[12月1日18時11分 天候:晴 東京都墨田区押上1丁目 東武鉄道とうきょうスカイツリー駅]
〔♪♪♪♪。まもなく、とうきょうスカイツリー、とうきょうスカイツリーに到着致します。お出口は、左側です。京成線押上線、都営地下鉄浅草線、東京メトロ半蔵門線はお乗り換えです。とうきょうスカイツリーを出ますと、次は終点、浅草です〕
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日は改めて、南会津へ行ったところである。
尚、今日は1人だ。
リサは学校がある為。
それにしても、交通が不便な山奥の村へ日帰りはキツいものがある。
何しろリサの単独行動は一部の例外を除いて認められていない為、リサが学校に行っている間ということになった。
実は桧枝岐村で、また白骨遺体が見つかったこともあり、それが南会津町の警察署に運ばれて検死を受けた。
その結果、その白骨死体は暴力団員の牛窪勝五郎であることが分かった。
私はこの事件を追う探偵として、行かざるを得なかったのである。
死後50年経っているということもあって死因は不明だが、山中に埋められていたので、死体遺棄事件として警察が捜査することになったのである。
私の予想だが、犯人は上野医師辺り。
牛窪の執拗な攻撃に反撃して、つい殺してしまったのだろう。
そして、死体を埋めたわけだ。
いわき市で牛窪に協力した奥州虹元組も、縄張り外のことには興味が無いらしく、牛窪が姿を現さなかったことには何の関心も無かったようだ。
あくまでも無関係の組織のヤクザが、必死に協力を頼んで来たので、お情けで捜索に協力してやったに過ぎない。
なので、縄張り外で何かあっても、あとは知らんというわけだ。
結局のところ、上野医師の勝利で終わったということだな。
もっとも、後に白井に襲われるとは思わなかっただろうが。
ところで、私が乗っているこの東武スカイツリーライン。
高橋が収容されている東京拘置所の近くを通るのだが、実は今日、高橋の起訴猶予処分が決定し、釈放されることになった。
本来は迎えに行きたいところだったのだが、白骨死体が牛窪の物だと分かったということで、それができなくなった。
不起訴ではなく、起訴猶予ということは、あれか。
まだ、高橋のことは疑われているということだ。
起訴猶予になる理由にはいくつかあるが、『嫌疑不十分』というのもかなりある。
不起訴と違うのは、再び嫌疑が十分に出てきたら、また起訴される恐れがあるということである。
色々と拮抗した挙げ句、起訴猶予で落とし所となったようである。
〔ご乗車ありがとうございました。とうきょうスカイツリー、とうきょうスカイツリーです。……〕
愛原「あれ?」
電車を降りると、ホームに高橋とリサがいた。
高橋「お疲れさまっス!先生!」
高橋が平身低頭の最敬礼で出迎えた。
愛原「高橋、おま……」
高橋「お出迎えに上がりました!この通り、リサも連れて来てますんで!」
リサ「わたしも行きたかったー」
愛原「いや、俺は仕事だし。わざわざ南会津警察署に行って、いわき市で仕入れた情報とかを提供しに行ったんだから」
死体が見つかれば、あとはもう警察の仕事である。
私達は上野医師の軌跡を追っていたのであって、ヤクザの軌跡を追っているわけではない。
愛原「とにかく、家に帰ろう」
高橋「うっス!」
[同日18時21分 天候:晴 同地区 とうきょうスカイツリー駅前バス停→都営バス業10系統車内]
私達は駅前から、都営バスに乗り込んだ。
平日でも東京の観光地の1つである東京スカイツリーは賑わっている。
都営バスを利用する観光客は、あまりいないようだが、平日の夕方のラッシュということもあって、逆方向でも賑わっていた。
〔発車致します。お掴まりください〕
私達は後ろの席に座っている。
バスは発車の時間になり、前扉を閉めて発車した。
〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用くださいまして、ありがとうございます。このバスは菊川駅前、東京都現代美術館前経由、深川車庫前行きでございます。次は言問橋、言問橋でございます。日蓮正宗妙縁寺へは、本所吾妻橋でお降りになると便利です。次は、言問橋でございます〕
愛原「悪かったな。迎えに行けなくて」
高橋「とんでもないっス!先生方のおかげで、無事に娑婆に出られました!もう感謝しかないっス!」
愛原「そうか。まあ、軽く出所祝いと行こうか」
高橋「いいんスか?あざーっす!」
愛原「リサも高橋のいない間、色々と頑張ってくれたからな、その労いの意味もあるから」
リサ「あざーっす!」
[同日18時45分 天候:晴 東京都墨田区菊川 某焼肉店]
菊川駅前でバスを降りた私達は、その足で新大橋通り沿いの焼肉店に向かった。
この辺には焼肉店は何店舗かあるのだが、食べ放題はやっていない。
その代わり、飲み放題付きの宴会コースはあって、高橋にとっては、食べ放題よりも飲み放題の方がいいだろうと思ったのだ。
愛原「さあさあ、乾杯しよう、乾杯」
高橋「先生も飲みたいんスね?」
愛原「いや、ハハハ……」
リサ「わたしも飲みたーい」
愛原「リサはあと3年待て」
肉より先に飲み物が来た。
私と高橋は、まずはビールで乾杯。
高橋「ぷはーっ!久しぶりのアルコールっス!」
愛原「だろう?」
当たり前の話だが、警察の留置場や拘置所では酒は飲めない。
不起訴や起訴猶予処分で釈放された犯人が、祝い酒をするのは鉄板だそうだ。
愛原「いいか?いくら起訴猶予とはいえ、嫌疑が完全に晴れたわけじゃないんだ。ここだけの話、善場主任達は、お前をヴェルトロの関係者ではないかと疑っている」
高橋「もちろん、ガチ否定っスよ」
愛原「だから、尚更疑われるような行動は控えなければならない」
高橋「もちろん、分かってますよ」
愛原「起訴猶予にしたのは、その為の保険だ。1度不起訴にしてしまうと、もう2度とその容疑で再び起訴はできなくなるからな」
高橋「分かりました」
愛原「さすがに起訴されたら、俺もオマエをクビにしなけりゃいけなくなる」
そうでなくても、多くの場合、起訴猶予で解雇する企業が大部分だと聞く。
不起訴でもそうだし、逮捕の時点で解雇という所も多々ある。
愛原「ま、気を付けないとな」
高橋「はい」
愛原「それと今度、付き合って欲しい所があるんだ」
高橋「どこっスか!?」
愛原「不動産屋。新しい事務所兼住宅への引っ越しの話だよ」
高橋「ああ、あれっスか!」
リサ「確かにお兄ちゃんがいない間、家とか事務所とか誰もいない時とか勿体なかったもんね」
愛原「ああ。専用の事務所を構えるのは、もっとうちの事務所が大きくなってからでいいと思っている。今は、家の中に1室あるだけで十分」
高橋「で、いいのが見つかったんスか?」
愛原「ちょっとね。で、皆で内見しようと思って、その予約を入れてあるんだ」
高橋「そういうことでしたか」
愛原「家と事務所を統一すれば、維持費も節約できるから、その分、もっと生活費に回せるぞ」
高橋「それはいいっスね!」
そこまで話して肉が来たので、私達は早速焼き始めた。
リサが生のまま食べようとするのを抑えるのは、いつも通りである。
〔♪♪♪♪。まもなく、とうきょうスカイツリー、とうきょうスカイツリーに到着致します。お出口は、左側です。京成線押上線、都営地下鉄浅草線、東京メトロ半蔵門線はお乗り換えです。とうきょうスカイツリーを出ますと、次は終点、浅草です〕
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日は改めて、南会津へ行ったところである。
尚、今日は1人だ。
リサは学校がある為。
それにしても、交通が不便な山奥の村へ日帰りはキツいものがある。
何しろリサの単独行動は一部の例外を除いて認められていない為、リサが学校に行っている間ということになった。
実は桧枝岐村で、また白骨遺体が見つかったこともあり、それが南会津町の警察署に運ばれて検死を受けた。
その結果、その白骨死体は暴力団員の牛窪勝五郎であることが分かった。
私はこの事件を追う探偵として、行かざるを得なかったのである。
死後50年経っているということもあって死因は不明だが、山中に埋められていたので、死体遺棄事件として警察が捜査することになったのである。
私の予想だが、犯人は上野医師辺り。
牛窪の執拗な攻撃に反撃して、つい殺してしまったのだろう。
そして、死体を埋めたわけだ。
いわき市で牛窪に協力した奥州虹元組も、縄張り外のことには興味が無いらしく、牛窪が姿を現さなかったことには何の関心も無かったようだ。
あくまでも無関係の組織のヤクザが、必死に協力を頼んで来たので、お情けで捜索に協力してやったに過ぎない。
なので、縄張り外で何かあっても、あとは知らんというわけだ。
結局のところ、上野医師の勝利で終わったということだな。
もっとも、後に白井に襲われるとは思わなかっただろうが。
ところで、私が乗っているこの東武スカイツリーライン。
高橋が収容されている東京拘置所の近くを通るのだが、実は今日、高橋の起訴猶予処分が決定し、釈放されることになった。
本来は迎えに行きたいところだったのだが、白骨死体が牛窪の物だと分かったということで、それができなくなった。
不起訴ではなく、起訴猶予ということは、あれか。
まだ、高橋のことは疑われているということだ。
起訴猶予になる理由にはいくつかあるが、『嫌疑不十分』というのもかなりある。
不起訴と違うのは、再び嫌疑が十分に出てきたら、また起訴される恐れがあるということである。
色々と拮抗した挙げ句、起訴猶予で落とし所となったようである。
〔ご乗車ありがとうございました。とうきょうスカイツリー、とうきょうスカイツリーです。……〕
愛原「あれ?」
電車を降りると、ホームに高橋とリサがいた。
高橋「お疲れさまっス!先生!」
高橋が平身低頭の最敬礼で出迎えた。
愛原「高橋、おま……」
高橋「お出迎えに上がりました!この通り、リサも連れて来てますんで!」
リサ「わたしも行きたかったー」
愛原「いや、俺は仕事だし。わざわざ南会津警察署に行って、いわき市で仕入れた情報とかを提供しに行ったんだから」
死体が見つかれば、あとはもう警察の仕事である。
私達は上野医師の軌跡を追っていたのであって、ヤクザの軌跡を追っているわけではない。
愛原「とにかく、家に帰ろう」
高橋「うっス!」
[同日18時21分 天候:晴 同地区 とうきょうスカイツリー駅前バス停→都営バス業10系統車内]
私達は駅前から、都営バスに乗り込んだ。
平日でも東京の観光地の1つである東京スカイツリーは賑わっている。
都営バスを利用する観光客は、あまりいないようだが、平日の夕方のラッシュということもあって、逆方向でも賑わっていた。
〔発車致します。お掴まりください〕
私達は後ろの席に座っている。
バスは発車の時間になり、前扉を閉めて発車した。
〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用くださいまして、ありがとうございます。このバスは菊川駅前、東京都現代美術館前経由、深川車庫前行きでございます。次は言問橋、言問橋でございます。日蓮正宗妙縁寺へは、本所吾妻橋でお降りになると便利です。次は、言問橋でございます〕
愛原「悪かったな。迎えに行けなくて」
高橋「とんでもないっス!先生方のおかげで、無事に娑婆に出られました!もう感謝しかないっス!」
愛原「そうか。まあ、軽く出所祝いと行こうか」
高橋「いいんスか?あざーっす!」
愛原「リサも高橋のいない間、色々と頑張ってくれたからな、その労いの意味もあるから」
リサ「あざーっす!」
[同日18時45分 天候:晴 東京都墨田区菊川 某焼肉店]
菊川駅前でバスを降りた私達は、その足で新大橋通り沿いの焼肉店に向かった。
この辺には焼肉店は何店舗かあるのだが、食べ放題はやっていない。
その代わり、飲み放題付きの宴会コースはあって、高橋にとっては、食べ放題よりも飲み放題の方がいいだろうと思ったのだ。
愛原「さあさあ、乾杯しよう、乾杯」
高橋「先生も飲みたいんスね?」
愛原「いや、ハハハ……」
リサ「わたしも飲みたーい」
愛原「リサはあと3年待て」
肉より先に飲み物が来た。
私と高橋は、まずはビールで乾杯。
高橋「ぷはーっ!久しぶりのアルコールっス!」
愛原「だろう?」
当たり前の話だが、警察の留置場や拘置所では酒は飲めない。
不起訴や起訴猶予処分で釈放された犯人が、祝い酒をするのは鉄板だそうだ。
愛原「いいか?いくら起訴猶予とはいえ、嫌疑が完全に晴れたわけじゃないんだ。ここだけの話、善場主任達は、お前をヴェルトロの関係者ではないかと疑っている」
高橋「もちろん、ガチ否定っスよ」
愛原「だから、尚更疑われるような行動は控えなければならない」
高橋「もちろん、分かってますよ」
愛原「起訴猶予にしたのは、その為の保険だ。1度不起訴にしてしまうと、もう2度とその容疑で再び起訴はできなくなるからな」
高橋「分かりました」
愛原「さすがに起訴されたら、俺もオマエをクビにしなけりゃいけなくなる」
そうでなくても、多くの場合、起訴猶予で解雇する企業が大部分だと聞く。
不起訴でもそうだし、逮捕の時点で解雇という所も多々ある。
愛原「ま、気を付けないとな」
高橋「はい」
愛原「それと今度、付き合って欲しい所があるんだ」
高橋「どこっスか!?」
愛原「不動産屋。新しい事務所兼住宅への引っ越しの話だよ」
高橋「ああ、あれっスか!」
リサ「確かにお兄ちゃんがいない間、家とか事務所とか誰もいない時とか勿体なかったもんね」
愛原「ああ。専用の事務所を構えるのは、もっとうちの事務所が大きくなってからでいいと思っている。今は、家の中に1室あるだけで十分」
高橋「で、いいのが見つかったんスか?」
愛原「ちょっとね。で、皆で内見しようと思って、その予約を入れてあるんだ」
高橋「そういうことでしたか」
愛原「家と事務所を統一すれば、維持費も節約できるから、その分、もっと生活費に回せるぞ」
高橋「それはいいっスね!」
そこまで話して肉が来たので、私達は早速焼き始めた。
リサが生のまま食べようとするのを抑えるのは、いつも通りである。