[11月13日12時00分 天候:晴 福島県いわき市小名浜地区 某海水浴場]
私とリサは組事務所を後にするとタクシーに乗り、小名浜の海岸に向かった。
そして、組長が言っていた海岸付近を探索してみた。
愛原「組長が言っていた浜というのは、多分この辺りだ」
岩壁もあるが、きれいな海水浴場が広がっている。
真新しい海水浴場だった。
恐らく、ここ数年の間に整備されたのだろう。
明らかに震災後に、新しく整備された所だと分かる。
看板には『遊泳禁止』とあるが、他にも、この海水浴場が、震災復興事業の一環で整備されたものであり、海水浴客誘致の為に整備されたという看板も立てられていた。
今はもう海水浴シーズンが過ぎているから人けは少ないが、夏場はそれなりに賑わうのだろう。
今のこの状態を見れば、とても潜伏する気にはなれなかった。
恐らく震災前を含め、50年前はもっとひなびた場所だったのだろう。
それこそ、地元民でも来るかどうかといった感じの……。
それを選んで、上野医師と斉藤玲子はここを潜伏先にしようとしたのかもしれない。
愛原「うーん……。全然、名残なんか無いなぁ……」
50年の時は長い。
震災さえ無ければ、ワンチャン何がしかの痕跡はあったのかもしれないが……。
一応、私はデジカメでこの辺りの写真を撮影した。
と、そこへ私のスマホが着信音を鳴らす。
画面を見ると、善場主任からだった。
愛原「もしもし、愛原です」
善場「善場です。お疲れさまです」
愛原「あ、善場主任。今はいわき市の……」
善場「報告は後で伺います。それよりも、これから郡山に向かって頂けますか?」
愛原「郡山ですか?」
善場「はい。福島県郡山市です。できれば、今日中に」
愛原「何かあったんですか?」
善場「爆破された斉藤玲子の実家の敷地内から、ある物が見つかりました。本来はBSAAが回収するべきものです」
愛原「それを、どうして私達が?」
善場「中国でバイオハザードが発生しました。極東支部は元より、日本地区本部隊もそちらの応援に行ってしまってるので、今すぐ動ける隊が無いのです。今最も近い場所にいるのが、愛原所長なのです」
愛原「わ、分かりました。すぐに向かいます」
善場「お願いします」
私は電話を切ると、待たせていたタクシーに乗り込み、再びいわき駅へと向かった。
そして、いわき駅に着くと、少し愕然とした。
結論から言うと、12時台後半にいわき市を出て、郡山市に向かう公共交通機関は無いということだ。
高速バスは14時台、磐越東線でも13時台半ばに列車が1本あるだけだった。
[同日13時27分 天候:晴 福島県いわき市平田町 JRいわき駅→磐越東線737D列車先頭車内]
昼過ぎに真っ先に郡山市に向かうのは、磐越東線である。
もしかすると、高速バスとは競争しないようになっているのかもしれない。
善場主任にもその旨連絡すると……。
善場「かしこまりました。磐越東線は本数が少ないですし、高速バスもコロナ禍で減便しているのかもしれません。もしかすると、所長方が到着される頃には、物は既に警察に回収されているかもしれませんね」
愛原「その場合は、どうしたら宜しいでしょう?」
善場「警察署に向かってください。警察には私共から説明しておきますので」
愛原「わ、分かりました」
私は電話を切った。
乗車券を購入してホームに向かうと、何回か乗ったキハ110系の2両編成が停車していた。
もちろん、ワンマン運転である。
さすがに今日は定刻通りに運転しているようだ。
列車に乗り込み、2人用のボックスシートに向かい合って座った
昼食は駅前のショッピングセンターで取った。
リサは駅の自販機で購入した飲み物を、窓際の桟に置いている。
愛原「この町ともさよならだな」
リサ「ここから桧枝岐村に行くのに、やっぱりこの列車に乗ったのかな?」
愛原「分からんね。乗ったのかもしれないし、それともヒッチハイクとかしたかもしれない」
リサ「ふーん……」
〔ピンポーン♪ この列車は磐越東線『ゆうゆうあぶくまライン』、各駅停車の郡山行き、ワンマンカーです。赤井、小川郷、江田、川前の順に停車致します、まもなく、発車致します〕
ワンマン列車では、発車メロディは取り扱われない。
代わりに運転士が乗務員室窓から顔を出して、ピイッと笛を吹く。
そして、車掌スイッチでもってドアを閉めた。
ドアが完全に閉まったことを確認すると、運転士は再び運転席に座り、ハンドルを操作して、列車を走らせた。
ディーゼルカーならではのアイドリング音が車内に響く。
列車は、定刻通りに発車した。
〔ピンポーン♪ 今日もJR東日本、磐越東線『ゆうゆうあぶくまライン』をご利用くださいまして、ありがとうございます。この列車は小野新町、船引方面、各駅停車の郡山行き、ワンマンカーです。これから先、赤井、小川郷、江田、川前の順に、各駅に停車致します。途中の無人駅では、後ろの車両のドアは開きませんので、1両目にお移り頂き、運転士後ろのドアボタンを押してお降りください。乗車券、運賃、整理券は運賃箱にお入れください。定期券は、運転士にお見せください。【中略】次は、赤井です〕
愛原「1日がかりだな……」
リサ「何が?」
愛原「いや、本当に福島県も本州では広い県だよ。東端のいわき市から、西端の桧枝岐村まで、本当に移動するだけで1日掛かりだ」
列車の接続が全て良いとは限らない。
また、鉄道はともかく、今度は桧枝岐村まで行くバスの本数も大変だった。
それとも、昔の方が接続は良かったのだろうか?
列車本数は、昔の方が多そうなイメージだし。
なもので、上野医師達が偶然桧枝岐村に行こうとしたとは思えない。
海でヤクザに見つかったから、今度は山に逃げようというのは分かる。
しかし、それなら郡山から磐越西線にずっと乗っていても良かったと思うのだ。
……うん、私なら日本海へ逃げるか。
しかしそこを上野医師達は、会津若松駅で降りて、会津鉄道(当時は国鉄会津線)に乗り換えたのである。
それよりも、郡山で見つかったものとは何なのだろう?
まあ、本来はBSAAが回収するべきものだというので、普通ではないのだろう。
銃火器とかだったら、普通に警察が押収すれば良いだけだし……。
私とリサは組事務所を後にするとタクシーに乗り、小名浜の海岸に向かった。
そして、組長が言っていた海岸付近を探索してみた。
愛原「組長が言っていた浜というのは、多分この辺りだ」
岩壁もあるが、きれいな海水浴場が広がっている。
真新しい海水浴場だった。
恐らく、ここ数年の間に整備されたのだろう。
明らかに震災後に、新しく整備された所だと分かる。
看板には『遊泳禁止』とあるが、他にも、この海水浴場が、震災復興事業の一環で整備されたものであり、海水浴客誘致の為に整備されたという看板も立てられていた。
今はもう海水浴シーズンが過ぎているから人けは少ないが、夏場はそれなりに賑わうのだろう。
今のこの状態を見れば、とても潜伏する気にはなれなかった。
恐らく震災前を含め、50年前はもっとひなびた場所だったのだろう。
それこそ、地元民でも来るかどうかといった感じの……。
それを選んで、上野医師と斉藤玲子はここを潜伏先にしようとしたのかもしれない。
愛原「うーん……。全然、名残なんか無いなぁ……」
50年の時は長い。
震災さえ無ければ、ワンチャン何がしかの痕跡はあったのかもしれないが……。
一応、私はデジカメでこの辺りの写真を撮影した。
と、そこへ私のスマホが着信音を鳴らす。
画面を見ると、善場主任からだった。
愛原「もしもし、愛原です」
善場「善場です。お疲れさまです」
愛原「あ、善場主任。今はいわき市の……」
善場「報告は後で伺います。それよりも、これから郡山に向かって頂けますか?」
愛原「郡山ですか?」
善場「はい。福島県郡山市です。できれば、今日中に」
愛原「何かあったんですか?」
善場「爆破された斉藤玲子の実家の敷地内から、ある物が見つかりました。本来はBSAAが回収するべきものです」
愛原「それを、どうして私達が?」
善場「中国でバイオハザードが発生しました。極東支部は元より、日本地区本部隊もそちらの応援に行ってしまってるので、今すぐ動ける隊が無いのです。今最も近い場所にいるのが、愛原所長なのです」
愛原「わ、分かりました。すぐに向かいます」
善場「お願いします」
私は電話を切ると、待たせていたタクシーに乗り込み、再びいわき駅へと向かった。
そして、いわき駅に着くと、少し愕然とした。
結論から言うと、12時台後半にいわき市を出て、郡山市に向かう公共交通機関は無いということだ。
高速バスは14時台、磐越東線でも13時台半ばに列車が1本あるだけだった。
[同日13時27分 天候:晴 福島県いわき市平田町 JRいわき駅→磐越東線737D列車先頭車内]
昼過ぎに真っ先に郡山市に向かうのは、磐越東線である。
もしかすると、高速バスとは競争しないようになっているのかもしれない。
善場主任にもその旨連絡すると……。
善場「かしこまりました。磐越東線は本数が少ないですし、高速バスもコロナ禍で減便しているのかもしれません。もしかすると、所長方が到着される頃には、物は既に警察に回収されているかもしれませんね」
愛原「その場合は、どうしたら宜しいでしょう?」
善場「警察署に向かってください。警察には私共から説明しておきますので」
愛原「わ、分かりました」
私は電話を切った。
乗車券を購入してホームに向かうと、何回か乗ったキハ110系の2両編成が停車していた。
もちろん、ワンマン運転である。
さすがに今日は定刻通りに運転しているようだ。
列車に乗り込み、2人用のボックスシートに向かい合って座った
昼食は駅前のショッピングセンターで取った。
リサは駅の自販機で購入した飲み物を、窓際の桟に置いている。
愛原「この町ともさよならだな」
リサ「ここから桧枝岐村に行くのに、やっぱりこの列車に乗ったのかな?」
愛原「分からんね。乗ったのかもしれないし、それともヒッチハイクとかしたかもしれない」
リサ「ふーん……」
〔ピンポーン♪ この列車は磐越東線『ゆうゆうあぶくまライン』、各駅停車の郡山行き、ワンマンカーです。赤井、小川郷、江田、川前の順に停車致します、まもなく、発車致します〕
ワンマン列車では、発車メロディは取り扱われない。
代わりに運転士が乗務員室窓から顔を出して、ピイッと笛を吹く。
そして、車掌スイッチでもってドアを閉めた。
ドアが完全に閉まったことを確認すると、運転士は再び運転席に座り、ハンドルを操作して、列車を走らせた。
ディーゼルカーならではのアイドリング音が車内に響く。
列車は、定刻通りに発車した。
〔ピンポーン♪ 今日もJR東日本、磐越東線『ゆうゆうあぶくまライン』をご利用くださいまして、ありがとうございます。この列車は小野新町、船引方面、各駅停車の郡山行き、ワンマンカーです。これから先、赤井、小川郷、江田、川前の順に、各駅に停車致します。途中の無人駅では、後ろの車両のドアは開きませんので、1両目にお移り頂き、運転士後ろのドアボタンを押してお降りください。乗車券、運賃、整理券は運賃箱にお入れください。定期券は、運転士にお見せください。【中略】次は、赤井です〕
愛原「1日がかりだな……」
リサ「何が?」
愛原「いや、本当に福島県も本州では広い県だよ。東端のいわき市から、西端の桧枝岐村まで、本当に移動するだけで1日掛かりだ」
列車の接続が全て良いとは限らない。
また、鉄道はともかく、今度は桧枝岐村まで行くバスの本数も大変だった。
それとも、昔の方が接続は良かったのだろうか?
列車本数は、昔の方が多そうなイメージだし。
なもので、上野医師達が偶然桧枝岐村に行こうとしたとは思えない。
海でヤクザに見つかったから、今度は山に逃げようというのは分かる。
しかし、それなら郡山から磐越西線にずっと乗っていても良かったと思うのだ。
……うん、私なら日本海へ逃げるか。
しかしそこを上野医師達は、会津若松駅で降りて、会津鉄道(当時は国鉄会津線)に乗り換えたのである。
それよりも、郡山で見つかったものとは何なのだろう?
まあ、本来はBSAAが回収するべきものだというので、普通ではないのだろう。
銃火器とかだったら、普通に警察が押収すれば良いだけだし……。