまり良くなかった。

 マリア:「最初の一回は止めてあげよう」

 マリアはアラームを止めた。
 これで稲生が寝坊しないかどうかの懸念だが、スヌーズ機能もあることは分かっている。
 彼氏のスマホもしっかりチェック済み、ということか。

 稲生:「うう……ん……!マリア、おはよう……」
 マリア:「あ、起きた」

 マリアは稲生に背を向けた。
 上半身にはまだ何も身に付けていない。

 稲生:「別に今更隠さなくても……」
 マリア:「セックスの後は恥ずかしいの。というか、したい時以外は」
 稲生:「そういうものか」
 マリア:「そういうものなの。少なくとも、私はね」

 マリアはスポブラを着けると、近くに落ちていた稲生のボクサーパンツを本人に投げ飛ばした。

 マリア:「ほら、勇太も早く服着て」
 稲生:「セックスの後は恥ずかしいんだよ」
 マリア:「HAHAHAHA.」

 マリアは先にブラウスやスカートを穿いた。

 マリア:「……こういう服は気に入ってるけど、そろそろ別の服も着たいなぁ……なんて」
 稲生:「先生が着てるワンピース型のドレスみたいなのとか?」
 マリア:「あれ、私、似合うと思う?」
 稲生:「…………」

 多分、長身かつ出る所出ている体型の女性だからこそ似合う服なのではと……。

 稲生:「ぎ、逆に先生には、マリアのそういうJK制服は申し訳ないけど似合わないと思う」
 マリア:「そりゃそうだ」
 稲生:「だからマリアは、それが一番なんだよ!」
 マリア:「力説どうも。じゃ、私は先に部屋に戻るから、朝食に行く準備ができたら教えてよ」
 稲生:「ああ、分かった」
 マリア:「というか、今日屋敷に帰るの?」
 稲生:「? どうだろう。まだ、帰りの交通手段すら決まってないけど……」
 マリア:「部屋に戻ったら、師匠に聞いてみるよ。……起きていればね」
 稲生:「確率は高いかい?」
 マリア:「低いだろうなぁ……。ゼロとは言わないまでも」

 マリアは苦笑して首を傾げながら答えた。
 そして稲生の部屋を出て、同じフロアにあるイリーナと自分の部屋に戻った。

 イリーナ:「あら、お帰り」
 マリア:「! ただいま、戻りました……」

 部屋に入ると、バスルームからイリーナが出て来た。

 イリーナ:「この時間に帰って来るということは、勇太君と『仲良く』してきたのね。ちょうどシャワー使い終わったから、あなたも使う?」
 マリア:「あ、いえ。さっき、勇太の部屋のシャワーを使わせてもらったので、大丈夫です……」

 低い確率でイリーナが起きていたことにむしろ驚くマリアであった。
 で、閉まっている窓のカーテンを開ける。

 イリーナ:「ちょっとォ、これから着替えるんだから開けないでよ」
 マリア:「失礼しました。……うん、やっぱり外は雨ですね」
 イリーナ:「ツユの時期だから、しょうがない」

 イリーナは、明らかにマリアのよりは値段も高く、セクシーさもある下着を身に付けた。

 マリア:「今日、屋敷に帰るんですか?師匠、一晩休んだんだから、屋敷に帰るまでのMPも回復したでしょうからね」
 イリーナ:「魔法は無闇やたらに使うものじゃないのよ。さもないと、いざ本当に必要な時にMP不足で使えませんってことになったら大変だからね」
 マリア:「でも使わないと、技術向上はできません」
 イリーナ:「それはあなたみたいな修行中のコが対象よ。確かにあなたはマスターにはなったけど、まだまだ駆け出しなんだからね。むしろマリアが率先して魔法を使うようにしなきゃ。で、マリアの魔法で屋敷まで帰れる?しかも私や勇太君も連れて」
 マリア:「Sorry.I can not do it,maybe.」
 イリーナ:「勇太君に帰りの公共交通機関の選定を任せて、それで帰るしかないわね」
 マリア:「今日中に帰れるでしょうか?」
 イリーナ:「別に、もう一泊してもいいのよ。魔界のことはナスっちやマルファ、そしてポーリン姉さんに任せるしかない。もう私達にできることはないから」
 マリア:「はあ……」

[同日08:00.ワンスターホテル1Fロビー 視点:稲生勇太]

 朝の勤行を終えた稲生は先にロビーに下りて、そこでマリアとイリーナを待っていた。
 その時、フロントにいるエレーナと話す。

 エレーナ:「勇太が一人前になって、アスモデウスと本契約を結んだら、ガチで恐ろしいことになりそうだぜ」
 稲生:「えっ、そうなの?」
 エレーナ:「気づいてねーのかよ」
 稲生:「まあ、MPの上限は上がったっぽいけど……」
 エレーナ:「そういうことじゃねーぜ。アスモデウスがどんな悪魔だか知ってるよな?」
 稲生:「キリスト教に出てくる七つの大罪の悪魔の1つで、“色欲”を司るわけでしょ?」
 エレーナ:「それだけか?アンタがアスモデウスを使いこなせれば、女を食い漁ることなんて造作も無いんだぜ?」

 エレーナは口元を歪めて言った。

 稲生:「でも後で怖いことなりそうだ。そういうことも知ってて言ってるだろ?」
 エレーナ:「HAHA,知ってるならいいぜ。但し、それは普通の人間が契約した場合だぜ。魔道士が契約して使う場合は……【お察しください】」
 稲生:「怖いことは勘弁だよ。僕はマリアと一緒になれれば、それでいいんだ」
 エレーナ:「マリアンナも幸せ者だな。マリアンナに飽きたら、遊び相手として私も付き合うぜ?」
 マリア:「あぁ!?何の話だ!?」

 エレベーターのドアが開いて、マリアとイリーナが出て来た。

 エレーナ:「よぉ。『ゆうべはおたのしみでしたね』」
 マリア:「うるさいな」
 エレーナ:「羨ましい限りだぜ。私も混ぜてくれよ?」
 マリア:「アホか!鈴木と『たのしん』でろ!」
 エレーナ:「つれないなぁ……」
 マリア:「ほら、勇太!さっさと行こう!」

 マリアは稲生の腕を掴んで引っ張った。

 稲生:「は、はい!」

 そして、朝食会場であるレストラン“マジックスター”へと向かった。
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