報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「探偵は一応、通常」

2025-01-16 20:15:02 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月22日06時30分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家3階ダイニング]

 

 今日は平日。
 リサの登校時間に合わせて朝食を囲む。
 テレビでは朝のニュースや情報番組をやっているが、やはり斉藤元社長が昨夕、突然の帰国を果たした上、警察や公安の目を掻い潜り、国内のどこかに消えてしまったという報道で持ち切りだった。
 番組によっては、斉藤元社長の過去や日本アンブレラの悪事を改めて掘り返す所も。
 但し、その中に、リサのことを触れている物は無かった。
 せいぜい、『非人道的な人体実験を行っていた』という程度のもの。

 愛原「斉藤さんは一体、どこに行ったんだよ……」

 因みに自分のスマホはもちろん、私用のPCや事務所のPCも調べてみたが、斉藤元社長はおろか、“青いアンブレラ”のメンバーからのメールなどは来ていなかった。
 高野君も公一伯父さんも、今はどこかに消えている状態。
 恐らく、斉藤元社長の世話で忙しいのだろう。
 今なら警察が来ても、知らぬ存ぜぬで通せられるが。

 リサ「先生、秋葉原駅まで一緒に着てくれるの?上野駅まで一緒に行こうよ~?」
 愛原「いやいや。アキバまで。あくまでも、JRのキップを買いに行くだけだから」
 リサ「むー……」
 愛原「その後でデイライトの事務所に行くから、午前中、俺は不在な?」
 パール「かしこまりました」

 昨日の善場係長の言う通り、もしかしたら、警察がここに来るかもしれない。
 気にせず、こちらは通常通りのことをしていれば良い。
 別に、斉藤元社長を匿ったりしているわけではないのだから。

[同日07時37分 天候:曇 同地区内 都営地下鉄菊川駅→都営新宿線737T電車・10号車内]

 朝食を終えて出発の支度をした後、私とリサは最寄りの駅に向かった。
 空はどんよりと曇っていて、いかにも梅雨といった感じだ。
 今すぐ雨が降るわけではないようだが、当然、傘は持って行くようにと天気予報で言っていた。
 蒸し暑いが、リサはルンルン気分で私の横を歩いていた。
 朝のラッシュで賑わう菊川駅に行くと、コンコースは電車が巻き起こす強風が吹いていた。
 菊川駅はどういうわけだか、風が吹き通りやすいらしい。
 いつもは女性専用車が行われている先頭車に乗り込むリサだが、今日は私が一緒なので、最後尾の車両に乗ることになった。

〔「只今の時間、新宿方面電車の先頭車、1号車は女性専用車両となっております。……」〕

 立ち番の駅員も、マイクを持ってそんな放送をしている。

〔まもなく、1番線に、京王線直通、各駅停車、橋本行きが、10両編成で、到着します。ドアから離れて、お待ちください。……〕

 轟音と強風と共に入って来た電車は、東京都交通局の車両。
 朝ラッシュということもあって、先頭車以外はどの車両も混雑している。

〔1番線の電車は、京王線直通、各駅停車、橋本行きです。きくかわ~、菊川~〕

 それでも、この駅でも下車客はそれなりにいる。
 町工場が点在し、私の所みたいに小規模ながら会社事務所も点在しているからだろうか。
 電車に乗り込むが、当然席は無く、車内の中まで行くのも一苦労だ。
 こんな時、やはり通勤者にならなくて済む自営業で良かったと思う。

〔1番線、ドアが閉まります〕
〔「1番線、橋本行き、ドアが閉まります。お体、お荷物を強く引いてください。ドア閉まります」〕

 ホームドアと電車のドアが閉まる。
 リサは私に密着するように立った。
 車掌室から僅かに、発車合図のブザーが聞こえてくる。
 ようやく、電車が走り出した。
 辛うじて掴むことができた吊り革に掴まる。

〔次は森下、森下。お出口は、右側です〕

 いつもは都営地下鉄大江戸線への乗換案内放送が流れるが、朝ラッシュの最中は省略される。
 これはJR東日本も同じ。

 愛原「いつも、こんな感じで通学してるのか?」
 リサ「うーん……。1番前は、もう少し空いてるよ?」
 愛原「そうか……」

 尚、乗り換え先のJR山手線または京浜東北線の秋葉原~上野間は、もっと空いているとのこと。

[同日07時50分 天候:曇 東京都千代田区外神田 JR秋葉原駅]

 秋葉原駅の最寄り駅、岩本町駅に到着する。
 それから地上に向かい、JR秋葉原駅に向かう。
 この辺りは私達のような乗り換え客が多く、歩道はそんな人々が多く行き交う。
 その為、歩道も広く造られている。
 隣を走る幹線道路、昭和通りは国道4号線だが、やはり車の量は激しい。
 そして、ようやく秋葉原駅に到着する。
 昭和通り口から入るが、朝ラッシュ真っ只中ということもあり、ここも賑わっていた。
 こちら側にもかつて“みどりの窓口”はあったのだが、今は廃止されてしまい、電気街口側のみとなっている。
 だが、それまでにもあった指定席券売機がその分拡充されており、私の目的の為なら、それで十分。

 愛原「えーと……」

 私は空いている指定席券売機の前に立つと、今度の旅行で乗る電車のキップを買い求めた。

 愛原「何とか空いてるな……。通常期だからかな」

 いくら土日とはいえ、まだ夏休み前だからだろう。
 それにしても、草津温泉(の入口)に向かう特急列車だというのに、今ではグリーン車無しのたった5両編成にまで縮小されているとは……。
 高速バスの方は盛況らしいのだが。
 電車だと長野原草津口駅で降りなくてはならず、そこから更にバスに乗り換えて向かうことになるのだが、それなら直接乗りつけできる高速バスの方が便利なのだろう。
 まあ、私達はそこまで乗って行くわけではないが。
 ペンションのチェックイン時間も考えて、私は何とか特急列車の指定席を確保することに成功した。
 ところで、券売機を操作している間、横から見ていたリサが、私の腰に手を回している。
 傍から見たら誤解されそうだ。

〔お金を、お入れください〕
〔発券しています〕

 キップは4枚出て来た。
 それぞれ2枚ずつ。
 1枚は指定席特急券、もう1枚は『東京山手線内→群馬原町』までの乗車券。
 帰りのキップについては、購入しなかった。
 向こうで何が起こるか分からないし、仮に何も起こらず、すんなり翌日午前10時にチェックアウトできても、吾妻線内は午前中の上り特急が無いからである。

〔キップと、お釣りをお受取りください。領収証を御希望の方は、領収証ボタンを押してください〕

 私はキップ4枚とお釣りを回収した。
 それから精算の為、領収証も発行する。
 領収書は、乗車券の紙に印刷されたものだった。
 お釣りのうち、1000円札1枚はリサのICカードに入れてあげる。

 愛原「今日は食堂で昼飯だろ?これで食え」
 リサ「わあ、ありがとう!」

 それから改札口の中に入った。

 愛原「俺はこれから新橋に向かうからな。お前も気をつけて行けよ?」
 リサ「分かったー!」

 私はコンコース内でリサと別れ、東京方面のホームに向かった。

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