[6月22日08時30分 天候:曇 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]
朝ラッシュ真っ只中の山手線に揺られ、私は秋葉原駅から新橋駅に移動した。
逆方向の電車に乗ったリサは今頃学校に着き、朝のホームルームを受けていることだろう。
私はというと、新橋駅からデイライトの事務所に移動した。
そこに到着すると、既に善場係長は待っててくれた。
善場「おはようございます。こんな朝早くから申し訳ございません」
愛原「いえ、とんでもないです。真夜中でもお伺い致しますよ?」
善場「そのような事態にならないことを願っております。どうぞ、こちらへ」
愛原「失礼します」
私は会議室へと通された。
善場「秋葉原駅から電車で来られたのですか?」
愛原「そうです。例の件、東吾妻までの電車のキップを購入したところです」
善場「領収証はお持ちですか?後ほど精算させて頂きます」
愛原「ありがとうございます。取り急ぎ、まずは往路のみです。向こうで何が起こるか分からないもので……」
善場「かしこまりました。復路については、その後、精算させてください」
愛原「宜しくお願い致します」
椅子に腰かけると、善場係長は向かいに座った。
善場「改めまして、急な打ち合わせに御参加下さいまして、ありがとうございます」
愛原「いえ、恐れ入ります」
善場「御存知の通り、斉藤容疑者が帰国した上、行方を眩ませてしまいました。警察や公安など、捜査機関が全力で捜査を行っております。私共もそんな捜査機関の端くれですので、状況が落ち着くまでは、すぐの連絡が取れなくなってしまう可能性が考えられます。予め、御理解して頂けると幸いです」
愛原「善場係長のお立場は理解しておりますし、現況が現況なだけに、仰ることも理解しております」
善場「御理解が早く助かります」
前置きはこれくらいにして、本題はこうだ。
善場「もしも斉藤容疑者が愛原所長に接触するようなことがございましたら、すぐに通報してください。これに関しましては私共でも結構ですし、警察でも結構です」
警察と対立することもある公安が、警察に手柄を譲っても良いと考えるほどの事態か……。
善場「また、“青いアンブレラ”並びに“コネクション”の関係者が接触してきた場合も同様です。命の危険が感じられるようでしたら、銃の所持・発砲も許可します。特に高野芽衣子は危険です。特に高野芽衣子は危険です」
愛原「どうして2回言ったんですか?」
善場「それほどまでに危険人物だからです」
いや絶対、感情入ってるだろ!
善場「以上の注意事項ですが、愛原所長だけでなく、リサや霧崎事務員にもお伝えください」
愛原「分かりました」
その後は、東吾妻行きの話になる。
私は購入したキップを善場係長に見せながら、行程を説明した。
愛原「……というわけでして、最終的には15時2分着に群馬原町駅に到着します。そこから現地へはタクシーに乗り換え、ペンションに向かう予定です」
善場「かしこまりました。タクシー料金につきましても、領収証を取っておいて頂ければ、精算致します」
愛原「ありがとうございます」
それからペンションに予約の電話を入れた時の状況も聞かれた。
ペンションにはネット予約ではなく、電話予約をしたという話をしたからだ。
愛原「出たのは、やや年配の男性でしたね。60代くらいの」
善場「60代。五十嵐元社長の年齢層と一致しますね。話した感じ、どうでしたか?」
愛原「まあ、普通でしたね。個人営業のペンションのオーナーって感じで。私が一見さんだと分かると、丁寧に説明してくれましたよ」
善場「そうですか。私も『いたち草』の公式サイトは見ました。どうやら新たに建てたのではなく、元々洋館風のペンションとして建てられたものを五十嵐元社長が中古で買い取っただけのようです」
愛原「えっ、そうなんですか?」
善場「『沿革』に、前のオーナーからペンションの経営権を譲渡され、改築を施して現在に至るとあります」
そこまでは見てなかったな。
愛原「いずれにせよ、表向きは真っ当な商売をして生活しているということですね?」
善場「そういうことになります」
なるほど。
だとしたら、確かに民間の探偵の出番かもしれない。
リサなど、日本アンブレラの悪事の代表的な存在なのだから、連れて行ってみて、どんな反応をするか楽しみだ。
[同日09時43分 天候:雨 同地区内 都営バス新橋停留所→都営バス業10系統車内]
善場係長との打ち合わせが終わり、私は事務所に戻る事にした。
デイライトの事務所の近くに、聞くわ方面に向かう都営バスの乗り場がある。
本数も多く、新橋バス停が始発なので、並んでいれば座って帰れる。
バスに乗り込み、運転席後ろの座席に座った。
発車を待っていると、窓に水滴が付くのが見えた。
どうやら、雨が降って来たらしい。
今のところはそんなに強い降り方ではなく、折り畳みの傘は持って来てはいるが、なるべくなら使わないようにしたいものだ。
〔発車致します。お掴まり下さい〕
発車の時間になり、バスは折り戸式の前扉を閉めて発車した。
〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用頂き、ありがとうございます。このバスは銀座四丁目、勝どき橋南詰経由、とうきょうスカイツリー駅前行きでございます。次は銀座西六丁目、銀座西六丁目でございます。日蓮正宗妙縁寺へおいでの方は本所吾妻橋で、日蓮正宗常泉寺と日蓮正宗本行寺へおいでの方は、終点とうきょうスカイツリー駅前でお降りになられると便利です。次は、銀座西六丁目でございます〕
私は揺れる車内の中スマホを取り出し、パールにこれからバスで事務所に帰る旨のLINEを送った。
パールからは了解の旨、すぐに返信があったが、それだけではなかった。
高橋からの手紙が届いたのだが、内容は、『これから取調べが忙しくなるから、すぐに面会できないかも』という内容だったという。
高橋のヤツ、斉藤元社長絡みで、取り調べが忙しくなると既に予想していたのだろうか。
朝ラッシュ真っ只中の山手線に揺られ、私は秋葉原駅から新橋駅に移動した。
逆方向の電車に乗ったリサは今頃学校に着き、朝のホームルームを受けていることだろう。
私はというと、新橋駅からデイライトの事務所に移動した。
そこに到着すると、既に善場係長は待っててくれた。
善場「おはようございます。こんな朝早くから申し訳ございません」
愛原「いえ、とんでもないです。真夜中でもお伺い致しますよ?」
善場「そのような事態にならないことを願っております。どうぞ、こちらへ」
愛原「失礼します」
私は会議室へと通された。
善場「秋葉原駅から電車で来られたのですか?」
愛原「そうです。例の件、東吾妻までの電車のキップを購入したところです」
善場「領収証はお持ちですか?後ほど精算させて頂きます」
愛原「ありがとうございます。取り急ぎ、まずは往路のみです。向こうで何が起こるか分からないもので……」
善場「かしこまりました。復路については、その後、精算させてください」
愛原「宜しくお願い致します」
椅子に腰かけると、善場係長は向かいに座った。
善場「改めまして、急な打ち合わせに御参加下さいまして、ありがとうございます」
愛原「いえ、恐れ入ります」
善場「御存知の通り、斉藤容疑者が帰国した上、行方を眩ませてしまいました。警察や公安など、捜査機関が全力で捜査を行っております。私共もそんな捜査機関の端くれですので、状況が落ち着くまでは、すぐの連絡が取れなくなってしまう可能性が考えられます。予め、御理解して頂けると幸いです」
愛原「善場係長のお立場は理解しておりますし、現況が現況なだけに、仰ることも理解しております」
善場「御理解が早く助かります」
前置きはこれくらいにして、本題はこうだ。
善場「もしも斉藤容疑者が愛原所長に接触するようなことがございましたら、すぐに通報してください。これに関しましては私共でも結構ですし、警察でも結構です」
警察と対立することもある公安が、警察に手柄を譲っても良いと考えるほどの事態か……。
善場「また、“青いアンブレラ”並びに“コネクション”の関係者が接触してきた場合も同様です。命の危険が感じられるようでしたら、銃の所持・発砲も許可します。特に高野芽衣子は危険です。特に高野芽衣子は危険です」
愛原「どうして2回言ったんですか?」
善場「それほどまでに危険人物だからです」
いや絶対、感情入ってるだろ!
善場「以上の注意事項ですが、愛原所長だけでなく、リサや霧崎事務員にもお伝えください」
愛原「分かりました」
その後は、東吾妻行きの話になる。
私は購入したキップを善場係長に見せながら、行程を説明した。
愛原「……というわけでして、最終的には15時2分着に群馬原町駅に到着します。そこから現地へはタクシーに乗り換え、ペンションに向かう予定です」
善場「かしこまりました。タクシー料金につきましても、領収証を取っておいて頂ければ、精算致します」
愛原「ありがとうございます」
それからペンションに予約の電話を入れた時の状況も聞かれた。
ペンションにはネット予約ではなく、電話予約をしたという話をしたからだ。
愛原「出たのは、やや年配の男性でしたね。60代くらいの」
善場「60代。五十嵐元社長の年齢層と一致しますね。話した感じ、どうでしたか?」
愛原「まあ、普通でしたね。個人営業のペンションのオーナーって感じで。私が一見さんだと分かると、丁寧に説明してくれましたよ」
善場「そうですか。私も『いたち草』の公式サイトは見ました。どうやら新たに建てたのではなく、元々洋館風のペンションとして建てられたものを五十嵐元社長が中古で買い取っただけのようです」
愛原「えっ、そうなんですか?」
善場「『沿革』に、前のオーナーからペンションの経営権を譲渡され、改築を施して現在に至るとあります」
そこまでは見てなかったな。
愛原「いずれにせよ、表向きは真っ当な商売をして生活しているということですね?」
善場「そういうことになります」
なるほど。
だとしたら、確かに民間の探偵の出番かもしれない。
リサなど、日本アンブレラの悪事の代表的な存在なのだから、連れて行ってみて、どんな反応をするか楽しみだ。
[同日09時43分 天候:雨 同地区内 都営バス新橋停留所→都営バス業10系統車内]
善場係長との打ち合わせが終わり、私は事務所に戻る事にした。
デイライトの事務所の近くに、聞くわ方面に向かう都営バスの乗り場がある。
本数も多く、新橋バス停が始発なので、並んでいれば座って帰れる。
バスに乗り込み、運転席後ろの座席に座った。
発車を待っていると、窓に水滴が付くのが見えた。
どうやら、雨が降って来たらしい。
今のところはそんなに強い降り方ではなく、折り畳みの傘は持って来てはいるが、なるべくなら使わないようにしたいものだ。
〔発車致します。お掴まり下さい〕
発車の時間になり、バスは折り戸式の前扉を閉めて発車した。
〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用頂き、ありがとうございます。このバスは銀座四丁目、勝どき橋南詰経由、とうきょうスカイツリー駅前行きでございます。次は銀座西六丁目、銀座西六丁目でございます。日蓮正宗妙縁寺へおいでの方は本所吾妻橋で、日蓮正宗常泉寺と日蓮正宗本行寺へおいでの方は、終点とうきょうスカイツリー駅前でお降りになられると便利です。次は、銀座西六丁目でございます〕
私は揺れる車内の中スマホを取り出し、パールにこれからバスで事務所に帰る旨のLINEを送った。
パールからは了解の旨、すぐに返信があったが、それだけではなかった。
高橋からの手紙が届いたのだが、内容は、『これから取調べが忙しくなるから、すぐに面会できないかも』という内容だったという。
高橋のヤツ、斉藤元社長絡みで、取り調べが忙しくなると既に予想していたのだろうか。
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