[7月5日10:00.東京都江東区森下 ワンスターホテル→JR東京駅 視点:マリアンナ・ベルフェゴール・スカーレット]
イリーナ:「はい、鍵」
エレーナ:「ありがとうございました。またのご利用をお待ち申し上げます」
チェックアウトの時間になり、イリーナは鍵を2つ、フロントに返却した。
イリーナ:「それじゃポーリン姉さんに払うお金、アルカディア・ゴッズを用意して待ってるから」
エレーナ:「はい。後で取りに伺います」
イリーナ:「ついでにプール入って行けば?」
エレーナ:「いいんですか?あざーっす!」
マリア:「師匠!」
イリーナ:「まあまあ。プールでスカイクラッドもいいものよ」
マリア:「マジですか……」
マリアは嫌そうな顔をした。
そこへ外に出ていた稲生が戻って来る。
稲生:「先生、タクシーが来ました」
マリア:「勇太には参加させませんからね」
稲生:「えっ?何の話?」
マリア:「何でも無い!」
エレーナ:「おいおい、マリアンナ。稲生氏がアスモデウスを使いこなせたら、スカイクラッドどころか、ポルノのハーレムだぜ?」
マリア:「師匠!アスモデウス以外に契約悪魔いないんですか!?」
エレーナ:「もう内定しちゃってるから、どうしようもないよ。それより、車を待たせてるんだから、早いとこ行こうかね」
ダンテ一門の綱領に『仲良き事は美しき哉』というものがある。
もちろん、英語にしたらもっと別のニュアンスになるのだろうが、日本語に訳すると、正にこの武者小路実篤の名言になるのだ。
何しろ英文が、『How beautiful it is to have good friends.』なのだから。
その為、門内における恋愛・結婚に関しても特に制限は設けられていない。
むしろ、日蓮正宗のそれに似た法統相続の概念まであるくらいだ。
稲生:「こちらです」
ホテルの外に出ると、黒塗りのハイヤーが止まっていた。
稲生はイリーナに無断でハイヤーを予約したのだろうか?
イリーナには、「タクシーを呼べ」と言われたが、「ハイヤーを予約しろ」とは言われていない。
だが、よく見ると、屋根の上には東京無線の行灯がポンと乗っかっていた。
運転手:「Please.」
タクシーではあるので助手席の後ろのドアは自動ドアのはずだが、ハイヤーみたいに運転手が手動で外から開けた。
しかも英語が話せるらしい。
イリーナ:「勇太君、タクシーよね、これ?」
稲生:「そうですよ」
確かに助手席のダッシュボードの上には『空車』という表示器があり、ちゃんと料金メーターもあった。
稲生:「料金も普通のタクシーと同じです」
イリーナ:「そう」
マリア:「師匠、予算ならありますよね?潤沢に」
イリーナ:「あるけど、あまりダンテ先生が乗られるハイグレードカーに乗るのは忍びないわ」
顕正会員が浅井会長の日産シーマより高い車に乗るのは忍びない、或いは法華講員が猊下様のトヨタ・セルシオより高い車に乗るのは忍びないという感覚か?
ん?あれ?でも、どこかの講頭さんはかつてセルシオより高いベンツに乗っていらっしゃったような……?
マリア:「大師匠様はリムジンでしょ?だったら大丈夫ですよ」
しかしこの前の『ダンテ先生を囲む会』では、リムジンではなく、大型観光バスを貸し切って移動した(長距離移動は電車)。
イリーナ:「そうかねぇ……」
2人の魔女はリアシートに座り、稲生は助手席に座った。
稲生:「東京駅までお願いします」
運転手:「はい。東京駅ですね。東京駅のどこにしましょうか?」
稲生:「八重洲北口でお願いします」
運転手:「かしこまりました」
車が走り出した。
稲生がスマホを取り出して、何やら操作している。
今から新幹線などの空席情報を確認しているのだろうか?
イリーナはそっとマリアに耳打ち。
イリーナ:「昨夜の『お楽しみ』、ちゃんと避妊したんでしょうね?」
マリア:「あ、当たり前ですよ。勇太はちゃんとゴムを着けてくれました。も、もう切らしたみたいで、『後で買い足す』とか言ってましたけど……」
イリーナ:「そう。それならいいんだけど……」
マリア:「あの、一応分かってますから。結婚もしてないのに妊娠なんかしたら、そりゃ、大騒ぎになりますから」
ただでさえ人間だった頃、性犯罪の被害者であった魔女達の集まるダンテ一門だ。
マリアもその仲間だったが、いち早くそのトラウマから抜け出せたことが大注目されている。
今やもう稲生とは体の関係にまで発展したことは、一部の魔女にも知れ渡っている。
それが、『本当に恋愛の末の性行為』なのか、『やっぱり稲生の性欲の捌け口による乱暴』なのかで、周囲の対応が変わって来る。
前者であることを主張する為にも、『その都度、避妊具を着けている』『マリアの嫌がることはしない』という暗黙のルールを設けている。
マリア:「『レイプされて、できたんじゃないか』ってね」
イリーナ:「面倒だけど、もっと面倒なことになるのを避ける為だから、ガマンしてね」
マリア:「分かってますよ。私自身、勇太とまさかこんな関係になれるとは思ってもみなかったんですから」
イリーナ:「うん、正に奇跡ね」
[同日10:25.東京都千代田区丸の内 JR東京駅 視点:稲生勇太]
タクシーが降車場に到着する。
イリーナ:「じゃあ、カードで」
運転手:「ありがとうございます」
イリーナが手持ちのクレカで料金を払っている間、稲生とマリアはタクシーを降りた。
マリア:「どうなの?帰りの新幹線、予約は取れそうなの?」
マリアは稲生の顔に自分の顔を近づけた。
マリア:「今度は屋敷に帰ったら……ね?」
上目遣いに胸元を見せながら、思わせるようなことを言う。
稲生:「う、うん!……で、ゴメン。ずっと“厳虎独白”見てた」
マリア:「何読んでんの!?あれでしょ!?今、コメント欄が四つ巴の状態になってるあのブログでしょ!?」
稲生:「そうそう」
マリア:「新幹線の空席状況とか見てよ!」
稲生:「ゴメン」
イリーナ:「なぁに?痴話ゲンカ?痴情のもつれ?」
マリア:「違います!」
稲生:「ま、まあとにかく、出札へ行きましょう」
稲生達は東京駅の中に入った。
イリーナ:「はい、鍵」
エレーナ:「ありがとうございました。またのご利用をお待ち申し上げます」
チェックアウトの時間になり、イリーナは鍵を2つ、フロントに返却した。
イリーナ:「それじゃポーリン姉さんに払うお金、アルカディア・ゴッズを用意して待ってるから」
エレーナ:「はい。後で取りに伺います」
イリーナ:「ついでにプール入って行けば?」
エレーナ:「いいんですか?あざーっす!」
マリア:「師匠!」
イリーナ:「まあまあ。プールでスカイクラッドもいいものよ」
マリア:「マジですか……」
マリアは嫌そうな顔をした。
そこへ外に出ていた稲生が戻って来る。
稲生:「先生、タクシーが来ました」
マリア:「勇太には参加させませんからね」
稲生:「えっ?何の話?」
マリア:「何でも無い!」
エレーナ:「おいおい、マリアンナ。稲生氏がアスモデウスを使いこなせたら、スカイクラッドどころか、ポルノのハーレムだぜ?」
マリア:「師匠!アスモデウス以外に契約悪魔いないんですか!?」
エレーナ:「もう内定しちゃってるから、どうしようもないよ。それより、車を待たせてるんだから、早いとこ行こうかね」
ダンテ一門の綱領に『仲良き事は美しき哉』というものがある。
もちろん、英語にしたらもっと別のニュアンスになるのだろうが、日本語に訳すると、正にこの武者小路実篤の名言になるのだ。
何しろ英文が、『How beautiful it is to have good friends.』なのだから。
その為、門内における恋愛・結婚に関しても特に制限は設けられていない。
むしろ、日蓮正宗のそれに似た法統相続の概念まであるくらいだ。
稲生:「こちらです」
ホテルの外に出ると、黒塗りのハイヤーが止まっていた。
稲生はイリーナに無断でハイヤーを予約したのだろうか?
イリーナには、「タクシーを呼べ」と言われたが、「ハイヤーを予約しろ」とは言われていない。
だが、よく見ると、屋根の上には東京無線の行灯がポンと乗っかっていた。
運転手:「Please.」
タクシーではあるので助手席の後ろのドアは自動ドアのはずだが、ハイヤーみたいに運転手が手動で外から開けた。
しかも英語が話せるらしい。
イリーナ:「勇太君、タクシーよね、これ?」
稲生:「そうですよ」
確かに助手席のダッシュボードの上には『空車』という表示器があり、ちゃんと料金メーターもあった。
稲生:「料金も普通のタクシーと同じです」
イリーナ:「そう」
マリア:「師匠、予算ならありますよね?潤沢に」
イリーナ:「あるけど、あまりダンテ先生が乗られるハイグレードカーに乗るのは忍びないわ」
顕正会員が浅井会長の日産シーマより高い車に乗るのは忍びない、或いは法華講員が猊下様のトヨタ・セルシオより高い車に乗るのは忍びないという感覚か?
ん?あれ?でも、どこかの講頭さんはかつてセルシオより高いベンツに乗っていらっしゃったような……?
マリア:「大師匠様はリムジンでしょ?だったら大丈夫ですよ」
しかしこの前の『ダンテ先生を囲む会』では、リムジンではなく、大型観光バスを貸し切って移動した(長距離移動は電車)。
イリーナ:「そうかねぇ……」
2人の魔女はリアシートに座り、稲生は助手席に座った。
稲生:「東京駅までお願いします」
運転手:「はい。東京駅ですね。東京駅のどこにしましょうか?」
稲生:「八重洲北口でお願いします」
運転手:「かしこまりました」
車が走り出した。
稲生がスマホを取り出して、何やら操作している。
今から新幹線などの空席情報を確認しているのだろうか?
イリーナはそっとマリアに耳打ち。
イリーナ:「昨夜の『お楽しみ』、ちゃんと避妊したんでしょうね?」
マリア:「あ、当たり前ですよ。勇太はちゃんとゴムを着けてくれました。も、もう切らしたみたいで、『後で買い足す』とか言ってましたけど……」
イリーナ:「そう。それならいいんだけど……」
マリア:「あの、一応分かってますから。結婚もしてないのに妊娠なんかしたら、そりゃ、大騒ぎになりますから」
ただでさえ人間だった頃、性犯罪の被害者であった魔女達の集まるダンテ一門だ。
マリアもその仲間だったが、いち早くそのトラウマから抜け出せたことが大注目されている。
今やもう稲生とは体の関係にまで発展したことは、一部の魔女にも知れ渡っている。
それが、『本当に恋愛の末の性行為』なのか、『やっぱり稲生の性欲の捌け口による乱暴』なのかで、周囲の対応が変わって来る。
前者であることを主張する為にも、『その都度、避妊具を着けている』『マリアの嫌がることはしない』という暗黙のルールを設けている。
マリア:「『レイプされて、できたんじゃないか』ってね」
イリーナ:「面倒だけど、もっと面倒なことになるのを避ける為だから、ガマンしてね」
マリア:「分かってますよ。私自身、勇太とまさかこんな関係になれるとは思ってもみなかったんですから」
イリーナ:「うん、正に奇跡ね」
[同日10:25.東京都千代田区丸の内 JR東京駅 視点:稲生勇太]
タクシーが降車場に到着する。
イリーナ:「じゃあ、カードで」
運転手:「ありがとうございます」
イリーナが手持ちのクレカで料金を払っている間、稲生とマリアはタクシーを降りた。
マリア:「どうなの?帰りの新幹線、予約は取れそうなの?」
マリアは稲生の顔に自分の顔を近づけた。
マリア:「今度は屋敷に帰ったら……ね?」
上目遣いに胸元を見せながら、思わせるようなことを言う。
稲生:「う、うん!……で、ゴメン。ずっと“厳虎独白”見てた」
マリア:「何読んでんの!?あれでしょ!?今、コメント欄が四つ巴の状態になってるあのブログでしょ!?」
稲生:「そうそう」
マリア:「新幹線の空席状況とか見てよ!」
稲生:「ゴメン」
イリーナ:「なぁに?痴話ゲンカ?痴情のもつれ?」
マリア:「違います!」
稲生:「ま、まあとにかく、出札へ行きましょう」
稲生達は東京駅の中に入った。