報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「帰り道」

2020-11-04 19:49:14 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月31日14:00.天候:晴 神奈川県相模原市緑区 (独)国家公務員特別研修センター]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 決闘も終わり、今後の見通しも話した上で、私達は帰ることになった。
 だがその前に、リサがどうしても栗原姉妹に会いたいと言い出した。

 善場:「残念ですが、栗原愛里さんについては警察で事情聴取中です。姉の蓮華さんも、あなたに会うのを拒否すればそれで終わりですよ?」
 リサ:「それでもいい」

 本館地下にある研究施設に向かう。
 その中には医務室もあって、そこで蓮華さんは治療を受けていた。
 今はベッドで休んでいる状態だ。

 蓮華:「何か用?」
 リサ:「その左足……。どうしてもあなたに勝つ為に、ここを攻撃するしか無かったの。壊してしまってごめんなさい」
 蓮華:「競技用の義足で、日常用の物は付けてなかったから。それに、あの力で投げ飛ばされてたら、今度は右足がやられてた。知ってて左足を攻撃したのなら、大したものよ」
 リサ:「それと、これはリサ・トレヴァーとして……。多分、本人があなたに謝っても、絶対許さないと思う。だから、私が同族として謝っても、逆に怒るだけだと思う。私が『1番』とか、さっきの『11番』とかと違う所を見せる為に、あなた達を襲った『1番』を捜すの手伝う」
 蓮華:「あなたと『1番』との違いは?」
 リサ:「分からない。多分スペックは殆ど同じ。違うのは……愛原先生みたいな人に出会えたかどうか。あとは……研究所から出たかそうでなかったか。出た『1番』は町に出て暴れた。そして、あなた達を襲った。私は愛原先生達と会うまで、ずっと研究所に残ってた。それだけの違い」
 蓮華:「『1番』とは仲良しだった?」
 リサ:「殆ど喋ったことはない。顔も見ていない。だけど、後ろ姿はチラッと見た。私と似ていた。だから、私と同じなんだと思った」
 蓮華:「あなたがこっち側に付いたら、多分裏切り者扱いされるよ?それでもいいの?」
 リサ:「いい。私は愛原先生の言う事を聞く。あいつらとは仲間でも何でもない。ただ、人間の肉を食べて強くなるだけしか興味の無い化け物達……」
 蓮華:「分かった。あなたの言う通り、『1番』や他の化け物達は許さないけど、あなたは違うと信じてみる。但し、また人間を襲ったりしたら、今度こそ首を刎ねる」
 リサ:「そうしてくれて構わない。それと……アイリをイジメてごめんなさい。もう2度と近づかない」
 蓮華:「そうしてくれると助かる。愛里のことはそれでいいから。あなたを後ろから襲った。あれはさすがに卑怯だわ。おまけに警察に捕まってバカみたい。後で私が引き受けに行かないと……」
 善場:「後でそうしてください。リサも、もういい?」
 リサ:「うん。ありがとう」

 私達は地上に戻った。

 愛原:「『1番』と『2番』の違いか……」
 リサ:「私はきっと、リサ・トレヴァー達の中で一番幸せ者なんだね」
 愛原:「そう言ってくれるか」
 善場:「恐らくそうでしょう。あとは『0番』がどうかってことですけど……」
 高野:「本当に『0番』は存在するの?」
 善場:「0という数字をあえて使うことから、『存在した』という過去形なのかもしれませんね」
 愛原:「しかし主任、それを言うなら、既にこの世から消えたリサ・トレヴァー達も番号はそのままですが……」
 善場:「それもそうですね」
 愛原:「それにしてもリサ、よくやったな。俺はつい、また蓮華さんが怒ってお前と取っ組み合いになるかと思ったよ」
 高野:「愛原先生のおかげですよ」
 愛原:「俺?俺が何かしたか?」
 高野:「先生の人徳です」
 愛原:「人徳?俺にそんなもん……」
 高橋:「ありますよ!俺は先生の人徳に惚れたのです!」

 そんな人徳って言われるほどのこと、どうしてもしたとは思えないのだが……。

 高野:「リサちゃんが『1番』と『2番』との違いの話をした時、リサちゃんが愛原先生に救われた話をして、蓮華さんが妙に納得したような顔をしていたんです。先生、もしかして蓮華さんにも何かしましたか?」
 愛原:「だから、何もしてないって」

[同日14:40.天候:晴 同区内 JR藤野駅]

 私達は車で藤野駅まで送ってもらった。

 善場:「それでは今日はありがとうございました。お気をつけてお帰り下さい」
 愛原:「いえ、こちらこそ。ありがとうございました」
 善場:「霧生市の件については、詳細が決定次第、お知らせ致します」
 愛原:「よろしくお願いします」

 善場主任と別れると、私達は駅舎に入った。

 愛原:「高尾止まりか。高尾で特快に乗り換えかな」
 高野:「乗り換えがスムーズに行けば、夕方には帰れそうですね」
 愛原:「いや、全く」

 ホームへの階段を昇り降りしている間、リサが私に聞いて来た。

 リサ:「ねえ、先生。アイリはどうなるの?」
 愛原:「えーとなぁ……」
 高橋:「俺みてーに鑑別所に行って、それから……」
 リサ:「カンベツショ!?」
 高野:「ちょっと、マサ。まだそこに行くとは限らないでしょ?」
 高橋:「どうかな?」

〔まもなく2番線に、普通、高尾行きが参ります。危ないですから、黄色い線までお下がりください。この列車は、6両です〕

 ホームで電車を待っていると、程無くして接近放送が聞こえて来た。
 因みに私は善場主任からこっそり聞いている。
 高野君もチラッと言っていたが、善場主任は愛里の釈放を条件に、蓮華に霧生市探索の協力をさせるつもりなのだという。
 霧生市の住民で土地勘があるのと、完全体のリサと互角に戦ったことが理由だという。
 但し、リサ本人は本気で戦っていない。
 本気で戦えば、もっとおぞましい姿に変化することになるし、そもそもそれだと蓮華を殺してしまうからだ。
 見学している私達も巻き込まれてしまうだろう。

〔ふじの~、藤野~。ご乗車、ありがとうございます。次は、相模湖に止まります〕

 高橋:「先生、電車来ましたよ」
 愛原:「えっ?ああ……」

 3ドアの211系電車に乗り込む。
 オールロングシートタイプだった。
 中には長野県から走り通してくるロングラン列車もあるだろうに、これで乗り通すのは18きっぱーにはキツいだろう。

〔2番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車をご利用ください〕

 電車のドアが閉まって走り出す。
 私は空いている青緑色の座席に座った。

〔「次は相模湖、相模湖です」〕

 高野:「先生、私思ったんですけど……」
 愛原:「何だい?」
 高野:「愛里ちゃんが日本刀の持ち込みを、よく警備員達が許可しましたね?」
 愛原:「それもそうだな」

 入構手続きの際、手荷物検査が存在する。
 小さな刃物くらいなら、ややもすれば鞄の奥底深くに隠しておけば誤魔化せるかもしれないが、日本刀だとそうはいかない。
 それなのに、どうして持ち込めたのか。

 高野:「もしかしたら、不祥事案になるかもしれないので、あまり事を大きくできないのかもしれませんね。現行犯逮捕してしまった以上、警察に引き渡さなければならなかったわけですが、善場さん達としては、なるべく穏便に済ませたいのかもしれません」

 処分保留で釈放という形に持って行くか……。
 でも、それにしたって逮捕歴は付いてしまったわけだからなぁ……。
 それだけで退学かもしれない。
 因みに処分保留で釈放というのは、検察庁に送致するに辺り、それに足る証拠集めが制限時間内にできなかった為、止む無く被疑者を釈放することを言う。
 で、その後大抵は不起訴になるのだそうだ。
 そりゃそうだ。
 1度でも被疑者を釈放したということは、それ以上の証拠集めはムリということなのだから。
 って、これは大人の犯罪の場合だな。
 少年犯罪の場合はどうなのだろう?
 私は座席横の仕切り板に寄り掛かって立つ高橋をチラッと見たが、こいつの場合、殆どが証拠がズラリ揃った上で逮捕されてるから参考にならんな。

 愛原:「まあ、あとは主任達に任せるよ」

 私は肩を竦めてそう答えるしか無かった。
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“私立探偵 愛原学” 「決闘後」

2020-11-04 11:27:53 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月31日12:00.天候:晴 神奈川県相模原市緑区 (独)国家公務員特別研修センター・本館1F食堂]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 ようやく決闘が終わったところだが、その後始末は大変だった。
 決闘後に乱入してきたリサ・トレヴァー『11番』の死体は、直ちに研究施設に運ばれた。

 高橋:「いきなり殺すんじゃなく、『0番』とか『1番』の居場所吐かせてから殺した方が良かったんじゃねーのか?」

 と、高橋が突っ込みを入れていたが、それに対して首を横に振ったのは、善場主任だけでなく、うちのリサもだった。

 リサ:「あのバカ、聞く耳なんて持たないよ。私みたいに、誰かに命令されたらそれに従うだけ」

 うちのリサにとって、その『誰か』というのは私のことである。

 高橋:「お前の方が強いのにか?」
 リサ:「うん」

 愛原:「問題なのは、『11番』に命令したのは誰かってことだな」

 私達は体育館から本館の食堂に移動し、そこで昼食を食べていた。
 決闘に次ぐ決闘で疲労したリサは、1番昼食を食べていた。
 昼食に出たのはチキンカツ定食だったが、リサはそれをペロッと平らげた。

 高橋:「それを吐かせてから殺した方が良かったと思ったんですが、ダメですか」
 愛原:「ダメらしいね」
 高野:「先生は誰が考えられますか?」
 愛原:「五十嵐社長。いや、今は元・社長か」
 高野:「未だに入院してるんですね」
 愛原:「栗原蓮華さんの肩とは違い、全治3ヶ月の重傷だからな。でも、そんな状態じゃ命令できないか」

 リサによると、BOWへの命令は命令者が直接口頭で命令していたらしい。
 実験で口頭ではなく、文書での命令も行われていたという。
 リサ・トレヴァーの全員が元人間であることから、言葉や文字の意味を理解できる知能はある。

 高橋:「『0番』か『1番』とっ捕まえて吐かせるのがベストってことですか」
 愛原:「そういうことになるな。まあ、決闘では勝負が付いたし、今度は霧生市の調査に同行することになるだろうから、それで分かるだろう」

 私は食後のお茶をズズズと啜った。

 リサ:「先生、あのコ達どうなる?レンゲさんとアイリ」
 愛原:「ああ、そうだな……」

 栗原蓮華は研究施設に併設された医療施設に連れて行かれたし、愛里は別室か。
 可愛そうだが、例えまだ中学生でも逮捕歴が付いたら、学校は退学だろうな。
 刺した相手はリサだったから、殺人未遂罪は適用されまい。
 今のリサは『人』ではないから。
 あの黒服(国家公務員)も、銃刀法違反の現行犯と叫んでいた。
 もし刺したのが人間だったら、殺人未遂の現行犯とか言っていただろう。

 愛原:「リサは被害届出す?」
 リサ:「被害届?」
 愛原:「背中を刺されたことに対する被害届」
 リサ:「うーん……。別にいい」
 愛原:「そうか」
 リサ:「もう背中の傷は治ったし。私はあの程度では死なない」
 愛原:「だよな」

 あれで首を刎ねられたらマズいが、背中から刺される分には大丈夫ということ。
 特に愛里はズブの素人らしい。

 愛原:「おっ、善場主任からメールだ」

 スマホに到着したメール。

 愛原:「昼食が終わったら、別館の会議室に来てくれってさ」
 高野:「今後のことでしょうかね」
 愛原:「だろうな」

[同日13:00.天候:晴 同センター別館1F会議室]

 私達は昼食を終えると、別館へ向かった。
 借りたゲストカードはカードキーになっていて、それまでは本館の一部と体育館でしかアクセス権限が無かったが、本館受付でそれを別館でも使えるようにしてもらった。

 管理人:「その代わり、体育館へはもう入れないからね。忘れ物は大丈夫?」
 愛原:「ええ、大丈夫です」

 1度本館を出て駐車場を横切り、本館と似たような外観の別館へ移動する。
 そこの入口は本館と違い、自動ドアではなく、手動ドアになっていた。
 で、取っ手の部分にカードキーの読取機がある。
 そこにカードキーを当てると、青いランプが緑色に光った。
 青いランプは『施錠中だが、カードキー読取可』という意味、緑色のランプは『開錠』、赤いランプは『完全施錠(カードキー読取不可)』という意味らしい。
 それでドアが開く。

 愛原:「第一会議室はあっちだ」

 本館よりも薄暗い別館の廊下を進むと、照明の点いている部屋があり、そこが件の会議室だった。

 愛原:「失礼します」
 善場:「皆様、御苦労様です。どうぞ、お掛けになってください」

 私達は空いている席に座った。

 善場:「午前中はお疲れ様でした。今回の件は『2番』のリサの勝利と致します。それを踏まえた上で今後の予定ですが、近日中に霧生市の調査に入ろうと思います」
 愛原:「上から許可が出たんですね?」
 善場:「はい。恐らく『2番』のリサと同等またはそれ以上に強化された『1番』との遭遇が予想されますので、BSAAや“青いアンブレラ”の出動も要請しております」

 一般人である私達が同行を要請されるのは、『1番』の捜索に『2番』のリサが欠かせないからである。
 そのリサに命令できるのは私、そして高橋は私の助手だからだ。

 愛原:「今の霧生市の状況はどうですか?」
 善場:「さすがに今現在はBOWやゾンビなどのクリーチャーは確認できておりません。今回の調査の結果次第においては、政府は霧生市に安全宣言を出して、かつての住民達の帰還を許可する方針です」
 愛原:「さすがに原発より早いか」
 善場:「はい」
 愛原:「うちのリサ以外のリサ・トレヴァー達は、誰が統率しているのでしょう?さっきの良いタイミングでの乱入といい、誰かが命令してやらせてるような気がしてなりません」
 善場:「そうですね。それは目下のところ調査中です」
 愛原:「五十嵐元社長が怪しいが、未だに入院中でしょう?」
 善場:「はい。仙台市内の病院に親子共々入院中です」

 善場主任の組織がこの親子を監視しているみたいだから、例え入院中でも、何か不審な動きをしたらすぐに分かるはずだ。

 リサ:「あのコ達はどうなるの?レンゲとアイリ」
 善場:「栗原蓮華さんは今治療中です。軽傷ですので、治療が終わり次第、帰れますよ」
 リサ:「アイリは?私、アイリのこと、怒ってないよ」
 善場:「法律は法律ですからねぇ……」

 善場主任、何か考えるてるな。
 私は彼女が含み笑いをしたのを見逃さなかった。

 高野:「子供に司法取引を持ち掛ける気ですか」

 高野君もそう思ったらしい。

 善場:「まあ、悪いようにはしませんよ。私にお任せください」

 ここは善場主任の言う通りにするしか無いようだ。
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