報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「東京帰着」

2020-11-05 20:54:33 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月31日16:04.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅・中央線ホーム→グランスタ東京]

〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく終点、東京、東京です。車内にお忘れ物の無いよう、ご注意ください」〕

 私達は高尾駅から中央特快に乗り換え、それで東京駅を目指した。
 そして今、ようやく到着しようとしている。

 愛原:「やっと着いたな。あとは都営バスに乗り換えて帰るだけだ」
 高橋:「帰りはタクシーじゃないんスか?」
 愛原:「行きは指定の電車に乗り遅れないようにしただけだ。今はもうそんなこと考える必要は無いから」
 高橋:「なるほど……」

〔とうきょう~、東京~。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました。お忘れ物の無いよう、ご注意ください〕

 電車がホームに停車し、ドアが開く。
 私達は他の乗客と同様、ホームに降り立った。

 愛原:「冬が近づいて来てるな。もう薄暗いや」
 高橋:「俺達が霧生市に行ったのは、蒸し暑い日でしたね」
 愛原:「確か6月頃だ。むしろ大山寺にいた頃は肌寒かったような気がするが……」
 高野:「梅雨寒の日でしたね。ましてや山の上でしたから、尚更そう感じたのでしょう」
 愛原:「そうかな。あと、確かにトンネルの中は暑かった」
 リサ:「暑い?」

 その時、リサが何故か反応した。

 愛原:「どうした?」
 リサ:「その時、他にリサ・トレヴァーはいなかった?」
 愛原:「いや……?多分、お前だけだと思うが……?」

 私は首を傾げた。

 愛原:「だいたい、俺達が研究所に入った時、もうお前しか残ってなかったんだろ?」
 リサ:「そうだけど……」
 高野:「あ、先生。お話の途中で申し訳無いのですが……」
 愛原:「何だ?」
 高野:「バスが今しがた出発してしまいました。次のバスは45分後です」
 愛原:「東京でありながら、地方の路線バスみたいな本数だなぁ……」
 高橋:「俺の生まれ故郷の新潟では、バスは1日数本しかありませんでしたが……」

 ああ、そうそう。
 ここ最近、高橋は自分の生まれ故郷が新潟県であることをゲロった。
 実家はあるのだが、何しろこんな前科ン犯のバカ息子、勘当で当たり前である。
 というか、そもそも犯罪少年あるあるで、やはり高橋もまた親の方が【お察しください】。
 霧崎真珠さんとは同郷らしい(同じ市内というだけで、不良同士の抗争の最中に面識を得ただけ)。

 愛原:「いいさいいさ。それより今日は、決闘に勝利したリサへのお祝いをしよう」
 リサ:「! おー!」

 突然の私のサプライズ発表に、リサは両手を大きく挙げて喜んだ。

 愛原:「祝勝会をしよう。どこの店がいいか見繕ってくれないか?」
 高野:「それはお任せください。ちょっと、どこかの店に入って休みましょう」
 愛原:「そうか?」

 私達はグランスタ東京に向かった。
 その中にあるカフェに入る。

 愛原:「それにしても疲れたなぁ……」
 高野:「リサちゃんの判断、とても素晴らしかったと思いますね」
 高橋:「判定勝ちだろ?理想はKO勝ちだろうが」
 高野:「あんたバカ?リサちゃんが栗原さんをKOしたら、殺しちゃうことになるでしょう?殺さず勝つ為には、判定勝ちくらいにしといた方がいいの」
 愛原:「高野君の言う通りだぞ、高橋?」
 高橋:「えー……」
 高野:「『えー』じゃない。さっさとネットを駆使して、祝勝会の会場探しをするのよ。リサちゃんは何が食べたい?」
 リサ:「肉」
 愛原:「やっぱりな。焼肉食べ放題か、ステーキ食べ放題みたいな所がいいんじゃないか?」
 高野:「焼肉食べ放題なら探せばいくらでもありますが、ステーキ食べ放題となると、なかなか……」
 愛原:「それもそうだな」
 高野:「焼肉屋なら、近くに何軒かあるじゃないですか」
 愛原:「だけど、食べ放題とかはやってないだろ。宴会コースはあるだろうけど……」

 飲むのがメインだったらいいが、リサみたいに食べるのがメインだったりしたらなぁ……。

 リサ:「いい。先生達と楽しく食べれるなら、どこでもいい」
 愛原:「リサはいいコだな」
 リサ:「きっと……こんなことできるの、他のリサ・トレヴァーの中でも私だけだろうから……」
 愛原:「リサ……」
 高橋:「な?先生と出会えて良かっただろ?俺もそうなんだ」
 リサ:「うん……そうだね」

 バイオハザード事件に巻き込まれ、両親や家族を失いつつも、その後、良い大人に拾われて人生が激変した少女達の話はよく聞く。
 但し、それらは全て人間である。
 シェリー・バーキン氏のように、BOWにされつつも、それが完全化する前に人間に戻れた稀有な例もあるが。
 しかし、リサのように完全なBOWでありながら、人間に戻れる可能性を模索している者はまずいないだろう。

 高野:「では菊川駅近くの店を予約しました」
 愛原:「早っ!もう予約できたのか?」
 高野:「はい。どうやら予約が他に無かったらしく、すぐに予約できましたよ」
 愛原:「マジかよ。GoToイートはどうなった?」
 高野:「地元過ぎて空白地帯になっているのかもしれません」
 愛原:「そういうものなのか?」

 私は首を傾げた。

[同日16:50.天候:晴 JR東京駅丸の内北口バス停→都営バス東20系統車内]

 カフェで時間を潰した後、私達は駅前のバスプールに向かった。
 そこでバスを待ったが、やってきたのはこれまた普通のノンステップバス。
 なかなか燃料電池バスには当たらない。

 愛原:「もう外は暗いな。やっぱり冬が近い」

 真ん中辺りの2人席に座るが、リサが手を引いて私を隣に座らせた。
 高橋が唖然としたが、高野君が肘でつついて窘めてくれた。

〔発車致します。お掴まりください〕

 バスは乗客全員を乗せると、すぐに発車した。
 やや少し遅れ気味らしい。
 発車時はほぼ定刻であったが。
 よくある折り返しの時に遅れを回復するパターン。

〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用頂き、ありがとうございます。この都営バスは、日本橋、東京都現代美術館前経由、錦糸町駅行きです。次は呉服橋、呉服橋。朝日生命大手町ビル、日本ビルヂング前でございます。……〕

 リサ:「先生。あのビル、サイトーのお父さんの会社?」
 愛原:「そうだな。本当、丸の内の一等地のビルの中に、よく入れたよなぁ……」

 さすがは日本でも指折りの巨大製薬企業だ。
 NPO法人デイライトの次に大きな顧客がそこである。
 バイオハザード絡みの仕事の依頼よりかは、娘さんのお守りを頼まれることが多い。

 愛原:「斉藤さん、埼玉の実家に帰ってるんだろ?」
 リサ:「そうみたいだよ。だから、マンションにはメイドさんが1人だけ留守番してるよ」

 リサはチラッと後ろを見て言った。
 後ろには高橋が座っている。
 まるで高橋に、だから霧崎さんの所へ行けと言っているみたいだ。
 当然そうなると、私はリサと2人っきりということになる。
 あとは、リサの思う壺だ。
 
コメント (1)
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