報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「隠されたメモリー」

2024-11-21 20:19:06 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月12日16時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原学探偵事務所2階]

 善場係長達が引き上げ、しばらく私は2階の事務所で仕事をしていた。

 リサ「ねぇ、先生」

 そこへリサがやってきた。
 さすがに体操服ブルマではなく、黒いTシャツにデニムのショートパンツという私服に着替えている。
 だが、手にはブルマを持っていた。
 先ほど件の金庫で見つけた物に酷似していた。
 リサの話を聞いてみると、やはりそうだと言う。
 それを踏まえた上で……。

 リサ「これ、わたしのじゃないみたいだよ」
 愛原「えっ!?どういうことだ?」
 リサ「気になったから、着替える時に数えてみたの。そしたら、ちゃんと足りてた」
 愛原「そうなのか?高橋が勝手に持ち出して、金庫にしまったんじゃないのか?」
 リサ「どうも違うみたい。どこから持って来たのか知らないけど、これ、タグの無いヤツだよ」
 愛原「タグ?」

 リサはブルマのフロント部分を指さした。
 向かって右側に白地で、『愛原リサ』と刺繍がされている。
 だから私は、これがリサが元々持っていた物だと思ったのだ。
 名前の刺繍は、かつてブルマが全国的に普及していた時、一部の学校で存在していたものだ。
 その話を聞いたリサが、自分の手持ちのブルマに刺繍を入れてもらうよう、高橋やパールにお願いしたのである。
 それは大抵、メーカータグの下または、横にされることが多い。
 だが、リサが持っていたブルマにはタグが無かった。

 愛原「それがどうかしたか?」
 リサ「わたし、タグの無いブルマは持ってないよ」
 愛原「えっ?」
 リサ「しかも、内ポケットが縫い付けられてて、何か入ってるみたい」
 愛原「何だって!?」

 私はリサからブルマを見せてもらった。
 確かにフロント部分には、メーカータグが縫い付けられていない。
 リサの名前が刺繍されているだけ。
 そして、内側を見せてもらうと、そこに小さなポケットがあった。
 メーカーや種類によっては、そこにナプキンなどを入れられるように、内ポケットを設けている物もある。
 東京中央学園指定の物には、それは無いが。
 しかも、ポケットの口が糸で縫い塞がれていた。

 愛原「……ホントだ。何か入ってそうだ」

 私は机の引き出しから鋏を取り出すと、それで内ポケットの口を塞いでいる糸を切った。
 リサはそれを、エロい事を考えているような顔で見ていた。
 昼間、何回もオナニーしたというのに、もうまたムラムラしてきたのだろうか?

 愛原「これは……!?」

 その中に入っていたのは、USBメモリーだった。
 デイライトが持っていた物よりもサイズが小さい。
 正しくブルマの内ポケットに入れて隠せるサイズ。


 愛原「よし……ちょっと見てみよう」

 私は自分のPCに、そのメモリーを差し込んだ。
 リサも空いている椅子を引っ張り出してきて私の隣に座る。
 メモリーの中に入っていたのは動画だった。

 愛原「あっ、お兄ちゃんだ!」

 画面の中に現れたのは、こちらと正対している高橋。
 どうやら、この事務所の中で撮ったようだ。
 私がいない間に撮ったのだろう。

 高橋「先生、この度は申し訳ございませんでした。多分、この時点で俺、ムショかどっかにいると思うんですけど、ほんとにマジで御迷惑お掛けてしてスンマセンでした!」

 高橋は深々と頭を下げた。

 高橋「“コネクション”で闇バイトしてたのは本当です!少刑(少年刑務所)を出る直前に、仕事を紹介してやるって言われて……。まさかそれが、“コネクション”のヤツだとは知らず……出所しても仕事が無かった俺は、受けてしまったんです!」

 高橋が“コネクション”から与えられた仕事は、助手として私に取り入り、私の動向を観察して、定期的に報告することだったらしい。

 高橋「先生……俺、最初弟子入りする時、先生に、『部屋代払います』って言って、1千万円払いましたよね?あの金を用意してくれたのも、“コネクション”です」
 愛原「マジか……」

 私もあの大金は不審に思って、その出所を聞いたのだが、『ちょっとコネがあって……』とか言っていたが、コネってのは、本当の意味でのコネクションではなく、国際バイオテロ組織“コネクション”のことだったのだ。

 愛原「『一流の探偵になりたい』って言って、先生を逐一観察していたのも、“コネクション”に報告する為です」

 高橋の独白のハイライトはいくつかある。
 同じく最初は霧生市の新聞記者と名乗っていて、実は“青いアンブレラ”のメンバーだった高野芽衣子君も、霧生市に“コネクション”のスパイが潜入するという情報を得ていたらしい。
 なので当然、この事務所で一緒に働いているうちに、高野君にはバレてしまったようだ。
 それで“コネクション”を裏切って“青いアンブレラ”に移籍しないかと誘われたことも……。
 もちろん、私のあずかり知らぬ所である。
 私の頭にチップを埋め込んだのは、手先の器用さと、高橋自身に罪を被せる為に“コネクション”が動画で指示を出しながら、やらせたとのこと。

 高橋「顕正号の研究施設で、先生の頭を手術してしまいました。その後はしばらく病院と称したアジトに匿っていたんですけど、先生が脱走してしまって……。やっと見つけた時、そこが半年ぶりに再会した豊洲だったんです……」

 私の記憶は顕正号で途絶え、半年間のブランクを経て、何故か豊洲の飲み屋で飲んだくれになっていた所から始まっている。

 高橋「俺は先生の弟子失格です。このままムショに行きますので、どうか、これで、もう……」

 そこで映像は途切れる。
 と、私の横でガラスの割れる音がした。
 リサだ!
 リサの奴、鬼形態に戻って、怒りを露わにしている。
 ガラスの割れる音は、リサが持って来たジュースを入れたグラスを握り壊した音だ。
 ガラスの破片がリサの手に刺さって出血したが、そこは鬼型BOW。
 すぐに血は止まって、傷が見る見るうちに塞がって行く。

 リサ「許せない!先生を騙して、バイオテロにも加担して……!!」
 愛原「闇バイターなのは間違無いようだな。“コネクション”の正規メンバーじゃない」
 リサ「でも……!」
 愛原「一応、今の告白、当たっている。辻褄は合っている。……だけど、善場係長に持たせたのは何だったんだ?」

 すると、また映像が再開した。
 同じように、高橋が映っている。

 高橋「UCBメモリーは2つ用意しました。1つは、これが本物です。もう1つは偽物で、『吉本新喜劇』が流れるようにしています」

 とのこと。

 愛原「ホントかよ?」

 と、そこへ私のスマホに電話が掛かって来た。
 画面を見ると、善場係長だった。

 愛原「はい、愛原です」
 善場「愛原所長、善場です!」
 愛原「あっ、どうも、先ほどは……」
 善場「先ほどは御協力ありがとうございました!また、私の発砲で御迷惑をお掛けし、申し訳ございませんでした」
 愛原「いえいえ。もう済んだことですから……」
 善場「件のUSBメモリーですが、どうやら偽物のようです。最初から最後まで、『吉本新喜劇』が流れてました。何か映像に仕掛けがあるのかと思いましたが、何も無いようです。ただ、テレビで放送された『吉本新喜劇』の録画ですね。愛原所長、あのブルマーの中に何かありませんでしたか?何の脈絡も無く、ブルマーだけ入っているとは思えません!」
 愛原「はい、仰る通りです」

 私は善場係長に今の状況を報告した。

 善場「やはりそうですか!……まあ、中を確認してしまったのは仕方ありません!新しい証拠としてお預かりしたいと思いますので、今からお伺いしても宜しいでしょうか?」
 愛原「はい、お待ちしております」

 私はそう言って電話を切った。
 またこのまま引き渡すのもアレになので、原本を渡すとして、コピーはこちらで保管しようと思った。
 幸い、コピーガードはされていなかったので。

 リサ「どうするの、先生?結局あいつ、先生を騙す為に闇バイトしてたんだよ?」

 もはや高橋を『あいつ』呼ばわりするリサだった。

 愛原「もう少し、真偽を確かめたいね。とにかく、高橋にはもっと詳しく聞きたいと思う。拘置所で話せないのなら、やっぱり執行猶予で出てきてもらって、そこでみっちり聞こうと思う」
 リサ「むー……!」
 愛原「だからリサ、勝手になことはするなよ?」
 リサ「……分かったよ」

 リサは仕方ないと言った感じで頷いた。

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